ウクライナ情勢、日中経済への影響は
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経済安全保障専門家 北島 優斗
中露関係が強化
ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアへの経済制裁が強化されている。それについて日本企業はどう考えているのだろうか。日本も欧米と結束してロシアへの経済制裁を強化することから、その影響を日露経済という範囲で考えることは当然であるが、その範囲を超えて、もっと広い視野で考えていく必要がある。
日本にとっての最大の貿易相手国は中国であり、日本経済にとって中国は切っても切れない存在であることに疑いの余地はない。しかし、今回のロシアのウクライナ侵攻は今後の日中経済に暗い影を落とすことになる。欧米・日本とロシアとの間で経済的な亀裂が深まるなか、中国がロシアに対して経済面での接近を図っているからだ。また、中国は最大の競争相手を米国と位置づけており、対米という観点においてロシアは重要なパートナーでもある。要は、現在のウクライナ情勢と中国を繋いで世界情勢をみていくことが重要なのだ。
それは、最近のロシアと中国をめぐる動きからもわかる。たとえば、中国の習近平国家主席は2月4日、北京五輪開会のタイミングで訪中したプーチン大統領と会談した。昨年の中露貿易額が過去最高を記録したことを確認し、ロシアが求める北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大阻止と中国が求める1つの中国(台湾情勢について)を相互に尊重し合うことで一致した。また、中国の王毅外相は、ウクライナ侵攻後の3月30日に訪中したロシアのラブロフ外相と会談し、両国がウクライナ危機のなかでも政治・経済的な関係を強化していくことで一致した。
中国とどう向き合っていくか
習政権がロシアへの支持を表明すれば、当然ながら国際社会から批判を浴びることになるため、習政権はそれを避けている。しかし、上述したように中国にとって最大の競争相手は米国であり、また近年は新疆ウイグル問題もあってほかの欧米諸国との関係が冷え込んでいるため、対欧米において、ロシアとの良好な関係が重要になっている。中国は自らの国益にとって何が重要かを常時見極め、戦略的に動いているのである。
こうした大国間の関係により、世界経済において「欧米VS中露」の対立構図が先鋭化しないかが懸念される。この対立構図が顕著になれば、日本の立ち位置は極めて難しくなる。
日本経済の対中国依存はロシアの比ではない。現在はロシア単独で制裁が強化されているのみだが、中国がロシア寄りの姿勢を鮮明にすればするほど、米中対立がさらに深刻化する危険性がある。日本が米国陣営から離反することは考えられず、現実問題としては、日本がその状況下で中国とどう向き合うかが重要となる。
現在のところ、緊迫するウクライナ情勢による日中経済への影響はほぼないといえよう。しかし、中長期的に安定した経営を考えるのであれば、上述のような潜在的リスクについても経営者層は重視していく必要がある。米国の力が相対的に低下し、中国の影響力が世界中で増している今日の世界には、多種多様な地政学的リスクが考えられるのだ。
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