得意分野に特化した新業態開発 ドンキのスピンアウト戦略の成否は?(前)
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ドン・キホーテ((株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は安さとアミューズメント性を打ち出し総合業態として成長し続け、日本有数の小売業に上り詰めた。ここ1年あまり、コスメ、菓子、酒といったカテゴリーを特化した新たな業態を開発し、「Z世代」をターゲットにした「キラキラドンキ」も出店、次代に向けて未来の顧客となる若者の取り込みに動いている。
若い女性が創った新業態 Z世代取り込み狙う
ゴールディンウィークの東京・臨海地区の人気スポットお台場にある大型商業施設「ダイバーシティ東京」(東京都江東区)では、今年5月にオープンしたばかりの「キラキラドンキ」が、若い女性たちで賑わいを見せていた。天井や壁一面にドン・キホーテ(以下ドンキ)のキャラクターである「ドンペン」が散りばめられ、周囲の店舗とは明らかに異なるアミューズメントパークのようなワクワク感にあふれた空間。商品のPOPにはスタッフが実際に試したリアルな声が書かれ、まるでSNSのタイムラインのように常に鮮度の高いざわめきと賑やかさを感じられる。
「キラキラドンキ」は「Z世代」(1990年代半ば以降生まれ)をターゲットにした新業態。Z世代は情報に対して受け身ではなく自らSNSなどに取りに行き、ストーリー性に敏感に反応し、商品知識に詳しく、納得すれば購入するという傾向が強い。こうした点への考慮が、商品構成やPOPづくりなどに反映されている。
若い女性スタッフを集めたプロジェクトで店づくりや品ぞろえを考えた。店名は当初、「ガールズドンキ」など女性を意識したものを考えていたが、ダサいと指摘するスタッフらの意見を受け入れ、ジェンダーレスな「キラキラドンキ」に決めた。
店長は30歳の女性、スタッフも高校生、主婦などですべて女性。10代~20代のスタッフの意見を取り入れ、SNSで話題の商品や最新のトレンドアイテムを取りそろえた。コスメ、菓子などドンキの得意分野いいとこ取りで、それぞれを深掘りするとともにキャラクター食品も展開している。287m2の小型店で取り扱いSKU(最小管理単位)は5,600点、コスメは売り場を広く取り、コスパの良いプチプラ系コスメや韓国・中国系のアジアンコスメを豊富に取りそろえ、カラコン、香水なども充実させた。菓子でも、「Z世代」の支持が高い韓国・アジア系の商品や、SNS映えするグミやキャンディ、駄菓子も投入、トレンドを打ち出しアミューズメント性あるラインナップに特化した。
プロモーションコーナーではそのときどきの話題アイテムを紹介、テイクアウトのコーナーも設けた。SNS映えするワッフルは、レギュラーとハーフサイズの2種類を用意し、食べ歩きしやすいよう棒付きワッフルも提供、話題の美酢(ミチョ)を使用したオリジナルドリンク「made with 美酢」も販売している。
「Z世代」向け業態を開発した狙いは、ドンキを末永く利用してもらうために未来の顧客を今のうちに獲得し囲い込むことだ。ドンキは都心に店舗を展開し深夜営業でバラエティーに富んだ品ぞろえで若者御用達の店舗として支持を集めてきたが、2000年代に入ると日常生活に必要な食品や消耗品を拡充し、郊外に出店するなどして、ファミリーを取り込みシニアも来店するようになった。そのため、従来の主要顧客であった若い世代を取りはぐれているのではと反省し、今一度彼らにアピールする「尖った店」をつくろうと開発したのが「キラキラドンキ」といえる。
(つづく)
【西川 立一】
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