繫栄を極める建設業界、水面下の激変裏話(2)淘汰に明け暮れた時代
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よき時代は昭和末期まで
若い建設業界の経営者はかつて業界を仕切っていた善工務店(今年3月廃業)をご存知なかろう。公共事業の仕切り屋であり、仕切り屋としての鉄則は「バランス良く、誰にも不平をもたせずに仕事を分配すること」であった。「我が社は目立たずに15億円前後の仕事を引き受けており、完工高15億円でも経常利益1億円は確保していた」という。官公庁受注によって業界には平和な共存共栄が続いていた時代であった。ただ、後発企業の参入により、その秩序は実際には崩れることになる。
同社オーナーは、平成に入ってから「官需の仕事は将来減っていく傾向にあり、官公庁受注が主体では会社存続は難しくなる。民間受注を開拓しなければならない」と方向転換を図った。この見立ては正しかったが、役所工事と民間工事では施工自体が大きく異なり、余念なく準備するには時間がかかる。安易に受注できる民間工事はマンション工事しかない。3級デベロッパー業者の受注には高いリスクがともなう。民間受注を選択したことにより、会社の命運は定まったといえる。それ以降、同社に企業としての運の光が再び輝くことはなかった。
九州建設も然り。辻氏は業界における仕切り役として、善工務店オーナーとはケタ違いの役割をはたしてきた。九州建設の前身の辻組時代には、長崎県の工業高校建築科の高校生にとって、松尾建設と並び羨望の的となる就職先であったという。その辻氏もまた、昭和末期には民間受注主体へと舵を取った。結果、リーマン・ショックの影響で致命的な打撃を浴び、会社転売に追い込まれた。官需に頼るよき時代は昭和の終わりころに過ぎ去ったのである。
税金泥棒集団とレッテルを張られる
後発集団は官需に頼ることができないため民間市場を開拓していく。その大成功の例が照栄建設と大高建設である。照栄建設は農協をターゲットにし、福岡の都市化にともなって農業従事者が建設発注者(家主)に変貌していくなかで生まれた需要をつかんだ。大高建設は物流倉庫、工場建設に注力し、福岡の都市化が加速的に進むにつれ、その市場は大きくなっていった。激変をどう読むかで決定的な差がついた。
建設業界の若手経営者には、「自分たちの業界が税金泥棒」とレッテルを貼られた記憶はあっても、その意味を理解できている人は少ないのではないか。マスコミは、官需が減っていくなかで従来の受注方式をめぐって談合をする批判キャンペーンを始めた。マスコミにより「官公庁発注の工事の資金の出所は税金であり、できるだけ請負単価を下げる入札制度を導入すべき。談合方式は税金を食い物にする反社会的行為」と烙印を押されたのが2000年に入る直前のこと。当時、官公庁工事の入札に際し業者は赤字を覚悟しなければならず、コスト削減の対象は当然ながら人件費で、職人の給与カットには悲惨なものがあった。業界から数多くの職人が逃散した所以である。
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