2024年07月17日( 水 )

弔意示さない思想及び良心の自由

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「岸田首相は自説を曲げず、間違った施策を押し通そうとしている」と訴えた9月11日付の記事を紹介する。

本日は沖縄県知事選の投票日。

岸田内閣にとって最重要の地方選挙になる。

沖縄県知事選は1つの都道府県知事選を超える意味をもつ。

1996年4月に成立した普天間基地返還の合意。

26年の時間が経過したがいまだに普天間基地の返還は実現していない。

世界で最も危険な軍用基地と呼ばれる。

その危険が放置されたままなのだ。

沖縄県の陸地面積は日本全体の0.6%に過ぎない。

この沖縄に日本に存在する米軍専用施設の70.4%が集中する。

第2次大戦で沖縄は日本本土の捨て石にされた。

沖縄県の多数の一般市民がこの戦争で命を奪われた。

1952年4月28日に日本が独立を回復したその日、これと引き換えに沖縄を含む南西諸島は日本から切り棄てられた。

日本から切り棄てられた沖縄は、その後、米軍による朝鮮戦争推進下で「銃剣とブルドーザー」によって蹂躙された。

1972年に沖縄県が日本に復帰して以降も、沖縄の過重な基地負担は続き現在に至っている。

この沖縄に新しい米軍基地を建設して沖縄県民に新たな基地負担を押し付けることが正当化されるわけがない。

2009年に樹立された鳩山由紀夫内閣は普天間基地機能の県外・国外移設方針を示した。

これに猛反発したのが米国である。

米国は鳩山政権内に潜む対米隷属勢力と日本の官僚機構に指令して普天間の県外・国外移設方針を破壊した。

この問題を主因に鳩山内閣そのものが米国の意向によって破壊された。

正真正銘の米国による内政干渉である。

破壊された鳩山由紀夫内閣の後継内閣になったのが菅直人内閣。

菅直人氏は米国に対する忠誠・服従を宣誓することで日本の首相に起用された。

菅直人首相が普天間の辺野古移設を容認・推進したことはいうまでもない。

対米隷属政権の系譜は野田佳彦内閣に引き継がれたが、野田内閣が2012年12月に自爆解散を決行。

安倍自民党に大政を奉還した。

2012年12月に総選挙実施が強行されたのは、消費税増税を封印した民主党政権の公約を堅持する民主党正統派勢力である未来の党(国民の生活が第一)に巨額の政党交付金が交付されるのを阻止するためだった。

2012年12月に発足した第2次安倍内閣は正真正銘の対米隷属政権。

1947年以降の米国対日占領政策の基本である「日本植民地化」「日本反共化」路線の方針に隷属する政権である。

岸・安倍一族はCIA主導の極東地域における「反共活動」の拠点となった「国際勝共連合」と表裏一体の活動を続けてきた自民党清和政策研究会の中核メンバー。

日本政府が沖縄米軍基地建設を推進する下でも、沖縄県民は抵抗の意思を表明し続けてきた。

2006年に沖縄県知事に選出された仲井眞弘多氏は普天間米軍基地の県外移設を公約に掲げた。

この仲井眞氏が2012年12月に第2次安倍内閣が発足したことを受けて、2013年12月に辺野古米軍基地建設を承認した。

沖縄県民を裏切る「転向」だった。

仲井眞弘多氏が2014年11月の知事選で、辺野古基地建設反対を公約に掲げた翁長雄志氏に10万票の大差で敗北したのは当然の帰結だった。

2018年夏の翁長知事死去を受けて実施された知事選で辺野古基地建設反対を公約に掲げた玉城デニー氏が自公推薦の佐喜真淳氏に大差で勝利した。

こうして沖縄県知事選では辺野古米軍基地建設反対・阻止を公約に掲げる候補者が連戦連勝を続けている。

その沖縄で自公による買収工作が展開されてきた。

政権を握る自公の与党勢力は国家予算という「カネの力」で沖縄県民をねじ伏せる工作を激化させてきた。

辺野古を擁する名護市の市長選では「カネの力」による投票誘導工作が全面的に展開され、2期連続で自公推薦候補が勝利を収めた。

この延長線上で今回の知事選が行われる。

岸田内閣にとっては絶対に負けられない選挙。

しかし、岸田内閣の政策不正が重大問題に発展し、知事選は岸田内閣に対する審判の色合いを強めている。

岸田内閣政策不正を糾弾する沖縄県民は玉城デニー氏に投票を集中させると考えられるし、またそうすべきだと考える。

岸田内閣に対する審判の性格を強く有する沖縄県知事選に対して沖縄県民が適正な判断を示すことが強く期待される。

沖縄県知事選投票日に向けて岸田内閣は必死の対応を続けた。

国葬に関する国会での閉会中審査。

自民党議員と旧統一協会とのかか割に関するアンケート結果の公表。

1世帯5万円支給を含む経済対策の概要発表。

これらを一気に提示することによって世論の潮流転換を図ったと見られる。

主要メディアは岸田内閣からの指令を受けて、世論調査自粛の行動を示したと見られる。

しかし、基本潮流は転換しない。

理由は単純明快。

岸田内閣の政策運営方針に変化が生じていないからだ。

最大の失策は国葬実施方針。

岸田内閣は内閣法制局が内閣府設置法を国葬実施の法的根拠としたことを錦の御旗に掲げるが、内閣法制局がもはや「錦の御旗」としての地位を完全に失っている。

内閣が内閣法制局見解を示しても、それはもはや、盗賊団が傘下団体の見解を示しているとしか受け取られない状況が生じている。

安倍晋三氏が憲法の解釈改憲を強行するため、内閣の言いなりになる人物に法制局長官を差し替えたところから、この悪しき現実が継続されている。

法的根拠のない国葬を国会の審議をも経ず、内閣の独断で閣議決定した。

行政府の行政権からの逸脱行為だ。

国葬実施は行政権の範囲内というのは内閣の言いなりになる法制局によるお手盛り解釈に過ぎない。

内閣府設置法は所掌事務の区分を列挙する手続法に過ぎない。

国葬実施の根拠と権限を定める法的根拠にはならない。

※続きは9月11日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「弔意示さない思想及び良心の自由」で。


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