日本変革図を描く(4)
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(株)APIコンサルタンツ 松本 洋 氏
新しい時代を切り拓く経営者を輩出していくには、どうすればいいのか。20年前、日本で最初に東京で光ファイバー網を100キロ引いて通信革命を起こし、間接材のEコマースビジネスを最初に手がけるなど、新規市場の創出の最前線に携わってきた経験をもち、100社以上の企業へのコンサルタントやM&Aを手がける(株)APIコンサルタンツ代表取締役・松本洋氏に聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役・児玉直)デジタル化を進め労働生産性を向上させる国へ
──「日本沈没」を食い止めるには、どうしたらいいですか。
松本 ドイツでは、シュレーダー首相が1998年に就任してから生産性向上に取り組み、「欧州の病人」と言われた状況から見事に立ち直りました。年金制度や労使関係の改革を進めると同時に、デジタル化によって失業した大量の労働者の再教育に力を入れ、雇用の流動性が高くなったことにより新しい産業が生まれたのです。
その間、日本では大量一括採用、終身雇用、年功序列の古い制度が残り、1980年から40年間改革は起きませんでした。けれども昨年、ついに日本にもデジタル庁ができました。極めて権限が強く、大臣の一言で国を動かせるほどのパワーをもったデジタル庁は日本の希望の星であり、大変革を起こす可能性を秘めています。
ただし、現状では期待されたような成果が上がっているとはいえません。官庁からの出向者300人、大手ITベンダー企業からの出向者300人が働いており、大手ITベンダーの既得権を守りベンチャーが参入しにくい下地ができてしまうと期待は一気に萎んでしまうでしょう。今のままではデジタル庁の予算の大半は利権として使われる恐れすらあります。
また、日本の全省庁、都道府県、全都市ではバラバラにシステム開発が行われ、統一したシステム開発はできていません。
そのため、システム構築を請け負ったIT会社しか改修をすることができず、デジタル庁は行政のデータベースやシステムを1つに統一し、IT業界の利権構造にメスを入れるべきです。それにより間接業務のデジタル化ができて労働生産性の向上を達成できます。多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んでいますが、成功している企業はまだ少ないです。日本では、DXを進めるIT人材が決定的に不足しているので、主要先進国7カ国と比較すると、日本の1人あたり労働生産性は50年以上も最下位となっています。
冒頭に説明した「5つの壁」は、企業だけではなく日本の組織全体に存在しています。その「5つの壁」を突破してデジタル化を推進することにより、日本の競争力が世界をリードするレベルまで復活することが可能になると信じています。
(了)
【文・構成/石井 ゆかり】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:松本 洋
所在地:東京都港区白金台5-22-12 前田道路白金ビル4F
設 立:2011年8月
資本金:4,000万円
TEL:03-6277-3730
URL:https://www.api-c.co.jp
<プロフィール>
松本 洋(まつもと ひろし)
1951年生まれ。APIコンサルタンツ(株)代表取締役社長。東京大学法学部卒業。米国コロンビア大学MBAおよび法学修士取得。日本鋼管(現・JFEスチール)の米子会社ナショナル・スチールを上席副社長(COO)として再建し、通信革命を起こしたKVHテレコムや間接材コストの削減をEコマースで手がけるアルファーパーチェスを創業、代表取締役を歴任。米・企業再建コンサルのアリックス・パートナーズ日本代表や米国の6兆円ファンドであるアドベント・インターナショナルの日本代表に就任。主な著書に『なぜ、誰もあなたの思い通りに動いてくれないのか』(ダイヤモンド社)、『他責病にサヨナラ』(エムオン・エンタテインメント)。関連記事
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