保健機能食品制度の行方(1)機能性表示食品のSR更新
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「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」で構成される保健機能食品制度。健康志向の高まりを背景に、膨大な数の商品が登場している。市場が賑わう一方で、トクホ人気の凋落、機能性表示食品で散見される不適切な試験データなど課題も多い。保健機能食品制度の今後を検証する。
SRのレベルアップ、機能性表示食品制度の最優先課題に
保健機能食品制度の一角を占める機能性表示食品。企業の責任で機能性と安全性を確認し、国に届出を行うという仕組みだ。「血圧が高めの方に」「睡眠の質を向上」といった機能性を証明する方法は2つ。実際に人に食品を摂取させる「ヒト試験」、または「システマティック・レビュー(SR)」のどちらかを実施しなければならない。
SRとは、世界中の研究論文を収集し、総合的に評価して効果を検討する手法。1つのヒト試験の場合、たまたま良好な結果が出ることもある。これに対し、SRは良好な結果の研究も、効果が認められなかった研究も合わせて評価する。SRはもっとも信頼性の高い手法といわれている。
機能性表示食品の届出件数は昨年末で4,898件。その9割以上がSRによって機能性を評価している。機能性表示食品制度はSRによって支えられていると言っても過言でない。
ところが、不適切な研究論文がSRに用いられていることが、しばしば発覚。加えて、SRの実施方法そのものが適切でないケースも散見される。このため、最優先課題にSRのレベルアップが浮上している。
SRの更新制の導入
機能性表示食品のSRについて、消費者庁の届出ガイドラインは「新たな知見を含めた検討を定期的に実施」する努力を企業に求めている。推奨しているものの、義務づけていない。
SRの更新が求められるのは、次々と新たな研究が行われ、過去のSRと最新のSRの結果が食い違う可能性があるからだ。機能性表示食品制度は2015年4月に施行。スタート当初に届け出された商品の配合成分については、その後の6年間で新たな研究結果が報告されているものも多い。届け出たSRの結果が、現在も同じといえるかどうかの検証が必要となっている。
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2020年度トクホ市場、前年比13.6%減の5,610億円そこで検討課題に上るのが、SRの更新制の導入だ。取材に対し、消費者庁食品表示企画課保健表示室の担当官は、届出時点のSRが長期間更新されず、そのままであることはよくないと考えているという。まずは、業界の自主的な取り組みを促すとみられる。
業界も前向きな姿勢
業界内からは、SRの更新の義務化に反対する声はほとんど聞かれない。ある食品試験業務受託機関の関係者は、「大手を中心にSRの更新業務を受けるようになった」と打ち明ける。一部の企業が自主的に始めているという。
ある大手販売会社では、「定期的に新たな研究の情報を収集している。ルールが変更されれば、それに従うだけ。重荷には感じない」と淡々とした様子。別の販売会社も「更新制は望ましい」と前向きな姿勢を見せる。その背景には、次のような事情がある。
数年前のSRを放置しておくと、最新の結果と異なることが発覚した場合、届出の撤回を強いられるリスクが生じる。SRの更新は企業を守ることになる。
大手企業にとっては、古いSRのままだと「みっともない」という面子の問題もある。中小企業の場合、自らSRを実施するケースは少なく、取引先の原料メーカーなどに任せていることから負担は小さい。
制度の創設時は優先すべき検討課題が山積し、業界のSRに対する理解が浅かったこともあり、更新の義務化を見送った経緯がある。だが、制度がスタートして7年近くが過ぎ、届出件数も5,000件に迫る。自主的に更新する動きも見られるようになった。SRの更新の義務化に向けて、機は熟したようだ。
(つづく)
【木村 祐作】
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