円安で激化する賃上げ圧力
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「円安誘導政策は誤りであり、日銀総裁の更迭と路線転換が必要」と訴えた9月5日付の記事を紹介する。
円安が止まらない。
理由は明白。
米国が金融引締め政策を実施しているのに、日本銀行が超金融緩和政策を維持しているから。為替変動を決定する3つの主要な要因がある。
内外金利差
経常収支の変化
政策スタンス日本の経常収支黒字基調は続いているが、円安と原油等の輸入品価格高騰により黒字は急縮小している。
円安=ドル高をもたらしている最大の要因は内外金利差と政策スタンス。
米国のFRBは米国でのインフレ率上昇を背景に強力な金融引締め政策を実施している。
8月26日のジャクソンホールでの講演でパウエル議長はインフレ抑制のための利上げ政策を継続する方針を明確に表明した。
他方、日本銀行は2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来の超金融緩和政策を維持する方針を示し続けている。何とかの1つ覚えだ。
内外金利差と政策スタンスの相違によって円安・ドル高に歯止めがかからぬ状況が持続している。
黒田日銀の金融政策運営は「円安誘導政策」である。
黒田日銀を擁護する人々は金融政策の変更は景気にダメージを与えるとしている。しかし、財政政策を適切に活用すれば景気へのダメージは回避できる。
日銀の最重要の役割は通貨価値の維持。
諸物価が値上がりする=インフレは通貨価値の下落。
従って、中央銀行=日銀はインフレを回避して通貨価値の下落を防がねばならない。黒田日銀は2013年に超金融緩和政策を始動させるに際して、2年以内に消費者物価上昇率を前年比2%以上に引き上げると公約した。
しかし、実現しなかった。私は2013年6月に上梓した
『アベノリスク』(講談社)(https://amzn.to/3q9hEUr)
でインフレ誘導が失敗する可能性が高いことを予測した。短期金融市場に大量の資金を供給しても、金融機関の与信行動が活発化しなければマネーストックは増大せず、その結果、物価上昇率も上昇しない可能性が高いことを指摘した。
現実にその通りになった。黒田日銀のインフレ誘導政策は失敗に終わった。
そのインフレ率がようやく2%を超えた。
理由は円安の放置とウクライナ戦乱にともなう資源価格上昇などだ。
インフレの進行は庶民の暮らしを直撃する。
そもそもインフレを喜ぶのは企業で、消費者=労働者=生活者にとってインフレは百害あって一利のないもの。
企業がインフレを渇望するのはインフレになれば、賃下げを行うことなく、実質賃金を引き下げることができるから。ゼロ金利政策は債務者である企業に有利に働き、債権者である預金者に不利に働く。
ゼロ金利政策=インフレ誘導政策は資本の利益になる政策であり、消費者=労働者に不利益になる政策なのだ。その日銀がインフレ進行と円安進行を放置している。
日銀の役割放棄である。日本円の適正レートは1ドル=67円程度。
円は半値に過小評価を受けている。何が問題か。
2つの重大問題を提示しておこう。
第1は日本の優良資産が外国資本に買い占められること。
現に日本の不動産資産の所有権が激しい勢いで海外流出している。第2は外国人の労働力単価が暴騰すること。
円暴落下では日本で働こうとする外国人は激減する。
これまで日本政府は国民が敬遠する嫌な仕事を外国人労働者に押し付けてきた。これが機能しなくなりつつある。
こうした分野の労働単価が急激に上昇し始めている。
これに日本の零細企業は対応できなくなる。
優秀な人材は海外に流出する。円安誘導政策=円安放置政策は完全なる誤り。
日銀総裁の更迭と路線転換が必要不可欠だ。
※続きは9月5日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「円安で激化する賃上げ圧力」で。
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