2024年07月18日( 木 )

財政危機叫ぶ悪質財務省デマ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は財務省が増税強行のために政府の財務状況を悪く見せようとしていると指摘した5月10日付の記事を紹介する。

国の長期債務残高が2022年3月末で1000兆円を超えたことが報じられた。

報道は財務省発表通り

「税収で返済しなければいけない国の長期債務残高」

と説明する。

メディアの不勉強は悲しむべき水準だ。

日本経済新聞
「国の長期債務、初の1000兆円超え 21年度末」
https://s.nikkei.com/3LZRJrJ

「財務省は10日、税収で返済しなければいけない国の長期債務残高が3月末時点で1017兆1,072億円になったと発表した。18年連続で増え、初めて1千兆円を超えた。新型コロナウイルス感染症の対策の財源を確保するため国債発行を増やしたことが響いた。「賢い支出」で成長力を底上げしないと経済が停滞し税収が増えないまま債務が膨らむ懸念がある。」

記事は、

「2002年3月末の長期債務残高は485兆4,180億円で20年間で倍増した。21年3月末からは約44兆円増えた。」

と記す。

だが、「国の長期債務残高を税収で返済しなければならない」とは限らない。

発行した国債の返済については、償還ルールが定められ、償還に必要な資金の国債整理基金への繰り入れが行われているが、税収によって国債の残高を最終的にゼロにする定めはない。

赤字国債=特例国債は、当初、現金での償還が定められていたが、資金繰りがつかないため、建設国債同様に借換債発行による債務返済を認めた経緯がある。

国債発行で調達した資金は60年で返済することとされてきた。

財政支出は税収で賄うこととされたが、投資的な経費については国債発行による財源調達が認められた。

支出見合いの資産が残存するため、借金による財源調達が合理的と考えられたからだ。

これを建設国債と呼ぶ(財政法4条債)。

住宅ローンを組んで家を購入するのと同じこと。

政府支出の対象を土地20%、建物80%とし、それぞれの資産価値発揮年数を100年、50年とすると、政府支出全体の資産価値発揮年数(耐用年数)は60年になる。

そこで、国債発行(建設国債)の返済は60年で終えることとされた。

これに対して財政法が認めていない経常的な支出の財源が不足したことから赤字国債が発行されるようになった。

財政法は経常的支出の財源調達のための国債発行を禁じているため、特例にかかる法律を各年度ごとに制定し、この法律を根拠にして国債を発行してきた。

これが赤字国債(特例国債)である。

この赤字国債(特例国債)は満期が到来した際に現金で償還することが義務付けられたが、資金繰りが立たず、借換債の発行による償還が認められるようになった。

この特例国債についても建設国債と同様に、60年で償還を終えることとされてきた。

要約すれば、建設国債も赤字国債も償還ルールに差異がない。

資金繰りの状況によってなし崩しで国債の発行、借換債発行による償還が行われてきた。

従って、今後においても、ルールはあってなきがごとし。

ない袖は振れないのであって、資金繰りがつかなければ借金=国債発行による財源調達が続く。

同時に考えるべきことは、政府発行の長期債務残高をゼロにする必要など存在しないということ。

財務省が「政府が借りたお金は必ず税金で返済しなければならない」とするなら、まずは日本政府が米国政府に貸しているお金を米国の税収によって返してもらうべきだ。

日本政府の外貨準備高は2022年3月末時点で1兆3,561億ドル。

そのうち、外貨建て証券は1兆894億ドルだ。

1ドル=131円で換算して142兆7,114億円の外貨建て証券を保有している。

この大部分が米国国債である。

日本政府は143兆円もの巨額資金を米国に貸している。

長期債務は税金で返さなければならないというなら、米国からこのお金を返してもらうべきだ。

これを市場経由で実行するのが米国国債の売却。

円安が進行している。

日本政府の米国国債売却を「ドル売り介入」と呼ぶ。

日本政府は堂々と保有米国国債を金融市場で売却すべきだ。

他方、巨額の債務を抱える巨大企業を見るがよい。

債務をゼロにしようと考える企業はほとんど存在しない。

長期債務は適切に管理すれば良いものであって、債務残高をゼロにする必要はない。

※続きは5月10日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「財政危機叫ぶ悪質財務省デマ」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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