都市間戦争の目玉は空港移転? 24時間化で首都機能の受け皿に(後)
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福岡大学工学部社会デザイン学科
教授 柴田 久 氏
(株)R.E.D建築設計事務所
代表取締役 赤樫 幸治 氏
(株)アクロテリオン
代表取締役 下川 弘 氏「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」をはじめ、都心部を中心とした市内各地で複数の再開発プロジェクトが進行している福岡市。全国的にも疲弊していく地方都市が多いなか、人口増を背景にいまだ成長を続けている福岡市は、これからどのような方向性で都市開発を進めていくべきなのだろうか。マクロからミクロな視点まで、都市開発やまちづくりについて造詣の深い3人に語り合ってもらった。
数十年先の将来を見据え、今問い直す「福岡の良さ」
──最後に、これからの福岡が目指すべき都市開発の方向性について、考えをお聞かせください。
下川 以前より私は、約30年先の2050年の福岡を見据えたグランドデザインを、今この段階で策定していくべきだと主張してきました。国内だけでなく、海外も含めた都市間競争で後れを取らずに、福岡がどう戦っていくのか──。1つには、24時間使えない現福岡空港を移転させることが考えられます。空港が現在地から移転すれば都心部の高さ制限もなくなりますし、約350haもの広大な跡地を活用して、さまざまな取り組みが行えるようになります。たとえば、起こらないに越したことはないのですが、近い将来に首都直下型地震や南海トラフ巨大地震が発生して、首都機能がマヒしてしまった場合、その受け皿となり得るのはやはり福岡だと思います。そうした想定も行いながら「福岡がどうあるべきか」といったことを考えて、これからの都市開発を進めていかなければならないのではないでしょうか。
柴田 テレワークの普及などで、「必ずしも職住近接でなくともいい」という認識が半ば強制的に世論として認知されていくなか、改めて「自分が住みたいまち・働きたいまちはどこか」ということが世界中で問われるようになっていくと思います。そのときに、福岡がちゃんと選ばれるように、「福岡だからこそ住みたい」と思えるようなまちづくりを見据えていく必要があります。都市間競争においても、国内外の他都市との関係性なども踏まえながら都市開発・まちづくりの方針を見極めていかなければなりませんが、そのときに「どこどこで成功しているから」「東京でこういうものが進んでいるから」といったような、他所で成功したものをもってくるのではなく、福岡自身のオリジナルなものをいかに見つけていくかが非常に大事です。これまで福岡のまちが、どのような経緯で発展し、そこにはどういった文化が醸成され、そして人々がどのような活動で賑わってきたのか──そうしたことを改めてきちんと踏まえながら進めていかないと、間違ってしまうように思います。
赤樫 「福岡の良さとは何か」と改めて問われるとなかなか難しいですが、コンパクトで“ちょうどいい”というのは1つあると思います。都心部はそれなりに都会的な雰囲気がありつつ、ちょっと離れると自然もあり、東京などと比べると通勤・通学も苦ではない。そうした地方都市の良さが詰まったようなまち、それが福岡の都市としての魅力ではないでしょうか。一時はインバウンドなどで賑わっていたまちが、今はコロナ禍で一変した状況ですが、いずれコロナ禍が落ち着いて自由な移動が可能となれば、また盛り返せる、それだけ高い将来性を秘めたまちだと思います。
柴田 今から30年前を振り返ると、これだけ1人に1台スマートフォンが普及しているような時代が来るとは、誰も思っていませんでした。すると、これからさらに30年先の未来などは、予測もできない変化が待っているかもしれません。そうした予測できない未来に対して、今の状況からどうやって将来像を描いていくべきか。むしろ、「これだけは変えちゃいけない」「これだけ守らないといけない」というものを今しっかりと考えておくことが、逆説的に明るい将来につながっていくような気もします。どれだけ時代が変わったとしても「これが福岡なんだ」と胸を張っていえるオリジナリティを追求していくこと、それこそが目指していくべき都市・福岡の姿ではないでしょうか。
(了)
【坂田 憲治】
<プロフィール>
柴田 久(しばた ひさし)
1970年、福岡県生まれ。福岡大学工学部社会デザイン工学科教授。博士(工学)。2001年、東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻博士課程修了。専門は景観設計、公共空間のデザイン、まちづくり。カリフォルニア大学バークレイ校客員研究員などを務め、南米コロンビアの海外プロジェクトや九州を中心に、四国、東北を含む約50の公共空間整備、地域活性化に向けた事業、計画、デザインの実践に従事している。赤樫 幸治(あかがし こうじ)
1993年、立教英国学院(イギリス)高等部卒業。97年、日本大学生産工学部建築工学科神谷宏治・川岸研究室卒業後、(株)穴吹工務店設計部入社。2009年7月に(株)R.E.D建築設計事務所設立。下川 弘(しもかわ ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻課程修了。工学修士。一級建築士。専門は、建築計画・都市計画・まちづくり・教育部門。87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。本社建築設計部、技術本部、経営企画部、ベトナム現地法人VINADECOのGMなどを経て、21年11月末に退職。現在は(株)アクロテリオンを設立し、代表取締役を務める。ほかにC&C21研究会・理事やハートフルリンクアジア協同組合・代表理事、TOKYO BASE 096・幹事、熊本市企業誘致アドバイザーなど。
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