【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(2)】部下の業績はわが業績?――「ギフトオーサーシップ」疑惑
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前記事でも紹介した通り、福大が公表している朔学長の研究業績リスト2636本のうち、「著書」は73本が、「論文」としては2283本が、各々のタイトルともにリストアップされている(2022年6月20日閲覧)。タイトル下には著者情報が記され、当該業績が朔学長1人に帰されるものか、それとも朔学長を含むチームで生み出されたものか、閲覧者に一目でわかる仕組みになっている。下に掲げる表は、朔学長の業績リストに基づき、かれが何本の単著/共著書・論文を上梓したか、年ごとに整理したものである。
このように、朔学長の「著書」「論文」の大半は「単著」ではなく「共著」である。高額の機器や試薬を必要とし、企業や業界団体からの資金的援助も受けながらチームで研究することも多い理系にはよくあることで、数ベージほどの論文でも10名以上の「共著者」名がずらり並ぶことも少なくない。ここで重要なのはむしろ、「共著者」のうちの何番目に名前が上がっているかという点なのだが、朔学長の場合はどうか。
「朔 啓二郎」(英語表記の場合は「Saku K.」 )の名はこのように、「共著者」リストの末尾の方に記されていることが非常に多い。とくに英語論文については、そのほとんどでかれの名は末尾にある。各業績において主導的役割をはたした研究者は当然、共著者リストの上位に名を連ねるので、かれの場合は “部分的に参加した“ものが大半ということだ。“部分的“どころか、研究にも執筆にも事実上まったく関与していないものすら含まれている可能性が高い。
というのも、業績の「数」そのものが所属機関や学界での地位、さらには交付される研究費の額を左右する理系にあって、研究者たちが仲間内で名前を貸し合い、業績数を荒稼ぎするということが横行してきたからである。とくに学部長や主任教授といった直属の上司の名を(研究や執筆には事実上関与していないにもかかわらず)共著者リストの末尾に加え、“そこで研究させてもらっている感謝の念“を示す、当該研究の箔づけとするといった非科学的な 慣習――「ギフトオーサーシップ」と呼ばれる――があることは、ご存じの読者も多かろう。上司からすれば、弟子たちの研究がそのまま自分の業績となり自分の“威光“をますます高めてくれるのであるから、弟子とはまことに便利な“自動業績製造機“というわけだ。朔学長が自分の業績として掲げる「共著」書・論文にも、そうした「ギフトオーサーシップ」によるものがかなりの割合で含まれていると疑われるのである。
朔学長が各々の「業績」にどの程度貢献したか、外部の人間にはたしかめるすべもないが、再び上の表を見ていただきたい。リストを信じるなら、2017年は約5日に1本、2016年と2015年は約3日に1本、2014年は2.7日に1本、等々と、驚異的なペースで研究業績を生み出したことになる。臨床データの集積とそれらの分析、先行研究との照合等々、膨大な時間と労力を要する医学研究に、かくなるペースで従事することがはたして可能だろうか。できたとしても、大した役割ははたしていないであろうとは素人でも想像がつく。
端的な例が、「私の症例シリーズ」と題された大量の業績群である。下に掲げる画像をご覧いただきたい。「論文」カテゴリーにリストアップされている28本で、出版年月はいずれも「2018年4月」(16〜18番は「2018年」のみ)とある。各々のタイトルにも記されている通り、また、各項目をクリックすると別ウィンドが開いて現れる詳細情報にも論文区分として「症例報告」とある通り、共著者リストの上位に名の挙がる医師が、担当した患者の臨床所見と治療について、各々紹介する記事と思われる。
<中略>
そして、これらには共通して「医学生のための循環器内科学テキスト 第5版」とある。また、48番論文として挙がっている「感染性大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行した一例」には、これが収録されている刊行物中のページ数を示す「/、 101-110」の記述もみえる。つまり、これらの「論文」群は、当時医学部長だった朔氏が部下の医師たちとともに講座の学生向けにつくった、1個の教科書(1冊にまとまっているか分冊かは不明)の構成項目であると察せられるのである。
「察せられる」というのは、出版社については一切言及がなく、福大蔵書検索をはじめその他の学術書検索エンジンにもヒットしないために現物確認もできないからだが、少なくとも次の40番「論文」の記述――タイトルや書誌情報からして同『テキスト』の序文と思われる――からは、朔学長が「三浦伸一郎」氏とともにこの『テキスト』の監修者の立場であったことが推測できる。
そして、ここに掲げられた「シリーズ」28本のすべてで、朔学長の名は一律に共著者リストの末尾に添えられたかたちになっている。各々で報告される症例はかれが主任教授を務める循環器内科の患者たちの場合も多いだろうから、部下の症例報告はわが業績に等しいというような理屈が働いているのかもしれないが、要は典型的な「ギフトオーサーシップ」の様相を示しているわけだ。もしそうなら、それはたとえば辞典の監修者が、執筆者たちが執筆した何十、何百もの項目をバラして各々自分の「共著書」として掲げるような、そんな「品位に欠ける」(福大医学部関係者)ことをしていることになる。
「ギフトオーサーシップ」は、「盗作」に類する不正行為として、近年では厳しく禁じられるようになった。大量の捏造・改ざんおよび共著者らの「ギフトオーサーシップ」が明らかになった昭和大学医学部の上嶋浩順講師の研究業績問題では、主犯の上嶋講師が解雇処分となったに加え、「ギフトオーサーシップ」による名前貸しが判明した上司の大嶽浩司教授らも降格などの厳しい処分を受けた。福大でも現在、全教員はオンライン受講を求められている「コンプライアンス・研究倫理教育講習」を通じ、そのような行為は厳に慎むよう戒められている。
朔学長は福大トップとして全教員・学生に範を垂れるためにも、ご自身のかくも膨大な「共著書・論文」の各々にどのような実質的役割をはたしたかを明らかにし、不名誉な疑惑を一刻も早く払拭していただきたいものだ。ところが、朔氏の業績リストの問題は「ギフトオーサーシップ」にどまらないのである。
(つづく)
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