福岡県―江蘇省友好都市30周年を迎え、経済から文化まで交流を促進(後)
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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏新型コロナウイルス感染症の拡大で国際的な往来が激減するなか、日本にある各国の団体などはオンラインを駆使し、できる限りの協力、交流を進めており、中国駐福岡総領事の律桂軍氏は2021年、九州・山口・沖縄と中国の間の絆が強化されたと評価する。九州と中国との関係や中国国内の政治経済状況などについて、律総領事に話を聞いた。
日中両国はグローバル、相互補完的な視点で協力を
──今年の両国の協力におけるポイントは何でしょうか。
律桂軍氏(以下、律) 経済・貿易面ではRCEP(地域的な包括的経済連携協定)が1月1日に発効したことが非常に大きいです。中日両国にはFTAの枠組みがありませんでした。将来的にメンバー間で約90%の品目において関税が撤廃されます。国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算によると、日本は2019年比で輸出入総額がメンバーとの間で約420億ドル、対中国輸出が約119億ドルの増加がそれぞれ見込まれるほどで、最大の受益国と見なされています。
RCEPはアジア太平洋地域の経済大国2カ国である中日両国間で初の自由貿易協定となります。日本の対中国輸出における工業製品のゼロ関税品目の占める比率は、RCEP発効以前の8.4%から今年25%に引き上げられ、将来的には86%に引き上げられます。これらの措置、規定により、両国間の輸出入の規模を拡大することができます。日本、とくに九州は自動車部品、鉄鋼などの輸出で大きな恩恵を受けるでしょう。加えて、RCEP加盟国が1つの経済圏となり、同じルールの下で経済活動を行えるようになるため、第三国において両国が合弁会社を設立し、協力しやすくなります。現在のところ、九州の企業が関わる具体的な事例の情報は聞いていませんが、今後生まれてくるでしょう。
──昨年9月、中国はTPP加盟を申請しました。以前から交渉を行っている日中韓FTAについても、中国はTPP並みの高水準の関税撤廃、障壁の撤廃などを考えているのでしょうか。
律 RCEPは経済自由化の枠組みに関して、二国間のレベルだけではなく、多国間のレベルでも非常に大きな意義をもちます。より開放レベルの高い中日韓FTAの締結は今後到達すべきステップとなります。中国は日中韓FTAを意識したうえで、このたびTPP加盟を申請しました。これは中国がより深いレベルで開放政策を進めるという決意の表れです。中国は日本、韓国との間でFTA交渉をおよそ10年間行っており、さらに進めるという意欲をもっています。
国際社会では、コロナなど感染症の拡大予防、地球温暖化対策、サプライチェーンの持続、デジタル技術によるイノベーションなどの重要性が日増しに増しています。なぜなら、これらは人々の健康・生命、さらに人類の安全、発展の前途に関わっているからです。中日両国ともこれらを重視しており、中国はワクチン開発、感染症コントロール、デジタル経済、新エネルギーなどの点において成長がかなり速く、世界でトップランナーの国の1つではないかと思います。
両国は双方の強みを意識して相互補完的な協力を行うことができます。すでに一定の成果を上げていますが、今後、友好都市、青少年、文化・スポーツ、経済・貿易などの諸分野の交流と協力を推進し、深め、さらに高いレベルに引き上げていくことが非常に重要であり、今年はそのための1年にすべきだと思います。
地域交流、相互認識を深める
──友好都市の交流では、今年、福岡県―江蘇省友好都市30周年を迎えます。スポーツ面では、北京冬季オリンピックが開催されています。総領事館として地方交流をどのように進めていきますか。
律 東京オリンピックはコロナという前代未聞のプレッシャーのなか、各界の人が血のにじむような努力を重ね、成功裏に行われました。これは日本およびオリンピックの歴史において、今後ずっと語り継がれていくでしょう。
今年は、中国と日本・九州との協力関係において、非常に大きなチャンスの年です。国交正常化50周年であり、江蘇省―福岡県のほかには、山東省―山口県、広西チワン族自治区―熊本県の40周年など13組が節目の年を迎えます。
総領事館としては年間を通じて国交正常化50周年および友好都市関係の節目を祝賀する一連の活動を行う予定であり、関連団体などと協力して比較的大規模なイベントもいくつか企画しています。地域交流では、九州地域の中日友好大会を企画しており、各県の日中友好協会、中国側の友好都市の関連団体がオンラインで一堂に会して、交流を行います。文化交流では、北京オリンピックをテーマとする中日青少年書画巡回展を企画しています。経済交流では、新春中国経済セミナーの開催を企画しているほか、中日地方発展協力モデル区の交流を推進していきたいと思っています。これらを通して、両国の友好の雰囲気を盛り上げます。
──九州・山口の市民へのメッセージをお願いします。
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【中国総領事】改革開放のなかで回復を続ける中国経済、新たなチャンス迎えた中日経済・貿易協力(前)律 3点申し上げます。第1に、今年は国交正常化50周年ですので、ぜひ日本国内の皆さんも中日の友好協力関係を大事にし、一緒に発展させることを望んでいます。この約50年、紆余曲折がありましたが、全般としては平和・友好・協力という方向を堅持しており、双方に重要な利益をもたらしています。日本でも国益の重要性が強調されますが、中日友好協力関係の維持と発展はまさに日本の国益にかなうものだと思います。50周年という節目の年を迎えるにあたり、双方がその好機を逃さず、友好協力を絶えず推進すべきであり、個別の問題によって日中友好という大局に影響をおよぼすことは避けるのが望ましいと思います。
第2に、客観的に中国を認識してほしいということです。今後50年の中日関係を展望するにあたり、大事なのは客観的に相手を認識することであり、絶えず変化している対象を客観的に認識することが求められます。中国には大市場があり、中国との協力を深めることは発展にとって大きなチャンスです。今後の日本経済にとって、中国との経済協力の重要性はさらに高まります。政治的な問題が大きくなって経済協力にマイナスの影響をおよぼすことを危惧しています。中国は平和的、開放的な発展を堅持し、人類の運命共同体の構築に努めています。現代化国家の建設の過程において、中国は日本と協力を強め、共に繁栄する道を歩んでいくことを望んでいます。中国の繁栄は日本の発展にとってチャンスであり、脅威ではないという共通認識を固めてほしいと思います。
第3に、中国共産党について客観的に認識してほしいということです。中国を認識するカギは中国共産党を認識することです。百年来、中国共産党の強いリーダーシップの下、中国はアヘン戦争以降の中国に対する侵略、植民地状態から脱出し、中国の国民は国家の主人公になりました。中華人民共和国が成立して73年となります。中国は共産党の強いリーダーシップの下、急速な経済発展と、社会の長期的な安定という2つの奇跡を実現しました。中国は今後もさらなる発展を遂げ、国民の生活は絶えず良い方向に向かっていきます。対外関係においては常に世界のことを念頭に置き、終始世界の目線で人類に関心を寄せ、開放を堅持し、互恵関係を重視し、Win-Winを堅持していきます。
(了)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
律 桂軍(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。関連記事
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