『脊振の自然に魅せられて』今年の初登山(後)
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沢の分岐に小型道標を取り付けている。筆者の休憩ポイントでもある。右俣の入り口には大きなヤブツバキがあり、開花すると枝を伸ばして登山者を迎えくれる。ここでシートを広げ、持参した和菓子とコーヒーで一息つく。
しばらくすると3人の登山者がやってきた。声をかけてみると、親子3人で九州100名山踏破を目指しているという。
子どもは20代の若い女性だったが、山歩きに慣れていないようで、親の登山技術も未熟に感じた。大分からやってきたとのことで、脊振山を目指しているようである。
休憩が終わり、矢筈峠直下のマンサク谷を目指す。先行した2組の登山者より10分遅れて出発した。歩き始めると前方の2組の登山者の姿が。筆者のスピードが速いのではなく、この登山者たちの歩みが遅いのだ。
しばらくして、「きゃぁ!」と叫ぶ女性の声が聞こえてきた。先ほどの家族のようである。沢と登山道の判別がつかず、沢ぞいの道をまっすぐ進み、沢に入り込んでしまったようだ。
「娘さんを真ん中に入れて歩いたら」とアドバイスをしたのだが、「山歩きに慣れていなので、ルート確認のため先頭を歩かせている」との答えが返ってきた。この親子を見ていると、いつか崖から転落する危険性があると思った。学生時代のワンゲル活動では、サブリーダーが先頭を歩き、リーダーは最高尾という訓練を受けてきた。リーダーは、いざという時に力を発揮し、緊急事態に対応する能力が求められる。
最近の登山者は山の会などで訓練を受けていない。地図アプリなど便利なものもできて、気軽に山歩きできる時代になってきたこともあって、低山での事故が多発している。
最近、福岡近郊の宝満山、若杉山、飯盛山、油山でも遭難者が出ている。いずれも高齢者の単独登山だった。
マンサク谷で2度目の休憩をした。谷に入って確かめたが、マンサクはまだ蕾を付けていなかった。
「2月に入ってからだろうと」と思いながら、登ってきた山道をゆっくり下った。すると先ほどの家族に帰り道に再びすれ違ったので、「道標もつけているのに」と女の子に声をかけたところ、「道標って何ですか?」という答えが返ってきた。筆者は思わず「ド・ヒョウ」と驚いて見せた。登山地図も見たことがないのであろうか。
帰路、今朝やってきた狭い作業林道を車で下る。下りの狭い作業林道を左折すれば本来の広い林道に出る。しかし、作業林道の曲がり角に2台、本来の林道に車が3台駐車していた。3台のうち1台は曲がり角に、残りの2台は反対方向に並んで駐車していた。手前の1台は高級外車。3台の車で林道を挟んでおり、普通車がやっと1台通れるほどの幅だった。
「何でこんな所に停めるの」と腹が立った。山に慣れた者であれば、ほかの車の邪魔にならないように配慮して駐車するものだ。
左折は無理だと判断し、ハンドルを何回も切り返して広い林道に対して、平行にしようと試みた。背後は崖である。車を降りて確認すること3回。広い林道に出るのに10分もかかった。
狭い林道の角に停まっていた軽自動車は大分ナンバー。あの家族の車である。この駐車の仕方をみても山に不慣れだと思えた。曲がり角に停めていた2台の車のワイパーに「曲がり角に停めないでください」と書いたメモ紙を挟んだ。30分もロスをしたが相手の車を傷つけなくてよかった。日曜日に登山にきたのが仇になった1日だった。
(了)
2022年1月19日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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