九州ラグビー復権への道 サニックスの撤退と今後(4)
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うきは市の新設チーム「ルリーロ福岡」への期待は?
今年4月、うきは市をホームタウンとするラグビーチーム「ルリーロ福岡」が発足し、始動した。チーム名は、うきは市のシンボルになっているカワセミの羽の瑠璃色と、フランス語で笑いを意味する「Le Rire」などを由来とする造語で、「LeRIRO=ルリーロ」と命名された。
現在、福岡県立浮羽究真館高等学校グラウンドなどでトレーニングを重ね、戦いの準備をしている。選手には、宗像サニックスブルースやコカ・コーラに所属していたトップリーグおよびリーグワンで戦ったメンバーが名を連ねる。
うきは市は福岡県南部に位置し、面積117.46km2、人口2万8,356人、1万1,337世帯(今年6月末現在)。同市の最新データによると産業総生産は824億円、就業者1人あたりの換算で580万円。
産業別に見ると農業は、同市平野部に水田地帯が広がり、米・麦のほか、トマト、カーネーションやバラなどの花の生産地として著名である。山麓部は果樹園が拓かれ、ブドウ・桃・梨・柿・イチゴなどが年間を通して栽培される。山間部では稲作や果樹、茶の栽培が盛んに行われる。
製造業については、製材所などの木材関連産業や、江戸時代の用水路開削により麺・酒・しょうゆの製造が伝統的な地場産業として発展してきた。とくに麺は九州三大麺として名高い。棕櫚箒(しゅろほうき)は県の伝統工芸品。このほか、工業団地に工作機械や自動車部品などの工場が進出し、同市の製造業は活発だ。
そして、同市の目玉は温泉と観光部門である。九州北部の観光地として、2019年の年間観光客数は154万人に上った。 旅行情報誌の九州・山口の道の駅人気ランキングで6年連続総合1位となった「道の駅うきは」は、豊富なフルーツや眺望が人気を博している。
環境省の国民保養温泉地の筑後川温泉と吉井温泉は、9つの入浴施設を構える。白壁土蔵の町並みや浮羽稲荷神社、調音の滝などは人気スポットとして知られる。文化財として、国の重要伝統的建造物群保存地区の「吉井の白壁土蔵」の町並み、新川田篭地区の山村集落もある。このほか、全国の国指定の装飾古墳73基の10%にあたる7基がうきは市にあるように、自然と伝統に囲まれた風光明媚な街である。
現在選手は、地元企業に勤めながら「ルリーロ福岡」の活動に挑んでいる。同市は6月23日、「ルリーロ福岡」、うきは市商工会、福岡県立浮羽究真館高等学校の4者間で連携協定を締結した。以下の5つを柱に据え、「うきはラグビータウンプロジェクト」として取り組んでいく。
(1)地域密着型ラグビーチーム「ルリーロ福岡」の創設とリーグワン参入を目指した活動を通した社会貢献事業の推進に関すること。
(2)浮羽究真館高等学校と地域の連携によるラグビーを通した青少年育成および人材育成の推進に関すること。
(3)「ルリーロ福岡」の活動を核とするシビックプライドの醸成に関すること。
(4)ラグビーを通した「感動」「笑」「夢」溢れるまちづくりへの取り組みに関すること。
(5)地域の企業・事業者との連携による地域経済活性化に向けた取り組みに関すること。▼おすすめ記事
福岡市東区にラグビー日本代表の強化拠点~県ラグビー界の活性化にもJ2・ザスパクサツ群馬では、過去に選手が草津温泉の旅館で働きながらプレーし、Jリーグ昇格を実現させたことがある(現在はトップチームの下部組織・ザスパ草津チャレンジャーズとして群馬1部リーグに参戦中。選手は草津温泉旅館および関係・周辺企業や施設で働きながらプレー)。
「ルリーロ福岡」もリーグワン参戦を目標に掲げている。スタジアムの新設や収益の安定化など、今後挑戦していく重要事項が山積している。そして、活動可能なことから積極的に実行しているのもたしかだ。
事業としては未知数であるが、前述したザスパではサッカーという異なる競技ながら、Jリーグに昇格し、現在も参戦中である。福岡の一地方都市から、ラグビーの事業モデルが創出されるという取り組みに期待が高まっている。
(つづく)
【難波 二郎】
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