【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(中間まとめ)】専横をどこまで許すのか(中)
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リーダーシップと独裁は違う
福岡大学だけでなく、近年、大学の学長人事や学長の姿勢が俎上にのぼるようになった。多くの大学ではこれまで「意向調査」という教員の投票結果を、学長選考会議が追認するのを慣例としていたが、投票結果と異なる学長を選ぶ事例が相次いでいる。東京大学では、学長候補を3人に絞り込む際、最多得票の候補が外された。筑波大学、大阪大では「得票数がトップでない現職」の再任を決めている。
学長人事がこれほど注目を集める背景には、学長がリーダーシッ プを発揮し、教授会の意向に左右されずに、戦略的に運営するように国が求めているためだ。学長の選考の際も、選考会議が主体的に選ぶように求めている。「社員の投票で社長を選ぶ企業はないだろう。トップが迅速で的確な意思決定ができる経営体に脱皮すべき」と強調する文科省関係者もいるほどだ。
こうした動きを反映、学校教育法および国立大学法人法の一部も改正されている。「重要な事項を審議する」と規定されてきた教授会について、教育研究に関する事項について審議する機関と位置づけ、決定権者である学長らに対し、求めに応じて「意見を述べることができる」という限定した関係にあることを明確化した。
文科省のホームページをみると、「QアンドA」のコーナーで、「学長に決定権があるということは、教授会を最高意思決定機関と位置付けるような内部規則は、「無効」ということになるのか」という質問に対し、「教授会を<最高意思決定機関>として位置付け、学長が教授会における決定と異なる判断を行うことが認められないような内部規則は、学長の決定権を定めている法律の趣旨に反するものであると考えられる」と回答している。さらに、「裁判で直ちに無効とされないとしても、違法な内部規則について、大学自体が早急に改正しなければならないものであることは当然です」と付記しているが、何も専横を推奨しているわけではないだろう。リーダーシップと独裁が異なるのはいうまでもない。
外部の人材は登用しない?
改めて、福岡大の学長選考の過程を確認してみる。ちなみに、選任規程に「高潔な人格」を求めるくだりはない。
選任規程によると、学長の候補者になれるのは、「本学の学長、副学長、専任教授、本学での教授の経歴のある者」とされている。つまり、ほかの大学で研究や運営に卓越した能力を発揮していても、学長候補にもなれない。学長候補者は5人。現職の学長、副学長らで構成する「候補者推薦委員会」が絞り込み作業を行う。
5人の所信表明や経歴は大学学報で公示され、各学部で選ばれた選挙人が投票する。約4,000人を超える教職員がいるが、選挙人になれるのは9学部、病院、事務局の代表15人、附属高校長ら168人。福岡大学の元幹部は「教授のなかには一家言ある先生も多い。学部出身者が候補になっていても、学部全体が一致団結して推すことは難しい。結局、一枚岩になれる事務局(職員)の15票がキャスティングボートを握ってしまう」と話す。
最多得票の「学長最終候補者」は、一定の勤続年数や資格をもつ「信任投票有資格者」が信任投票を行うが、不信任票が過半数に達しない限り、信任されたものとみなされる。つまり、棄権しても「信任した」ことになるのだ。信任された「学長最終候補者」は、理事会で承認を受け、晴れて学長に就任する。
教員の意向投票を廃止した国立大学もあるが、多くの国立大学では専任教員、一定の資格を持つ職員らが投票権をもっており、福岡大学のように教員数に関係なく、各学部が同数の票をもつのは珍しい。このため、歴代の学長の多くは、学部のバランスを重視してきた。各学部長の意見に耳を傾けたのは良いが、意見の集約ができずに、目立った実績もないまま、任期を終えた学長もいた。
多様性が叫ばれ、外部の有為な人材の登用が当たり前になった現在、福岡大学の選考規程は、福岡大学に固執しているように見える。朔学長も「福岡大出身者」優遇の姿勢を続けている。福岡大学は「閉ざされた大学」を目指しているのだろうか。
(つづく)
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