2024年07月16日( 火 )

人民元が安値の1ドル7元突破、その影響は?

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 人民元相場が2年余りぶりに1ドル=7元の大台を割り込み、2020年7月以来の最安値を更新した。9月15日午後6時30分前後には、外国為替市場でオフショア人民元のスポットの対ドルレートが7.0187元まで下がった。

元相場はなぜ下落したか?

人民元 イメージ    平安証券の鍾正生チーフエコノミストは、「最近の人民元相場の下落をめぐり、触発した2つの要因がある。1つはドル指数がこのほど20年ぶりの高値を付けたこと、もう1つは中国と米国の金融政策の分化がさらに広がり、国債の利回りの逆転現象がさらに拡大したこと」との見方を示す。

 人民元相場の下落には複数の要因の影響によるもので、最近は主にドルの利上げの政策調整と関係がある。ドルは今年に入ってから14.6%値上がりし、このドル高を背景として、特別引出権(SDR)の通貨バスケットを構成するドル以外の通貨はいずれも対ドルで大幅に値下がりした。1~8月にユーロは12%、英ポンドは14%、日本円は17%、元は8%、それぞれ値下がりした。

 中国銀行研究院の王有鑫シニア研究員は、「米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げプロセスの継続、ユーロの低迷などの影響により、外部ではドル指数が上昇を続け、人民元相場に調整の圧力をもたらした」と述べた。

 しかしドル以外の通貨と比較すると、人民元の下落幅は最も小さい。人民銀行の劉国強副総裁は5日に、「人民元の下落幅は相対的に小幅。SDRバスケットのなかで、元は対ドルで値下がりしたが、SDRのドル以外の通貨に対しては異なっていて、値上がりしている。SDRバスケットの基本的な状況はドルの値上がりであり、ドルの上昇幅は元の上昇幅よりもやや大きいというもの。人も値上がりしており、元が全面的に値下がりしたわけではない」と述べた。

人民元下落の影響は?

 一般的にいえば、人民元が値下がりすると、海外での留学や買い物などのコストが増加すると同時に、輸入が圧力を受けるが、輸出にとっては好材料になる。税関総署が9月7日に発表した統計によると、今年1~8月の中国の輸出入総額は前年同期比10.1%増の27兆3,000億元だった。そのうち輸出は同14.2%増の15兆4,800億元、輸入は同5.2%増の11兆8,200億元だった。

 商務部(経済産業省に相当)国際貿易経済協力研究院国際市場研究所の白明副所長は、「人民元の下落は企業の輸出による収入を増やし、競争力と収益性を高めるのにプラスだ。しかし元相場下落は両刃の剣でもある。企業は元相場下落により収入が増えるが、原材料や部品を大量に輸入して使用している場合は、元相場下落により支出が増加する可能性が高い」と述べた。

 中国民生銀行の温彬チーフエコノミストは、「中国の輸出入業務を手がける対外貿易企業は、人民元の上昇・下落に賭けるようなことはせず、為替リスクの管理を着実に行い、企業の正常な生産経営を確保すべきだ」と指摘した。

 中国社会科学院金融研究所の張明副所長は、「実際には22年初めから現在までの間、人民元の対ドル相場は『もみ合い―急落―もみ合い―急落』という特徴を示してきた。今年、元がドルに対して下落した最も重要な原因は、中国と米国の長期利回りの差が急速に拡大したこと」と指摘した。

 1ドル7元を突破した後、人民元はどこに向かうのだろうか。中信証券の明明チーフエコノミストは、「強いドルを背景として人民元が7元という関門を突破するかどうかは実はそれほど重要ではない。複雑で変化に富んだ国際情勢の下での相場の変動を理性的に見るべきだ。中国人民銀行(中央銀行)が相場の安定に使うことのできる政策ツールは豊富にあり、ツールには反循環的要素の発動、企業の国境を越えた資金調達のマクロプルーデンス調整パラメーターの調節などが含まれるがこれに限らない。このうち反循環的要素は元の対ドル基準値の設定モデルに直接影響をおよぼす。これまでの経験から考えると、これらのツールは持続的に下落する元相場への対応において非常に有効」と指摘した。

 粤開証券の羅志恒チーフエコノミストは、「人民元相場が1ドル7元を突破したことは、相場がバランスの取れたものに回帰するということを意味するに過ぎず、過度に懸念する必要はない。元相場の今後の動向は3つの要素によって決まる。1つ目はドル指数の強弱、2つ目は中国経済の回復状況、3つ目は相場の安定を維持するための政策的関与だ。しかし元相場の基調は長期的な下落ではない。今後、ドル指数の高騰・下落、中国経済の安定・回復、政策ツールによる適切な関与にともなって、元相場は過去に2回あった7元突破のときのように、再び1元7ドル以下に戻るだろう」と述べた。


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