繫栄を極める建設業界、水面下の激変裏話(1)過去の情報への関心がなく、断絶
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情報が売れない、世代断絶
2世代ほど前に、建設業界に君臨していた大物経営者2名が相次いで亡くなった。弔辞をまとめる際に感じたことをメモしてみる。建設業界も完全に世代交替が進んでいるが、誰もが過去の情報にはあまりにも関心を持たず、断絶が甚だしいことを知った。10年も経てば、同じ業界のなかでも忘却の彼方に消え去っていくのである。
東正信氏(東建設元代表)、辻長英氏(九州建設元社長)という、業界において大物であった2人が、88歳、90歳で相次いで天に召された。コロナ禍のため、家族葬として親族だけの葬儀だったため、話題にもならなかった。また、関係者に連絡をしてみても「ご存命だったのか」というそっけない返事が返ってくることもあった。こちらは重要な情報と思って連絡するのだが、相手にとってはまったく価値がないのだと知り、愕然となった。
30歳で建設会社社長の座に就き、50歳を越えた今日まで業界貢献に尽くしてきたある社長は、「先輩たちはほぼ15歳以上年上にあたるが、この2年間で世代交代(=社長交替)が加速化するとみている。私が社長になった時はまだ若造だったから、業界の流れを必死で学んだ。しかしこれから跡継ぎになる予定の、40代の経営者予備軍たちは業界の歴史には無関心だ。東建設がどういう歩みを経て、どう倒産したのかも無知。もちろん、20年前のことだからしかたないのかも知れないが」と証言する。
平和ボケに陥る若手経営者たち
35年間、営業の最前線を走ってきたあるベテランは、業界の顔役である。「最近事業継承する若手経営者たちは、過去を顧みずに自分の方針で経営をしたがる」と発言する。筆者は彼に対して「若手経営者たちは一見積極的だが、自分に力があるかどうかという単純な評価を下すことができない。要は、当分受け手側優位の市場状況が続くと思い込んでいるから、積極果敢に行けるのだろう。先行きに不安を感じ取ったら、すぐに閉塞感を抱くのではないか」と皮肉を浴びせた。
このベテランも同調する。「私は、受注するにあたって完全回収できる相手先かどうかを徹底的に調べてきた。優良な相手先は受注を画策するライバルが多いから、相手先の懐に入るために必死に努力した。受注単価も厳しく切り詰め、赤字を防ぐために経験と英知を駆使してきたものだ。ここ最近、平和ボケしていても仕事がとれる、受け手側優位の時代が続いてきた。この状況が永続すると思ったら大間違い。そんな若手経営者たちが、危機に遭遇した際に本当に踏ん張れるかどうか怪しい」との発言。
かつて負債1,000億円で会社を倒産させた超大物に対して、「貴方の存在を知っている人が、業界のなかでも皆無となった」と挑発してみた。大物は、「月日の経つのは早い。とくに最近は加速化しているので、俺のことが記憶に残っていないのは当然である。敗者が兵を語るはいかがなものかと思うが、あまりにも平和ボケが深く根ざしているように見える。その結果、経営者の知恵巡りが悪くなり、劣化しているのではないかと懸念している。英知を駆使できる知恵者がいない。だが、これも仕方がないかとあきらめている。受け手側優位の平和な環境が永遠ではないのに!」と、将来を見通した。
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