2024年11月21日( 木 )

「東京大地塾」ウクライナ侵攻で激論(4)

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 地域政党「新党大地」代表で「日本維新の会」副代表でもある鈴木宗男参院議員は、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を毎月開催している。最近は3回連続で、ロシアのウクライナ侵攻を取り上げた。

(左から)佐藤氏、鈴木氏
(左から)佐藤氏、鈴木氏

    佐藤氏が紹介した「アゾフ大隊」に注目すると、西側世界とロシア語圏との超え難い情報ギャップが生じる原因が見えてくる。両陣営ともに都合が悪い情報には目を背ける一方、都合の良い情報ばかりを熱心に報道するという偏向報道に終始した産物に違いないのだ。

 東京大地塾で佐藤氏は、アメリカとウクライナの決定的な違いがわかっていない日本の政治家の軽さについても、次のように述べていた。

 「私は、国会の決議のなかで『我々はウクライナの人々とともにある』というのは非常に違和感がある。本当に『共にある』のか。本当に一緒に戦うつもりがあるのか。我々が『共にある』といえるのはアメリカだけです。なぜならば、アメリカは我々の唯一の軍事同盟国だからです。そういうことで私は、日本の政治エリートの軽さを感じるのです。ウクライナと日本は同盟関係にはない。同盟関係にある国と同盟関係にない国とは本質的に違うのです」。

 さらに佐藤氏は、「日米同盟は不可欠なのです。だから日米同盟を毀損するようなことはしてはいけない」と強調したうえで、こう続けた。「ただアメリカだって単一ではない」「もしトランプさんだったらウクライナ侵攻が起きただろうかといつも考えている。『プレジデント・オンライン』に書きましたが、多分起きなかっただろうと思っている」と述べた。そして、バイデン大統領の息子の疑惑に触れながら、「アメリカの内政問題」でもあると指摘したのだ。

 「それから皆さん、覚えていますか。トランプさんがウクライナゲートの問題で弾劾されそうになったでしょう。それは、『バイデンさんの息子の問題を徹底的にやるとウクライナに圧力をかけたからではないか』と。こういう疑惑だってあります。こういったことを総合的に考えると、ウクライナ問題はアメリカの内政問題。とくにバイデン政権にとっては重要です。トランプ前大統領はそこをすごく見ている。だから(今年11月の)中間選挙後、今回のウクライナ政策がアメリカにおいてどういうふうになるかということについても、我々は注意深く見ていかないといけない」。

 ウクライナ問題をより大きな視点で捉えた分析といえるが、この「アメリカの内政問題」という指摘と、冒頭で紹介した「私は今のアメリカに戦略があるとは思えない。(中略)ロシアの立ち位置を弱くする。それ以上の戦略は今ないと思う」を並べ合わせると、バイデン大統領とトランプ前大統領の違いが鮮明になってくる。

 4月12日に公開された『プレジデント・オンライン』の続編記事で佐藤氏は、こんな解説をした。アメリカ世論の関心事は「ウクライナ問題」よりも「ロシア産原油禁輸がもたらしたガソリン価格の高騰」であると指摘した後、バイデン大統領の支持率が40%と就任後最低を更新しているのは「経済対策への不満によるもの」と分析し、次のように続けた。

 「こうなると、トランプイズムの再来です。トランプイズムとは自国が第1で、世界の警察官の役割はしないこと。シリアとアフガニスタンから手を引き、中国と対決姿勢を取り、ロシアとは事を構えないという外交姿勢です。(中略)トランプのやり方のほうが現実的ではないか、と感じるアメリカ人は一定数います」。

 東京大地塾での佐藤氏の注目発言はほかにもあった。両陣営の対立激化に危機感を抱いていたのだ。

 「今ロシアがやっていることは間違っているということは明らかなのです。あれだけの人を殺して、ロシアは『極力民間人の犠牲は出さないようにしている』『ウクライナ側が人口密集地のところに兵器やスナイパーを入れているから』と(主張している)。しかし、これはどの軍隊もやることですよ。ロシアだってナチスに攻められたときはやっていたではないですか。だから、無辜(むこ)の人がたくさん殺されるという現状から目をふさいでいる今のロシアはおかしい。

 ものすごく嫌なのは、リスクを冒してソ連の体制を崩壊させて、エリツィンの改革路線を定着させ、アメリカ的な国際スタンダードの価値観でやっていこうとしていた人たちが今、完全に心の底から『アメリカというのは世界を支配するためだけに、我々スラブ人を単なる道具として使っている』と(思っていること)。今、ロシアのニュースでは『アングロサクソン』という言葉がしょっちゅう出てきます。要するに、『アングロサクソン系の世界支配という話で続いているグレートゲームなのだ』と」。

 「私はロシアという国がどれくらい恐ろしいか、よくわかっているつもりです。私自身もロシアの連邦保安庁とトラブルをいくつも抱えましたから。時には殴られたこともありますし、しびれ薬を飲まされたこともあります。あの国がどれくらい怖いのかを外務省のなかで最もよく知っている1人だと思います。

 ですから、あの国を不必要なかたちで刺激して怒らせると、そのしっぺ返しはとんでもないものになって、そのなかには軍事衝突まで含まれると認識しているので、少なくとも誤解から両国間で戦争が起こるようなことだけは避けないといけないと考えています」。

 日本を含む西側世界とロシア語圏の情報ギャップが広がるなか、ウクライナ問題を多角的かつ冷静に分析する佐藤氏と鈴木氏。今後も両氏の言動に注目したい。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

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