中国ナンバーワン女性富豪の波乱人生
-
一介のアルバイト工員から女性富豪ナンバーワンとなった、「藍思科技」の創業者・周群飛氏。レジェンド感満点の人生を過ごしてきた。1970年に湖南省湘郷市の山あいの村に生まれ、食べることにも事欠く貧しさだった。父は事故で視力を失っており、母は彼女が生まれて5年後に病死、いよいよ生活に困った一家は、香港と接する経済特区・深圳に活路を求めた。周群飛も学校を中退せざるを得なかった。沿岸部の発展している都市に、あてもなく押し寄せる、「盲流」と呼ばれる国内経済難民の1人だった。
盲流の多くが下層社会であえぎ苦しむなかで、彼女はたくましく成長していく。ようやく見つけたアルバイトの現場は時計のガラスを生産する工場だったが、近くに深圳大学があったのが大きな意味をもつ。お金を工面しながら、大学の夜学に通いつめ、会計学を学ぶ。コンピューターや税務関連の資格も取得する。23歳となった93年、腕時計用ガラスの工場を打ち立て、家庭経営の形態で注文を受け付けるようになった。
飛躍したのは結婚がきっかけだ。94年、マカオの大手メーカー「伯恩光学」の社長と結婚。結婚するとき、夫に「私だったらきっと、あなたの会社をもっともっと大きくできる。中国を、いや世界を代表する企業になれる。だから結婚しましょう。私たちは最高のパートナーよ」と話した。
互いに協力しあい、会社を急成長させていく。周の言葉は、20年後に現実のものとなった。同業種の経営者同士が恋に落ち、冒頭のようなやりとりが交わされたのでは、と言われているが……。
「実際は女を武器にした政略的な結婚だったのではないか」。そんなウワサが絶えない。というのも、その後に周群飛は離婚し、伯恩光学が業績を伸ばす原動力だった携帯電話スクリーン生産を、大々的に始めたからだ。
「技術と顧客と奪っていった産業スパイ」。そんな汚名を着せられながらも、藍思科技は携帯電話・スマートフォンの世界的、爆発的な需要増の波に乗った。周氏は2008年、自社の運転手だった男性と再婚。これは熱愛結婚だったといわれている。そして15年、藍思科技は香港市場に上場。貧民の子はついに、世界も注目する女性大富豪となった。
称賛の一方で、会社の持ち株の99%を夫婦で(とりわけ周群飛が97%を)所有していることを、守銭奴のようだと批判する声もあった。しかし、その栄華は長くは続かない。
01年、友人がTCLの折り畳み携帯電話用パネルのオーダーを受け、加工の工程を周氏に依頼した。周氏はそこで、当時流行していた有機ガラスに代わって、自社のガラス製作工程をパネルの製造に生かそうとした。有機ガラスは傷がつきやすく熱で変形するという欠点があったが、ガラスのパネルはこの問題を解消し、かなりの人気を集めた。
周氏は03年に藍思科技を設立し、携帯電話のガラスパネルの開発や生産・販売を手がけ、モトローラなど海外メーカーからの受注を得た。そしてアップルからの受注を得たことで、会社は本格的に成長していった。藍思科技は現在、世界最大のタッチスクリーンメーカーとなり、グローバルシェアは50%を超え、社員数は8万人以上に達している。
周氏は2015年に、資産額500億元(約1兆117億円)で中国の「女性富豪ナンバーワン」になっている。
▼おすすめ記事
中国の「働くママ」の過ごし方腕時計用ガラスから携帯電話用ガラスへ。周氏率いる藍思科技は携帯電話の勘所を捉え、アップルからの受注で花形企業となり、周氏も長者番付女性トップに上り詰めた。しかしアップルへの依存度が強すぎたこともあり、携帯電話の不振で経営が苦しくなっている。藍思科技の決算データによると、12年からアップルが最大の取引先となり、売上先に占める割合がほかを圧倒している状態が続いている。21年の売上高を見ると、上位5社の取引先で占める割合が全体の80.56%、なかでもアップルが66.49%を占め、以下サムスン、ファーウェイの順になっている。
ここ数年は、携帯電話の不振にともなって業績が伸び悩んでおり、先ごろ発表した22年上半期の決算では、売上高は191億元で前年同期比10%減、利益は同113%減となり、3億元の赤字を計上した。もはや黒字回復は望み薄になっている。
株価を見ると、21年1月には41.4元まで伸び、時価は2,058億元であったが、その後は業績不振とともに落ち込み、8月30日の終値は10.95元であった。時価も544.6億元まで下がり、2年足らずで1,500億元(約3兆366億円)という下落を記録した。これにより富豪だった周氏の資産も削られている。
藍思科技はこうした不振から脱却するため、自動車用ガラスに目を向けるようになった。テスラ、BMW、ベンツ、VW、理想、蔚来などの新エネ車メーカーから、車載用タッチパネル、新車用のガラスなどの注文を受けているとのことである。ただし設備投資も増えているという。
中国経済新聞を読もう<連絡先>
(株)アジア通信社
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:edit@chinanews.jp
URL:https://chinanews.jp関連記事
2024年12月20日 09:452024年12月19日 13:002024年12月16日 13:002024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す