2024年12月23日( 月 )

人口で中国を抜き、経済でも日本を抜く勢いのインド!

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、9月9日付の記事を紹介する。

インド イメージ    早ければ来年にも中国を抜き、世界最大の人口を有することになるインドは存在感を増しています。

 すでに経済力では英国を追い抜き、世界第5位の地位を獲得しました。

 インド国立銀行の予測では、2027年にはドイツを抜き、2029年までには日本をも抜き去る勢いです。

 何しろ、日本を含め、世界が新型コロナやウクライナ戦争などの影響で、経済が停滞気味になっているにもかかわらず、インドは本年第1四半期のGDPの成長率は13.5%を記録しました。

 世界全体のGDPに占めるインドの比率も年々増大しており、2027年には4%を超え、ドイツを凌駕することが確実視されています。

 日本ではインドに対する認識は「人口は多いが、経済はまだまだ発展途上だろう」といった感じです。

 ところが、このままいけば将来、中国を追い抜く可能性もでてきています。

 その非同盟外交や経済成長戦略は注目に値するものです。

 本年、東京で開催されたQUADサミットでも、岸田総理がアメリカとともに「ロシア批判」を繰り返しましたが、インドのモディ首相は「独自路線」に固執し、ロシアを敵視する姿勢は見せませんでした。

 巷間、「インドはロシア製の武器に依存しているため、隣国のパキスタンや中国と軍事的衝突を想定すれば、ロシアとの関係が欠かせないからだろう」との見方が一般的です。

 しかし、それだけではありません。

 巨大な人口を抱えるインドにとって、食糧の自給自足は難題です。

 しかも、小麦に関しては世界第2の生産大国だったインドですが、このところの異常な熱波の影響で生産が思うに任せず、外貨獲得の柱であった小麦の輸出を全面的にストップせざるを得なくなっています。

 自国民の胃袋を優先し、輸出は後回しというわけです。

 苦境に陥るモディ首相に救いの手を差し伸べたのがプーチン大統領に他なりません。

 ロシアからは小麦のみならず、食糧生産に不可欠の化学肥料も大量に届けられました。

 これではインドはロシアに頭が上がるはずもありません。

 実は、国際的な決済システムのSWIFTから外されたロシアですが、インドをはじめ中国、フィリピン、イラン、そしてサウジラビアなどとも、ドルやユーロではなくルーブルや各国通貨での貿易決済システムの構築に動いているのです。

 欧米諸国は「食糧危機もインフレも、その元凶はロシアだ」と非難を続けています。

 とはいえ、そうした批判の声には耳を貸さず、ロシアとの経済的関係を深める国は後を絶ちません。

 ヨーロッパではロシアからの原油や天然ガスがなくては困る国が多く、表向きはロシアへの経済制裁に同意するポーズを見せているものの、裏ではロシアとの取引を続けている国もあります。ハンガリー、チェコ、ブルガリア、スロバキアなどが、その典型的な例です。

 一時が万事。

 アメリカ発の報道では、ロシアは経済制裁を受け、苦しい状況に陥っているように見られますが、ロシアからの食糧や資源の供給がストップして苦境に直面している西側諸国も多いのが現実です。

 我慢比べとなれば、厳しい自然環境に慣れているロシア人の方が贅沢三昧のアメリカ人より強いかも知れません。

 インド人はそのことをよく分かっているフシがあります。

 ロシア発のEU向けの天然ガスの輸出は経済制裁の結果、2021年から2025年にかけて55%の減少が見られますが、最終的には75%以上の削減になりそうです。

 その分、インドや中国はロシア産の天然ガスを安値で輸入できるため、漁夫の利を得ています。

 ロシア国営のガスプロムによれば、「ロシアは少なくとも2120年まで天然ガスを安定供給できる」とのこと。

 「100年保証」というわけです。

 シベリア北西部のヤマル油田などは、これからが本格的な開発となります。

 世界第3位の経済大国を目指すインドにとって、ロシアのエネルギーは欠かせません。

 実際、インドはロシアとの間でトルクメニスタン経由による天然ガスのパイプラインを建設する計画にも着手したようです。

 インド人はゼロを発見したことでも知られ、数字や商売、最近ではITに長けた国民として世界で活躍しています。

 モディ首相は「2030年までに国内エネルギー需要の半分以上を自然再生エネルギーで賄う」とも宣言。

 日本はインドの未来ビジネス戦略と、それを実現するうえで欠かせない巧みな外交力を理解し、協力関係を深める必要があるでしょう。

 「自由で開かれたインド太平洋構想」という掛け声だけでは、インド人の心は掴めません。

 次号「第311回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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