2024年12月22日( 日 )

福岡県―江蘇省友好都市30周年を迎え、経済から文化まで交流を促進(前)

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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

 新型コロナウイルス感染症の拡大で国際的な往来が激減するなか、日本にある各国の団体などはオンラインを駆使し、できる限りの協力、交流を進めており、中国駐福岡総領事の律桂軍氏は2021年、九州・山口・沖縄と中国の間の絆が強化されたと評価する。九州と中国との関係や中国国内の政治経済状況などについて、律総領事に話を聞いた。

深まる九州と中国の絆

中華人民共和国駐福岡総領事 律 桂軍 氏
中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

    ──昨年の総領事館の活動をどう評価しますか。

 律桂軍氏(以下、律) 昨年の活動を通して、中国と日本、とくに九州・山口・沖縄(以下、九州)との間で5つの絆がさらに強化されたと実感しています。第1に中日友好の感情面での絆です。新型コロナウイルス感染症の発生以降、相手側の問題についてお互いに我が身に生じたことのように思い、惜しむことなく支援の手を差し伸べました。政府・自治体、企業の間では多大な金額に相当する物資面での支援が行われたほか、学生も募金活動を行いました。これらの活動は両国国民の間で記憶され、語り継がれていくものと思います。

 第2に経済面でのWin-Winの協力という絆です。コロナにより一部のサプライチェーンが分断され、世界的にインフレが生じました。そのような悪条件のなか、中国と九州が協力した結果、双方の貿易・投資はむしろ上向きました。中国は依然として日本および九州経済圏(九州・沖縄・山口の9県)にとって第1番目の貿易相手です。

 2021年、中日間の輸出入総額は前年比17.1%増の3,714億ドル(中国税関)に達し、再び史上最高を記録しました。同年には日本の対中国直接投資も増えており、前年比16%増の39.13億ドル(実行額)になりました。通年で中国に新設した日系企業は前年比24.9%増の998社で、日系企業の累計数は5万4,631社となり、投資実績は1,229.88億ドル(中国商務省)に上っています。同年、九州経済圏と中国の貿易総額は前年比14.4%増の3兆4,456億円となり、九州経済圏の輸出入額全体に占める割合は21.2%に上っています(門司税関)。

 第3に地方交流の友好都市の絆です。九州と中国の間には50組の友好都市関係が締結されており、かつ多くは中国側にとって最初の友好都市関係です。たとえば、広州市―福岡市、大連市―北九州市、青島市―下関市、(安徽省)合肥市―久留米市などが挙げられます。

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 私は昨年、福岡―江蘇友好桜花園(江蘇省南京市)設立25周年、合肥市・久留米市友好都市40周年などの記念活動をはじめ、数多くの活動に現地またはオンラインで参加しました。それらの活動を通して、中日双方の間で地道な草の根の交流活動が展開されてきたことに感銘を受けました。多くの活動はオンラインによるものですが、現在できることが最大限行われており、経済・貿易面から文化・スポーツ面まで幅広く交流が行われ、双方の市民の間で広く歓迎されていると実感します。合肥市と久留米市は今後交流を強化する覚書に署名しました。

 第4に青少年、文化面の絆です。オリンピックをテーマとする第24回中日青少年書画交流大会などが開催され、心の琴線に触れる多くの作品がありました。両国の青少年は書道・絵画を通して交流することができます。両国には漢字という共通した文化があり、それを用いて希望や夢などを表現していると思います。

 第5に中日地方発展協力モデル区という絆です。20年、中国政府は6つの中日地方発展協力モデル区を設置しました。総領事館は大連市、青島市、九州経済界などと協力し、大連と青島のモデル区の説明会を開催したほか、青島市に設置された上海協力機構の地方経済貿易協力モデル区について、九州との物流マッチングに関する説明会を開催しました。これらのイベントを通して、双方の企業間での連絡チャネルが形成されてきています。

 物流協力では、今後協力を強めるために協定や覚書を締結しようという話も出てきており、日本とヨーロッパまでつながる協力メカニズムの構築も検討されています。

「中日(大連)地方発展協力モデル区」説明会の様子(21年5月開催)
「中日(大連)地方発展協力モデル区」説明会の様子
(21年5月開催)

中国は引き続き対外開放を堅持

 ──中国国内を見ると、中国共産党が歴史決議を採択するなど大きな動きが見られました。

 律 昨年は中国にとって一里塚の年になったといえます。政治面では中国共産党は建党100周年を迎え、小康社会(いくらかゆとりのある社会)の建設という目標を実現しました。そして全面的に社会主義現代化国家の建設をスタートさせ、2つ目の百周年の奮闘目標に向けて新たな船出をしました。11月に開催した中国共産党第19期6中全会のコミュニケにおいて、100年間の重要な成果と歴史的経験を全面的に総括し、私たちはいかにして成功できたのか、これからどのようにすれば引き続き成功できるのか、深く分析しました。中国共産党の「第3の歴史決議」となる「党の百年奮闘の重要な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議」は、中華民族の偉大な復興のためのガイドラインとなるでしょう。

 6中全会は平和的発展を強調すると同時に、今後さらに大きな範囲、深いレベルで対外開放の枠組みを形成していくことを強調しています。今後、中国は各国に対して重要な経済発展の機会を提供していくでしょう。

 経済面では、昨年は第14期5カ年計画(21~25年)のスタートの年でもありました。中国はコロナの感染拡大防止をうまく行い、良好なスタートを切りました。中国は経済の発展および感染対策の両方において世界の前列に位置するという自信があります。科学技術の水準を飛躍的に高め、サプライチェーンはより強靭なものになりました。昨年の中国の経済成長率は8.1%で、“比較的高い成長率―比較的低いインフレ率―比較的多い就業数”という良い組み合わせを達成しました。

 全体的に見れば、中国経済には発展のための多くの有利な条件があります。経済の強靭性、潜在力、完備された産業体系、豊富な人的資源、インフラの利便性の高さ、世界有数の大きな市場があります。加えて、中国の政策金利は比較的高く(事実上の政策金利とされるローンプライムレートの1年物は3.8%)、財政上の余力もあるため、政府には金融・財政政策上の手段が十分にあります。このような条件から、政府は強いリーダーシップを発揮できると信じています。

 率直にいえば、中国経済はエネルギー不足の問題、多くの国などにおけるオミクロン株の爆発的感染などの問題がサプライチェーンに影響をおよぼしかねず、不安定さも抱えていることも認識しています。ただ、全般的にいえば、引き続き回復基調にあり、発展する勢いがあり、長期的に上向きというファンダメンタルズは変わらないと思います。

 また、中国は貧困問題を全面的に解決することができ、中間層の人数を増やしています。農村や地方も発展させながら、国全体として成長させ、多くの地域の生活レベルを高め、収入を増やしたことにより、かつて貧困地域とされていた多くの地域が貧困状態から脱出することができました。中間層は現在の約4億人から35年には約8億人に増えると見込まれています。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
律 桂軍
(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

(後)

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