繫栄を極める建設業界、水面下の激変裏話(3)黄金の時代がやってくる
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リーマン・ショックのどん底から光明が差す
2008年、リーマン・ショックが発生、日本においても相当な被害が出て、福岡ではユニカ、丸美、ディックスクロキなどのデベロッパーが行き詰まった。その影響により打撃を受けた建設業界の代表例が九州建設と高松組である。九州建設はM&Aの対象となり、事業承継により歴史の辻褄を合わせることはできた。
だが、冬が去れば春がやってくるのは、自然界だけではなくビジネス社会でも同様の摂理だ。09年以降、マンション業界では新たな企業群が大きく羽ばたいた。建設業界も20年続いた冬の陣から、一転して黄金の時代を迎えることになった。地場中堅建設企業の吉川工務店は西部ガスグループに吸収された。同社と親しい関係にあった内藤工務店の内藤建三社長は20年に亡くなったが、事業基盤が揺らぐことはまったく無かった。08年までの時代であれば、この2社に我が世の春が訪れることはなかったであろう。
粗利の好転がすべて
建設業の春の訪れの要因は、(1)建設投資が増大したこと。(2)福岡における公共事業の立替え・やり替え時期に遭遇し、再開発が集中したこと。(3)人口増で住宅投資市場が拡大されたこと。(4)単価の破格の安さに職人たちが見切りをつけたこと。(5)業界全体の施工力が3分の1に減ったことだ。そうなると、発注側だけでなく請ける側も強くなる。単価が大幅に上がり、請ける側が値上げ交渉を行えるようになり、力関係が逆転した。
内藤工務店20期の業績推移から学んでみよう。01年4月期から10年4月期の粗利の推移をチェックしていくと、8%~10%で推移したのがこの時代の現実だ(04年4月期期の13.15%はでき過ぎであろう)。他のゼネコンの粗利益は8%で低迷していた。粗利が2桁になったら「すばらしい貢献だ、お祝いをしよう」と宴会になっていたものである。
粗利の局面は11年から一気に様変わりしていく。11年3月期(11年に決算月を3月に変更)の29.44%はでき過ぎであるが、それ以降でも15%超が当たり前になっていった。加えて、10年4月期から20年3月期の間に完工高は倍増、粗利額は2.7倍、純利益額は7,360万7,000円から2億7万7,854円と3.5倍以上になった。純資産ベースは7億360万7,000円から28億8,851万2,000円と約4倍に増え、内部留保の充実ぶりは歴然だ。神風が10年も吹き続けてくれれば、まさしく別次元の企業に変貌してしまうのである。
このように黄金の時期が10年続いたのは、福岡の建設業界において初めてだっただろう。今後さらに10年続けば、内藤工務店なら内部留保が優に50億円を突破することは間違いない。だがそうは問屋が卸さない。若手経営者たちが、先行きについて「過去10年の黄金の時代が持続する」と過信しているならば、大きな過ちを起こすことになる。
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