中国経済新聞に学ぶ~政治局会議から見る2022年の中国経済動向【特集「2022年中国経済の展望」(1)】(前)
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12月6日、中国共産党の政治局会議により、経済活動に関する報告内容が発表された。過去の報告はマクロ経済を手直しする程度の内容であったが、今回はかなりのボリュームであり、経済活動を大幅に修正していくとの方針が鮮明に打ち出されている。
2022年の経済活動の基本線
発表内容を見ると「来年の経済活動は安定第一で成長を求める」と示されている。これまでの経済政策では概ね「安定」と記されていたが、今回はかなり異例のメッセージになった。
そのなかに込められた意味を探ってみよう。中国人は、「トップの演説内容は、触れた内容だけでなく触れていない内容に目を向けるべきだ」とよくいわれるように、たいていの場合は意味を内に秘めた表現をする。
2019年や20年の同じ政治局会議による発表内容と比べると、その触れていない部分がよくわかる。1つは、19年は「システム的な金融リスクを防ぐ」、20年は「さまざまな既存リスクの解消やリスク増加の防止に取り組むこと」という具合に、いずれも「リスク」について触れられていた。しかし、今回はその言葉が見当たらない。
もう1つは、19年は「汚染防止策について段階的な目標を達成する」、20年は「生態環境を引き続き改善させる」という具合に、いずれも「環境整備」について触れていたが、今回はそれがどこにも見当たらないのである。
この意味を考えてみる。まず「リスク」へのノータッチは、中国経済にはリスクがないのではなく、むしろ下押しリスクが高まっている。
すなわち、リスクに触れないのは、「リスク防止」のために何らかの分野で規制や廃止策を講じたり、「ブレーキ」をかけたりはしないということで、今年のように教育事業全体が通達1つで壊滅状態になるなどということは起こらないと見られる。
次に「環境整備」へのノータッチは、すでに目標を達成したということではなく、これまで環境整備のために払った経済面の損失があまりに大きかったことを踏まえ、来年は少し手を緩める、ということである。
この2点を結び付けると、政府の意図が目に見えてくる。22年の経済活動の基本線は、経済成長に影響する取り組み、簡単にいえばブレーキとなるようなこと(リスク防止、環境整備も含めて)は一切見送る、といったものである。こうした指針が示された背景は、以下の通りである。
今年の第3四半期、中国のGDP成長率は4.9%まで落ち込み、第4四半期はほぼ確実に4%を割り込む。よってかなり強力なテコ入れをしない限り、一段と荒療治が必要な状態になってしまう。
これが「安定第一」の意味である。経済構造を変えるのはブレーキを踏むのと同じで、まずブレーキをかけてマクロ経済の土台を「安定させ」、それからより高い目標を求める。簡単にいえば、22年はまず「量」を確保し、そのうえで「質」を考える、ということである。
こうした基本線を踏まえたうえで、主な分野について「安定第一で成長を求める」という指針の進め方を説明しよう。
不動産業界
政府の発表では、「保障的な住宅建設を推進して購入者の適切なニーズを満たすことを支持し、不動産業の健全な発展や好循環を促す」とされている。
この表現は、過去のものとはかなりの違いがある。「購入者の適切なニーズを満たすことを支持する」。これについてはまず、購入の際の住宅ローン(初回購入、住み替えのいずれも)を適時に実施することで、「地上げ禁止」とは言っていない。よって、ほとんどの地域で地価がそれほど上昇していないことから、全国的に不動産消費に関するさまざまな規制はおそらく撤廃されるだろう。
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今年の「ダブル11」、若者がなぜ「買わない」(前)「不動産業の健全な発展や好循環」についてであるが、現在、川上から川下まで数多くの事業者が存在するなか、金融業界による前倒し返済の強制や融資規制のために開発業者の資金が底をつき、産業チェーン全体にお金が回らず、業界全体がスパイラルにはまっている。
そこで政府は「不動産業の好循環」、つまり金融業界が引き続き開発業者に融資を提供するように働きかけている。開発業者にお金があれば川下側も返済のめどが立ち、業界に好循環が生まれる、ということである。政府によるこれら2つの指針や、「地上げ禁止」の棚上げは、救済を待ち望んでいた不動産業界からすればまさしく恵みの雨であり、強烈な追い風となる。
では、地価は大幅に上がることになるか。一部の地域である程度値上がりする可能性も排除できないが、それは線香花火の最後の輝きだろう。政府による不動産支援策の実施は、荒療治を実施するという兆しの現れである。
時価400兆元(約7,146兆円)ともされる不動産にメスを入れるとなると、中国だけでなく世界経済全体からも深刻なものとなる(このためIMFや世界銀行がこのところ強い懸念を表明している)。
今回の不動産支援策は「安定第一」という全体背景の下、転落状態にある業界に軽く杖をつかせ、軟着陸させようという願いに過ぎないものである。
いずれにしても、最終的には業界を落ち着かせなければならない。こうした流れが見極められずにお金に目がくらむようでは、結局は矢尽き刀折れてしまう。
(つづく)
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