2024年11月21日( 木 )

日本上陸が懸念される感染症“モンキー・ポックス”(サル痘)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、5月27日付の記事を紹介する。

不穏なイメージ    「一難去って、また一難」となりそうな雲行きです。何かといえば、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が「ようやく峠を越えたのではないか」といわれるようになったのに、ここにきて新たな感染症の出現が確認されるようになったからです。

 脅威の源泉は「モンキー・ポックス(サル痘)」と呼ばれる感染症です。これまではアフリカ大陸中央部にしか存在しておらず、その存在が確認されたのは1958年のことでした。アフリカ以外では確認されたことがなく、かつて3億人の命を奪った天然痘の一種とされています。ところが、この5月上旬にスペインで、8,000人が参加して開かれた大規模なLGBTフェスティバルが感染源と目され、その参加者から感染が広がったようです。

 恐ろしいことに、すでに欧米を中心に20カ国以上で感染が確認されています。たった2週間でヨーロッパから北米大陸にまで猛スピードで広がっているわけです。最新の報道では、中東のアラブ首長国連邦(UAE)でも感染者が確認されています。現時点では、同性愛者同士のスキンシップで感染が拡大すると警告されていましたが、感染者が使ったタオルや衣服を通じても伝播する可能性があるため、要注意でしょう。

 致死率は1%から最悪10%程度であるため、過度の心配は不要とのこと。とはいえ、先に来日したバイデン大統領もWHOのテドロス事務局長も、相次いで「無視できない危険をはらんでいる。早急な対策が欠かせない」と危機感を募らせています。

 アメリカはじめドイツ、フランスなど欧州各国でも、早速、サル痘用のワクチンを緊急かつ大量に確保する動きを始めました。バイデン大統領曰く「アメリカ国民全員に行き渡る量を入手するので安心してほしい」。コロナのパンデミックを経験したことで、対策は素早いといえそうです。

 実は、こうした事態を予見していたかのように、天然痘ワクチンを改良してサル痘用のワクチンを開発していたワクチンメーカーがあるというので驚きます。しかも、このメーカーにはビル・ゲイツ氏やCDCのファウチ博士が資金提供を行っていたとのこと。まさにCOVID-19用のワクチンを手回しよく準備していた欧米のワクチンメーカーと同じ流れが見て取れます。

 思い起こせば、ビル・ゲイツ氏は新型コロナウイルスが発生する直前の2019年10月に、ニューヨークで「イベント201」と称するシミュレーション会議を主催し、「感染症が勃発するので、ワクチンメーカーに投資すれば大儲けできる」と呼びかけていました。実際、その通りになりました。

 今回注目を集めているメーカーはオランダに生産拠点を構えるババリアン・ノルディク(BVNRY)社です。現時点では、サル痘ワクチンとして認証を得ているのは、このBVNRY社製しかありません。そこで、バイデン大統領は取り急ぎ1億2,000万ドル、すなわち1,200万人分のワクチンを発注しました。そうした報道がなされると、同社の株価は70%も急騰し、現在も高騰が続いています。これでは「モンキー・ポックスは投資家を大儲けさせてくれる“マネー・ボックス”か」と揶揄されるほどです。

 何やら、次々に発生する感染症ですが、いずれの場合にも、前もってワクチンの研究や製造が準備されているわけで、あたかも誰かがつくったシナリオ通りの展開といえなくもありません。しかも、専門家の間では「現在拡大中のサル痘はアフリカ由来のウイルスとは違い、人工的な手が加えられている」との指摘も出ており、ますます疑わざるを得ない状況です。

 その実態はまだ解明されていませんが、コロナの次は「サル痘」ということになりかねません。日本政府は「現時点では国内での感染は確認されていない。しかし、WHOとも連携し、注意を怠らないようにしたい」と述べるにとどまっています。コロナ禍がようやく収まる兆しが見えており、5月末からは海外からの旅行者の入国制限も順次緩和する方針を打ち出したばかりの日本政府としては、新たな感染症の登場は「寝耳に水」といったところのようです。

 しかし、昨年、ドイツのミュンヘンで開催された国際バイオセキュリティ会議においては「2022年5月中旬にモンキー・ポックスが世界的に大流行する」というシミュレーションが行われていました。この会議に参加した専門家の予測では「当初の被害者は限定的だが、2023年1月10日までには死者の数は130万人に達する。2023年末には、死者は数億人にまで膨れ上がる可能性がある」とされています。

 ワクチンが開発、製造されるのですが、ウイルスの変異が急速に進むため、「2022年末の時点ではワクチンの効果が効かなくなる」との予測も出されていました。こうした状況を事前に把握していたと思われるバイデン大統領は、今回のアジア歴訪においても、まずは韓国で、その後、日本でも「サル痘に気をつけろ」と語っていたものです。しかし、両国とも真剣には取り合おうとしませんでした。アメリカからは「日本にサル痘が上陸するのは6月10日前後」との具体的な忠告もあったようです。

 このまま、バイデン大統領の忠告を無視し、十分な対策を講じないまま海外からの旅行者の受け入れを緩和すれば、日本でも深刻な被害が発生することになることは「火を見るよりも明らか」でしょう。

 次号「第297回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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