2024年09月07日( 土 )

本当は食糧不足にならない日本 これから100年、持続可能な農業(後)

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(株)A-Netファーム十勝

 人々が暮らすうえでも、食糧の確保という「食の安全保障」においても、大きな役割を担う日本の農業。これからも農業を続けていくには、環境に負担をかけず持続可能な取り組みが欠かせない。約100年間の歴史があり、北海道で農産物の栽培と流通を手がける「森田農場」を運営する(株)A-Netファーム十勝専務取締役・森田里絵氏に、これから100年の展望を聞いた。

地球環境を守る 持続可能な社会とは?

森田農場の様子
森田農場の様子

    森田農場では、地球環境を守り、持続可能な開発目標(SDGs)を実現するため、収穫後の畑で野焼きをせず、作物の茎や葉を畑にすき込むなどの工夫をしている。一方、里絵氏は「トラクターを動かすには化石燃料である重油が必要ですが、トラクターの代わりに農作業を人が担うと膨大な人出が必要です。人が動くためには食糧が要るため、トラクターを使って短時間で作業した方が地球環境への負担は小さいという考え方もできます。地球環境のためには、イメージにとらわれず、農業の現場を踏まえて地球に優しい方法を見極め、バランスを取ることが大切です」と語る。

 農業は人々が生きていくうえで必要な食べ物をつくるという大切な仕事である一方、体力的に厳しい仕事も多い。今の社会では、食べ物をつくる人と食べる人の距離が離れ、食べる人の目の届かないところに農業の存在が押しやられてしまっていることが大きな問題だ。「食べる人にも、自分の目の届く範囲で想像力をもって農業の存在を感じてもらえれば、農家もやりがいを感じることができ、離農する人も減るのではないでしょうか。そのためには、1人でも多くの人に農業を体験してもらうことが大切です」(里絵氏)。

 農業では、手をかければかけるほど良いものができるが、人の体力には限界がある。農作業の負担が大きくても、家族だけにこだわらずに人手を増やして手分けできる体制をつくり、順番に休める時間を確保できるようになれば、離農する人も減るのではないか、と里絵氏は提案する。

小豆収穫
小豆収穫

 小豆などの豆類は空気中の窒素を固定することで養分にして成長するため、肥料にこだわっても作物がうまくできるかは、日照時間など太陽の力や気候に大きく左右される。もし豪雨で畑が流されてしまうと食べ物の、供給体制にも関わる。目に見えないが、都会と農地はつながっており、畑の気候は都会の人の暮らし方からも大きく影響を受けている。

 里絵氏は「当社は米農家ではないですが、日本は本当は豊かな土地と水資源をもつ国で、全国民が飢えずに毎日3食を食べていけるほどの米をつくる潜在能力があります。しかし、米を食べる人が減って、米が安価になっているため、米農家を続けられないケースが増えています。多くの人が米を食べるようになれば、米農家もつくり続けることができて、日本の食料問題も大きく改善するはずです」と語る。国がもつ資質を最大限に生かすことが、持続可能で豊かな社会につながる。身近であるが気づきにくい、食べ物の大切さに目を向けたい。

(了)

【石井 ゆかり】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:森田 哲也
所在地:北海道上川郡清水町羽帯南2線106
設 立:2011年3月
資本金:100万円
売上高:(21/3)約9,000万円
TEL:0156-63-2789
URL:https://www.azukilife.com/

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