社員・協力会社一丸となって、押し寄せる工事の波を乗りこなす(前)
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中村工業(株)
代表取締役 中村 隆元 氏今年4月、創業117周年を迎えた躯体工事業の中村工業(株)。天神ビッグバンや博多コネクティッドを始め、長崎の駅前再開発、諫早ソニーN-TEC新築工事など、九州圏内では複数の大型開発が進められている。建設業界は盛況を博しているが、一方で恒常的な人手不足の状態が続いている。とくに最大規模である熊本の半導体工場新設は9月から来年いっぱいにかけて躯体工事が佳境を迎えることで、今までにない人手が必要となる。大規模な工事や重なる工期などへの課題や今後の見通しについて、地場専門工事トップの中村工業・代表取締役・中村隆元氏に話を聞いた。
初の施工高100億円超 重なる工期に臨機応変に対応
──2022年3月期の売上高は前期比120.6%の96億1,732万円と上伸されましたね。
中村隆元氏(以下、中村) 社員一丸となり、初めて施工高100億円を超えることができました。これは総務から工事部、各地区技能者・技術者、そして協力会社の皆さんのおかげです。とくに大成建設(株)さん発注の長崎TECⅡ期工事と鹿島建設(株)さん発注の新福岡ビルは、ともに請負金額が8億円超の大型物件ですので、そちらを手がけていることも大きいですね。
──九州各地で大型物件の工事が始まっています。
中村 天神ビッグバンや博多コネクティッドなど、福岡は継続的に仕事がありますが、九州各地でも大型開発が進んでいます。長崎県では(株)大林組さんが施工する新長崎駅ビル開発や大成建設さんのソニーセミコンダクタマニュファクチャリング長崎テクノロジーセンター(長崎TEC)は3期工事に入っています。長崎県大村市では鹿島建設さんが施工するSUMCO TECHXIV(株)の工場が着工。大林組さんが施工する長崎駅前の再開発は現在、躯体工事の真っ最中です。また、(株)ジャパネットホールディングスの子会社である(株)リージョナルクリエーション長崎の「長崎スタジアムシティプロジェクト」もあり、(株)竹中工務店さんがスタジアム棟・ホテル棟・南商業棟(I工区)、戸田建設(株)さんがアリーナ・サブアリーナ棟(II工区)およびオフィス棟(III工区)、松尾建設(株)さんが駐車場棟(IV工区)をそれぞれ担当しています。
鹿児島県では、京セラ(株)の鹿児島国分工場の工事や馬毛島プロジェクトや種子島の宇宙センターの工事があります。馬毛島プロジェクトは現在、土木工事を行っているところで、これから建築工事も入ってきます。宮崎県では清水建設(株)さん、都北産業(株)さん、(株)下森建装さんJVなどが施工する国民スポーツ大会関連工事など、多くの案件が同時進行しています。それらは23年から24年にかけての竣工の案件です。ここまで工期が重なることは今までほとんどありませんでした。
──そういった状況を踏まえて、今後の見通しはいかがですか。
中村 福岡でいうと再開発の第1弾は24年までですが、天神2丁目の新天町商店街や福岡パルコ、福岡銀行本店などは、これから解体に入っていきます。天神地区と博多駅付近の建築工事は少なくとも28年ごろまでは活況でしょう。ですので、28年ごろまでのスパンで事業を考えていかなければなりません。ただ、長崎県の駅前再開発やジャパネットHDの工期も2年くらいですし、宮崎県も国民スポーツ関連が終われば旭化成(株)の工場建設は残るも、異常なほど忙しいのは福岡県と熊本県、沖縄県になります。
バブル崩壊からリーマン・ショック 中堅社員不足も
──大規模な現場が続いています。それぞれの現場での課題はありますか。
中村 コミュニケーションの問題ですね。リーマン・ショック後、当社の売上高は4割も減少しました。当時、同業の経営者たちは、景気の低迷に合わせて事業規模の縮小、人員の削減を推し進めました。しかし、当社ではそれとは反対に雇用を維持してきました。根底にあるのは、当社で培ってきた技術・技能を未来に向けて伝承していくという強い覚悟です。
毎年10人を目安に増員を続けてきたことで、需要増にも何とか応えることができています。業界では長い間、いわゆる“一人親方”問題が議論されていますが、当社の社員は全員社会保険に加入しています。今年4月には4名の新卒採用を行いました。来春も10名程度の採用を見込んでいます。
しかし、リーマン・ショック後は大手ゼネコンさんや地場ゼネコンさんは前述のように人員削減や新卒社員の雇用に消極的でした。そのため、現在35歳から45歳までの、いわゆる働き盛りの社員層が手薄になっています。とくに現場からの持ち上がりでの現場監督さんが少なくなっており、現場での機微が伝わりにくくコミュニケーションを取るのに多少なりとも苦労しています。これは非常に大きな問題だと考えています。
──大手ゼネコンと長い取引実績をもたれています。
中村 元請である大手ゼネコンさんからどう見られているかは常に考えています。そのため、請負代金をどう活用しているのかをきちんと説明ができるようにしています。元請さんと長くお付き合いをしていくため、また必要とされるためには、やはり人材が一番だと考えています。人材を生かす施設や機械、教育などにどれだけ新しくて良いものを取り込んでいるかが大事です。資金の使い方を上手にコントロールすることでより良い方向に循環させていくことが、結果的に元請への信用につながっていくのだと思います。
(つづく)
【内山 義之】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
売上高:(22/3)96億1,732万円
URL:https://nakamura-k.com/
<プロフィール>
中村 隆元(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校、福岡建設専門学校卒。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。関連記事
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