2024年12月22日( 日 )

「東京大地塾」ウクライナ侵攻で激論(2)

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 地域政党「新党大地」代表で「日本維新の会」副代表でもある鈴木宗男参院議員は、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を毎月開催している。最近は3回連続で、ロシアのウクライナ侵攻を取り上げた。

 ──そういうなかで、どういう活動が求められているのでしょうか。

 佐藤 常に何事についても是々非々で事実を追及していくような姿勢の人たちは、自分の信念に基づいてやっていく仕事が非常に重要だと思う。私はマスメディアの人間ではないが、元行政官でもあったし、やはり何よりも私の場合には、今回のウクライナの置かれている状況が70数年前の沖縄と重なるのです。

 ああいう状況に置かれてしまっている人たちに対して、外にいる人は何ができるのか。やはり回答はないのです。とにかく私にとってできることは、無責任なことは言わないこと。だから「逃げろ」とか、「徹底抗戦しろ」とか、「やれ、やれ」とか、「ウクライナと我々は」とか言わない。

 最後に筆者は、西側メディアがほとんど報道しない内容も盛り込んだオリバー・ストーン監督の映画「ウクライナ・オン・ファイヤー」が鈴木氏の主張を理解する一助になったと指摘したうえで、「(この映画は)ロシア側のプロパガンダ、フェイクニュースではないか」といった批判が出ていることについて聞いた。

佐藤氏
佐藤氏

    佐藤 フェイクに関しては、ロシアの第1チャンネルで毎日、「アンチフェイク」という番組をやっている。自分たちのやっているフェイクについては一切言及しないで、欧米のフェイクを1つひとつ潰していくやり方なのですが、そうすると、お互いフェイク合戦をやっている。

 ロシアはもはや西側に理解されようと思っていない。要するに、「ロシア語を母語とする、あるいは母語と同じくらい使える旧ロシア圏の人たちだけに理解してもらえばいい。どうせ西側には我々のことはわからない」という内側にこもってしまっているロシアは怖い。

 佐藤氏の回答が一段落したところで、鈴木氏は「ゼレンスキーが大統領になってからミンスク合意、停戦合意を履行しなかったことが今日の事態を招いている」(2月26日の「ムネオ日記」)と指摘したウクライナによる約束違反の説明を始めた。すると、これに佐藤氏が反論するというやり取りが見られた。

 鈴木 民主主義というのは約束を守るのが前提です。やはりミンスク合意は、曲がりなりにも(ウクライナも)いったん合意しているわけですから、これを守っていくのが一番です。

 佐藤 先生と考えが違ってしまうと思うが、もうミンスク合意のことを話しても、死んだ子どもの年齢を数えるのと一緒になってしまっているから、今はもうそこには戻れない。

 鈴木 ただ、そこで私がやはり言いたいのは、ケンカをする前に話し合うことだと思うのです。

 佐藤 それはその通りです。

 鈴木 その話し合いを最初に誰が断ったのか、ということ。ここは冷静に考えないといけない。

 佐藤 ゼレンスキーさんの立場からすると、話し合うことはできないのです。話し合って妥協することになったら、周りの人たちからゼレンスキーさんは降ろされてしまう。だから、ゼレンスキーさんとプーチン政権の間で何らかの合意ができるとは私は思わないのです。

 鈴木氏の主張と佐藤氏の分析が合体することで、ロシアとの話し合いによる妥協が許されないというゼレンスキー政権側にも原因があることが浮き彫りになっていく。同時に、今はウクライナ側の問題を議論できる状態でないことも理解できた。

 佐藤氏はこの後、ロシアで大ヒットしたテレビドラマ「月の裏側」の続編が一転して低視聴率になったのは、内側にこもる閉鎖的社会を描いたためと分析。今のロシアの姿と重ね合わせつつ歴史的考察も行った。

 「(ロシアが)だんだん閉鎖空間になってきて、(西側諸国と)お互いに交われなくなってしまう。そうすると、全然違う像でお互いを見るようになる。これが怖い。ソ連崩壊からこの30年間は例外的な時期で、実はロシアは内側にこもっていて謎の国なのだというところにまた戻っていくのではないか。しかし、そのロシアは核兵器をもっている。この状況は良くない。だから何としても、ロシアの窓を開けていく仕事をしないといけないと。

 これは過去に日本の外交官として仕事をしてきた人間として、やはり自分の責任としてあると思う。あの国を閉ざさないようにしないといけない。これがすごく重要だと思うのです」。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

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