地方路線バスの危機脱出に向けて~長電バスの事例(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
コロナ禍により、公共交通事業者は需要減少などによる減収・減益を強いられ、赤字経営に陥る事業者が続出している。とりわけ地方の路線バス事業者は、それがとくに顕著であり、土日・祝日になればダイヤが大幅に削減され、1日当たり数往復程度しか、バスが運行されない状態にまで陥っている。
地方で路線バスを利用するのは、通学の高校生や通院の高齢者に限られるが、土日・祝日になれば、病院が休診しているだけでなく、高校の授業も行われない。
だが1日に3往復しか運行されないとなれば、クラブ活動で高校へ行かなければならない生徒にすれば、自宅からの通学手段が奪われることになる。
先ほど紹介した事例は、長野県北部の長野市、須坂市、中野市、飯山市、山ノ内町、飯井町などで路線バス事業を展開するながでんグループのバス会社の(株)長電バス(以下:長電バス)の事例である。
ながでんグループは、長野県の北信地方を中心に事業展開を行っている、長野電鉄を中核企業とした企業グループである。
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路線バスの準公営化に向けて(前)長電バスは、1927年7月3日に(株)長野電鉄の傍系として、(株)長野温泉自動車として設立されたが、1938年に陸上交通事業調整法が施行されると、1941年2月11日からは、長野電鉄が長野温泉自動車だけでなく、20社から乗合自動車・貸切自動車の営業権を譲り受け、直営でバス事業を運営していた。
戦時中は、交通事業者を統合することで、過当競争を抑えられた以外に、管理部門などが統合されることで、一般管理費などが削減されると同時に、要員の合理化も図られる。その要員を、軍隊へ徴兵することも目的としていた。
長野電鉄が、長野県北部の路線バスを運行することになったことで、安定供給がもたらされた反面、バス事業の社員の給料は、鉄道事業の社員の給料が基準となる。これは長野電鉄に限らず、バス事業を実施している鉄道事業者全般にいえることである。
鉄道は、定時運転が可能であり、かつ「線路」という固定資産があるから、地図にも路線が掲載され、安心感と信頼感がある。鉄道事業は、路線バスよりもモータリゼーションの影響を受けにくく、利益率もバス事業よりも良い傾向を示す。
バス事業に従事する社員からすれば、同じ会社に勤務するにも関わらず、鉄道事業よりも割安な給料体制にされることに対しては、不満が出ることは必然であるため、鉄道事業に従事する社員の給料をベースに設定せざるを得ない。そうしたことから長野電鉄のバス事業は、長野県の他のバス事業者の給料よりも割高となり、高コスト体質へとつながってしまっていた。
路線バス事業の規制緩和が実施された2002年前後、路線バス事業も実施している鉄道事業者は、バス乗務員などの給料を抑制させる目的で、バス事業の分社化を図る動きを見せるようになった。
長野電鉄は、地方都市周辺で路線バス事業を運営していたこともあり、モータリゼーションなどの影響を、早くから受けるようになっていた。
(つづく)
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