『脊振の自然に魅せられて』今年の初登山(前)
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1月9日(日)年も明け、一月ぶりに脊振の山へ向かう。
いつもより少し遅く、午前9時前に自宅を出る。途中、コンビニで和菓子を購入。冬場は体を温めるためザックにドリップコーヒー、保温ポットにお湯を入れて持参するようにしている。
椎原バス停から登山口へと続く林道は、昨年8月の豪雨で土砂崩れが起きたため、通行止めのままである。
ここから狭い作業用の林道を右に曲がり、登山口へと向かった。これが後に大変な事態を招くこととなったのだが、それは後述することにする。
登山口周辺には、迂回路を利用してきた車が数台停まっていた。天候は晴れ、平地の気温は10度。山間部は6度ぐらいだろう。車を降りると山の冷気で身が引き締まる。スニーカーから登山靴に履き替え、脚の保温と朝露対策のためにスパッツを身につける。年をとると革靴は重く感じるため、ここ3シーズンは軽い登山靴を使用しているが、軽い分、冬場は保温性にやや欠ける。
この日は早春に咲くホソバナコバイモやマンサクの開花状況を確認するのが目的である。ルートは車谷登山口から矢筈峠まで、所要時間は90分の予定だ。
登山道へ入ると左手にある車谷の大きな渓谷の轟音が聞こえてきた。杉林のなかの登山道を歩く。すると冷気のなかに聞き慣れた甲高い鳴き声が聞こえてきた。声の主は、おそらくメジロで「こんにちは!久しぶりやね、元気にしているか?」と言っているように感じた。
小型道標を取り付けた場所に来た。左手は車谷本流の渓谷がある広い場所で、砂地もあり、休憩ポイントともなっている。ここは20年前、渓谷のなかの岩にヒメレンゲの花がきれいに咲いていた場所だ。感動のあまり、重い三脚を広げ、水の流れを表現するためにスローシャッターで撮影したのを思い出す。写真集「脊振讃歌」の1ページを飾った場所でもある。そして娘が結婚式前日、「お父さん、山へ連れていって」と言われて共に歩いた思い出の場所だ。
5分ほど歩くと渓谷の上の斜面を歩く登山道がある。危険箇所にロープが2本貼られ、そのうちの1つは脊振の自然を愛する会が取り付けた。年をとった今、ロープは安全確保に一役買ってくれている。
途中、本流へ流れ込む岩場の沢を渡り、ホソバナコバイモの自生地にやってきた。ザックを岩におろし、カメラを片手に腰を曲げ、目を凝らして新芽を探す。5分ほど周りを歩いてみたが、やはりまだ芽は出ていない。少し早過ぎたようだ。
その後も歩き回っていると、ひょっこり顔を出している新芽を見つけた。8月に咲くキツネノカミソリの新芽である。5㎝ほど小さな芽を出していた。周りをよく見ると2株あった。
オオキツネノカミソリは標高500m―700mに咲く高山植物である。脊振山系では7月末、糸島市の水無鍾乳洞付近でたくさん開花する。このキツネノカミソリの群生地は、エリアも広く、花の数も圧倒されるほど咲くため、観賞に訪れる登山者や見学者が多い。脊振山直下で気温も低いのか8月のお盆ごろに遅れて咲く。
車谷のオオキツネノカミソリの存在はあまり知られておらず、マスコミでもほとんど報道されていない。脊振の自然を愛する会の仲間は、オオキツネノカミソリに魅了されている。群生地は標高500m地点から300m地点まで繁殖エリアを広げてきている。10年後はキツネノカミソリの一大群生地になるかもしれない。
ここからさらに矢筈峠方面の登山道に足を伸ばした。道標2本を設置した林道を横切り、急勾配となる登山道を進む。もう少し歩けば小さな峠に着く。昨年夏、ここに小型道標を樹木に設置した。「そよ風峠」と筆者が命名した道標である。峠から“そよそよ”と吹く風が汗を冷やしてくれる。汗をかいた体には本当にありがたい。
再び沢を渡り、気象レーダー直下の右俣との分岐に着く。右俣の大きな沢を登ると気象レーダー付近に着く。筆者は仲間と2度ほど登ったことがある。
(つづく)
2022年1月19日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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