2024年12月23日( 月 )

『脊振の自然に魅せられて』新雪の脊振山(前)

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 6日、天気予報は翌日の福岡地区の山間部は大雪と知らせていた。「よし、明日は脊振へ行こう」と気持ちを入れ、カメラのバッテリーを充電する。17日早朝に出発の準備をする。自宅マンションに駐車した車の屋根は雪を被っていた。

 山行きの準備をして自宅を出たものの、雪かきブラシをもってくるのを忘れていた。引き返して取りに行くのも面倒なので、車のトランクを開けて、雑巾で車の屋根とフロントガラスの雪下ろしをした。

 エンジンを始動し暖気をして、フロントガラスの雪を溶かした。5分もすると雪が溶けた。10分ほどで準備が完了し、脊振山へ向かって愛車を進める。室見川沿いの県道を脊振山方面へ走ると、平日なので多くの通勤車とすれ違う。山間部から都心へ向かう車の屋根には20cmほどの雪が積もっていた。

 脊振の集落へ続く県道はカーブが連続する。県道を10分も進むと、山間部の荒谷集落(10軒ほど)が見えてきた。荒谷集落は屋根も田畑も薄っすらと雪を被っていた。さらに奥地へ進む。脊振山直下の板谷峠(脊振山の裾野)は積雪の峠となっていた。

 車から降りて、積雪の状況を確かめた。板谷峠の積雪は2㎝程度だった。山の斜面の笹藪も雪を被っていた。

 さらに山の奥地の板谷集落へ向かう。福岡市早良区の最も奥地にある板谷集落は人影もなく、静けさだけが漂っていた。板谷集落を直進すると、背振少年自然の家を経て五箇山ダムへ届く。山のなかの県道は生活道路でもある。

 ここから右折し、自衛隊専用道路へ入る。坂道を進むと積雪が増えてきた。自衛隊道路は脊振山直下(標高950m)にある航空自衛隊基地に続く専用道路で、今は完全舗装になり、ここ数年で法面も補強された。

 5分ほど走ると、1台の軽自動車が坂道を下ってきた。道路幅が狭いので離合は無理だと判断し、10mほどバックして離合しやすいようにした。離合が終わると軽自動車から男性が降りてきて、「上の方の側溝に車が落ちています。軽自動は通れると思いますが…」と助言してくれた。

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 カーブが連続する急登の専用道路を進むと、下り急カーブを曲がりきれずにワゴン車が運転席側を右下にして、側溝に斜めに滑り落ちて傾いていた。筆者と反対方向である。

 斜面から浮き上がった後輪をよく見ると、タスノータイヤを装備した自衛隊の車であった。その後部には、一緒に走ってきた2台の車が連なってカーブ脇に停車していた。「やっちまった」とあきらめ顔だった。

 側溝に落ちた車は人力では引き上げられない状態だった。隊員が道路に降りていたので、「誘導してもらえますか」と筆者は頼んだ。サイドミラーを畳んでいたので事故車両との間隔を確認できなかったが、隊員が誘動してくれたおかげで何とかこの場を脱出できた。

 さらにカーブが連続する自衛隊専用道路を登る。愛車は4輪駆動でスノータイヤを装備しているため、雪道走行は道路が凍結していない限り快適である。専用道路の積もった雪も増えてきたので、動画撮影用の小型カメラ(GoPro)をダッシュボードに装着し、雪道走行を撮影する。

一面の銀世界となった脊振山駐車場、正面は脊振山(1,055m)
一面の銀世界となった脊振山駐車場、正面は脊振山(1,055m)

 10分も走ると脊振山駐車場に届いた。駐車場は純白の雪面であった。車のタイヤ跡はあるが、停車中の車は1台もない。

 積雪5㎝の雪面となっていた。しかし、期待した樹氷は見られなかった。それでも一面の銀世界に1年ぶりの感動を覚えた。静まり返った銀世界を見て、筆者の体に新鮮な血液が循環し始めた。頭が冷気とともに冴えてくる。

 下界とは異なる雪の別世界が目の前に広がっているのだ。車内で、保温ポットからコップにお湯を注ぎ、コンデンスミルクのチューブを絞りホットミルクにして、チョコレートで一息つく。

 車の温度計はマイナス6℃を示している。時折、雲の隙間から漏れてくる太陽の光が空気を暖めているのか、気温の割に寒さは感じなかった。風がないこともあるだろう。ホットミルクを飲み終え、山歩きの準備に取りかかる。長靴に古新聞を折りたたんで靴底に敷き詰める。ゴム長だけでは足底がジンジンするほど冷えるので防寒対策である。50年前は、新聞紙を体に巻き付けて防寒対策をしたらよいと言っていた時代だった。

積雪の九州自然歩道、ここから金山方面への縦走路が続く
積雪の九州自然歩道、ここから金山方面への縦走路が続く

  ダウンジャケットにヤッケ、スキーズボン、長靴姿で雪道散策に出かけた。決してカッコ良くないが、雪道を歩くのはこれが一番である。カメラを首から下げ、動画用ビデオカメラを片手に非常食を入れたザックを担いで、雪面の九州自然歩道を気象レーダー方面へと歩いた。

気象レーダーへ続く白銀の道(白い建物が気象レーダー)
気象レーダーへ続く白銀の道(白い建物が気象レーダー)

 駐車場の下にあるキャンプ場の広場は、誰も踏みしめていない純白の雪原が広がっていた。キャンプ場は野球場並みの広さがある。「きれいだ!」。思わず感動する。

 雪原は陽の光に照らされてまぶしく輝いていた。動画を撮影しながら、カメラも首から下げて欲張って写真撮影を行った。

(つづく)

2022年2月21日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

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