アベノミクスの失敗から生じた1ドル=150円台の攻防
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2012年12月26日に再登板した安倍晋三元首相は、経済の低迷から脱するためにデフレや円高に手を打つ必要があると訴えた。それが「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスの「3本の矢」だった。
2013年1月、政府と日本銀行は「物価上昇率2%」の目標を盛り込んだ共同声明をまとめ、同年3月に白川方明(まさあき)総裁を更迭し、金融緩和に積極的な黒田東彦(はるひこ)総裁を起用した。
黒田総裁は日銀による国債の大量買い入れやマイナス金利政策を進め、市場に大量の資金を流し続けた。安倍元首相は就任直後の13年2月の経済対策に、10兆3,000億円の補正予算を組み、その後も毎年のように経済対策を打ち続けた。
そのため物価調整後の国内総生産(GDP)は、2012年第4四半期から2014年第1四半期まで年率3.2%のペースで上昇。1991年以降、年間のGDP成長率は平均0.7%未満であった。
GDPが一時的に急伸したことによって、アベノミクスは不当に信頼されることになったが、それは単に長い不況の後を受けた経済現象に過ぎなかったといわれる。
2014年4月、安倍元首相は消費税を5%から8%に引き上げ、成長に水を差したのである。健全な経済状態であれば、このような事態は短期間の成長鈍化にとどまったと専門家は観ている。
さらに、消費税率は2019年10月1日からに2回目の引き上げが行われて10%となり、追い打ちをかけたため、今も成長が抑制されているのが現状である。
アベノミクスの失敗
2014年初めから2019年末まで、つまり新型コロナウイルス感染症が経済を直撃する前まで、GDPはかろうじて年率0.2%のペースで成長したに過ぎなかった。これは、安倍元首相が約束したペースのわずか10分の1に過ぎない。もちろん、GDPの成長は生活水準の向上という目的を測るためのツールに過ぎないが、安倍元首相のもとではその逆が起きたのだ。生活水準が1990年代から下がり続けるなかで、バトンを引き継いだ安倍首相は状況をさらに悪化させたのである。
財務省は昨日20日、今年上半期(4~9月)の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は11兆75億円の赤字と集計されたと発表した。これは比較可能な統計がある1979年以来最大規模だ。これまで6カ月基準で貿易収支が最大赤字を記録したのは、2013年下半期の8兆7,600億円の赤字だった。今もアベノミクスのマイナスの影響が出ているのがわかる。
安倍元首相はGDPの成長率を年率2%に回復させると約束したが、その目標には遠くおよばなかった。就任時の1ドル=80円台が、現在、円安が進み150円台となっている。これもアベノミクスの失敗を裏付ける証拠ではないだろうか。
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】
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