2024年11月23日( 土 )

「アベノミクス」のメリットばかり強調の安倍元首相

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 奈良市内で街頭演説をしていた安倍晋三元首相が8日午前、銃撃され心肺停止状態に陥っている。NetIB-Newsでは、安倍元首相が5日に仙台で応援演説を行った際のレポート記事を掲載する。

 宮城選挙区最大の票田・仙台市で5日、物価高に苦しむ国民の怒りに火をつけそうな問題発言が安倍元首相から飛び出した。自民現職の桜井充参院議員(公明推薦)への応援演説で安倍元首相は、「岸田インフレ」の元凶であるアベノミクスのメリットを次のように強調したのだ。

 「(アベノミクスによる円安誘導で)海外からの観光客は3倍、4倍に増えました。仙台もそうです。いま円安になっている。たしかにいろいろなデメリットもあるが、経済においてメリットに変えていくチャンスでもある」「何と言っても観光。これ必ず再び海外からの観光客が戻ってくる。円安はチャンスなのです。100円が135円になっていれば、(外国人観光客が)日本に35%引きで行けるようになる。日本に行けば今までよりも35%引きになるわけです。(仙台市の場外市場の)『杜の市場』にも世界中から観光客が来ることになっていくわけです。ピンチをチャンスに変えていく」

    アベノミクスの弊害を軽視する自己陶酔型演説だ。外国人観光客が35%引きなら日本国民は35%の輸入物価高になる。円安誘導は観光関連業者にはチャンス到来でも、一般庶民にはピンチ襲来でしかない。不都合な真実からは目を背け、自分に都合が良い部分に注目を集めようとする巧みで姑息な世論誘導術は、首相辞任後も健在であったのだ。

 そこで、物価高で苦しむ国民生活を直視していないような安倍元首相を直撃、「行き過ぎた円安ではないか。(外国人観光客は35%引きでも)日本人は35%物価高ですよ」と声掛け質問をした。「杜の市場」内を回った後、次の街宣場所に向かう車に乗ろうとしたときのことだが、安倍元首相は無言のまま。納得がいなかったので、福島県田村市の街宣場所にまで追いかけることにした。

 福島選挙区で支持を呼びかけたのは、自民公認の星北斗候補(公明推薦)。ここでも街宣後、聴衆との記念撮影をほぼ終えた安倍元首相に向かって大声で再質問をした。

 ──安倍さん、行き過ぎた円安ではないか。日本人は35%物価高ですよ。外国人観光客は35%安くても、日本人は35%物価高。庶民の物価高、無視していいのか。アベノミクス(の円安誘導)で35%物価高になるということでしょう。

 安倍元首相 (無言のまま聴衆とグータッチを続ける。)

 ──アベノミクスの弊害、言わないのか。アベノミクスを見直さないのか。庶民は物価高で苦しんでいる。日本の通貨を安くして自慢しているのは安倍さんくらいではないか。恥ずかしくないのか。世界の笑い者ではないか。日本人は(輸入物価が)35%アップしますよ。

 安倍元首相 (一言も反論しないまま聴衆とグータッチを続ける。)

 ここでも安倍元首相は無回答状態。そこで、この日最後の街宣場所である郡山駅前にも向かって、三度目の直撃(声掛け質問)をした。

 ──安倍さん、行き過ぎた円安ではないのか。物価高を招いているのではないか。アベノミクスを見直さないのか。庶民の物価高の苦しみ、目に入らないのか。アベノミクスの弊害、説明しないのか。メリットばかり強調してどうするのか。

 安倍元首相 (無言のまま改札へ。)

 最高権力者の座を退いても、アベノミクスの弊害(円安誘導による物価高)には目を向けない自己陶酔型の安倍元首相の姿勢にまったく変わりはなかった。党内最大派閥の代表として岸田首相に大きな影響力を有してもいることから、アベノミクスは現政権にも継承されて「岸田インフレ」を招いているのだ。6月24日のNetIB-Newsの記事、「アベノミクス見直し否定の黒田日銀総裁と岸田首相」で指摘した通りだ。

 「アベノミクスを止めよう」と各地で訴えている立民の安住淳・元財務大臣は、日米比較をしつつ“安倍忖度岸田政権”の実態をこう批判した。

 「『金利を上げてまで、じゃぶじゃぶだった資金を回収しないとインフレは収まらない』という危機感が米国からはにじみ出ています。しかし日本はそのままです。つまり『物価は上がってもいいから金融をじゃぶじゃぶにしていい』ということです。でも岸田さん、本音はもしかしたら私と同じように、そろそろアベノミクスを止めないと思っているかもしれない。でもできない。今の自民党の力関係だとできない。ちょっとでも、それを臭わせたら安倍さんが潰しにかかってくるでしょう。でも黒田さんと安倍さんは、国民生活よりも物価高ではないか」(6月25日の仙台駅前街宣より)。

 物価高が参院選最大の争点となり、「安倍忖度の岸田インフレ」を有権者がどう判断するのか。7月10日の投開票結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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