「東京大地塾」ウクライナ侵攻で激論(3)
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地域政党「新党大地」代表で「日本維新の会」副代表でもある鈴木宗男参院議員は、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を毎月開催している。最近は3回連続で、ロシアのウクライナ侵攻を取り上げた。
佐藤氏の発言の後、鈴木氏は筆者の質問の未回答部分を説明してくれた。
「私は安倍元総理と先週も先々週も会っています。安倍元総理は『力による侵攻はいけない』とは明確に言っているが、それ以上のことは言っていない。同時に、今のやり方に明確な考えや思いをもっています。いずれ安倍元総理の出番はあると思っています。
森元総理もプーチン大統領と一番信頼がある人ですが、森さんも『今は鈴木さん、黙っているしかない。世の中の空気として黙っているしかない』というお話でした。
それと、『維新の幹部と考え方が違う』というが、『力による侵攻はいけない』という基本は一緒です。松井一郎代表は私の発言をきちんと理解しています。『鈴木さんは鈴木さんの思いがあっていいし、それを発言しているだけだ』ということで、何も心配ないと思っています。
同時に、今日(会場に)維新の人もいますが、歴史をどれだけ勉強しているのか。ウクライナ問題は今だけの話ではない。そういったものがすべて頭に入ってものをいうのならいいが、今の感情的な、今の現象面だけを見て『いい』とか『悪い』とか言ってはいけないと思っている」。
この日は午後6時からゼレンスキー大統領の演説が衆議院議員会館で予定されていたため、まだまだ議論は尽きない雰囲気であったが、午後5時半すぎに終了した。
日米欧の西側メディアがゼレンスキー大統領称賛で一色に染まるなか、事態の推移を多角的かつ冷静に捉えて分析していく鈴木氏と佐藤氏の存在は貴重だ。鈴木氏は4月6日のブログ「ムネオ日記」で、メディアの印象操作について次のように問題視した。
「テレビからロシア側、ウクライナ側の主張、映像が知らされるが、何が真実で、何が正しいのか、受け止めに躊躇してしまう。情報化の時代、それぞれ都合の良い“頭づくり”でつくられてしまう危険性をつくづく感じながら、同時にメディアの使い方、発信の仕方によってまったく違う価値観が出てくることは恐ろしい限りである」。
メディアによってまったく違う価値観が出てくること(“頭づくり”)については、東京大地塾で佐藤氏が同じような見方を披露し、次のように解説した。
「ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア語圏と西側世界で超え難いくらいの情報ギャップができている。
ロシアの情報空間においてウクライナ側、とくに内務省傘下の『アゾフ』というカギ十字(ナチスの象徴)みたいなマークを付けている部隊がやっていることを中心に報じられている。ひどいことが(ウクライナ東部の)ドネツクやルガンスクで起きていることがロシアでは報じられて、ロシア人はそれをベースに“頭づくり”が行われているわけです。
それに対して西側においては、そこのところは編集でカットされてしまって、ロシアがやっているひどいことばかりが映される。ロシアではそこのところは映らないのです。重要なのは、ロシア人だけではなくて、ロシア語空間(カザフスタン・タジキスタン・ウズベキスタンなど)と西側世界の間で、情報の超え難いくらいのギャップがこの3週間でできていることなのです」。
この「アゾフ大隊」と呼ばれるネオナチ集団については、ルポライターの清義明氏も「ウクライナには『ネオナチ』という象がいる~プーチンの『非ナチ化』プロパガンダのなかの実像」(3月23日公開のウェブ論座)のなかで解説している。西側の識者がアゾフ大隊の存在を否定して「ロシアが描いたプロパガンダ」と主張しているのに対して、アメリカの政治専門紙「ザ・ヒル」が「これは悲しいことに間違いである」と17年の記事で反論。その内容を次のように紹介していた。
「このザ・ヒルの記事では、国際連合人権高等弁務官事務所とヒューマン・ライツ・ウォッチが、東部紛争でアゾフによる一般市民の拉致・監禁、拷問などの事実の告発と批判を取り上げている」。
アゾフ大隊の人権侵害行為について調査し、会見でその内容を読み上げたのは、れいわ新選組の山本太郎代表だ。東京大地塾が開かれた翌日(3月24日)の会見で、筆者の質問に対して次のように述べた。
「2014年の親ロシア政権転覆後、ウクライナ国内で民族主義・ナショナリズム思想を持つ民間武装組織が特定の政治家の支援を受け活動してきた。このことは、欧州安全保障協力機構(OSCE)の報告書でも認められている」。
「22年3月2日英紙デイリー・テレグラフ、16年の国連・人権高等弁務官事務所(OCHA)の報告書によると、ネオナチのヴォルフスアンゲル記章を誇らしげに付けたアゾフ大隊は、ウクライナ東部の住民を攻撃して避難させ、民間の資産を略奪し、拘束者をレイプし拷問することで悪名高い存在である。なぜ西側はウクライナのネオナチを無視するのか」。
「アゾフ、アイダール大隊などの武装グループは、正規の治安部隊と一部統合されながら、親ロシア派との武力衝突に関与。拷問や虐殺など非人道的な行為が、国際人権団体や国連機関から批判されてきた」。
(つづく)
【ジャーナリスト/横田 一】
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