総売上4,000億円突破は外へ外への突進力あるのみ(前)
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西日本鉄道(株)
外で稼いで地元に還元、これが最大の地元貢献
ゼンリンの本社機能は東京に移した。しかし本社登記はまだ北九州市戸畑区のままである。どうして東京に移さないのか?それは地元の税務署が強固に反対しているからである。また経営陣が法人住民税を北九州市に収めることで“地元還元”という堅いミッションを貫いているからだ。2016年3月期のゼンリンの決算は経常利益34億2,700万で純利益16億1,600万円、法人税等の納税が14億2,500万円になっている。そこから換算すると北九州市には1億6,000万円前後の法人税を納めたのではないか。
筆者の友人である、某設計事務所の会長は会社を起こして40年になる。平成の初めに本社を東京に移した。福岡市からは「御社は地元出身であることはわかるが、本社登記が東京であれば入札を控えていただきたい」と厳しい仕打ちを受けている。ただ郷土想いのこの会長は企業申告をこの福岡市で行っている。東京での設計業界では中間クラスの位置まで成長してかなりの業績をあげており、相当な額の法人税・法人住民税を納めている。
汚泥再生処理業の某社は、東京都のド真ん中に2つの工場を立ち上げた。首都高速・地下鉄の、地下40メートル以上の大深度工事から発生する汚泥処理の受注をこなしている。来春からはリニア新幹線の工事も始まり、長期工事を行う予定である。現在、この会社の売上の60%が東京首都圏で占められている。毎年、高収益を挙げて納税を行っているのだが、この経営者は「田舎者の私が中央で稼いで金を持ち帰り、地元に貢献できるという実感を持つことがその後の頑張りの糧になる」と痛快に吠えてくれる。
連結4,000億円突破には意識改革が必要だ
西日本鉄道(株)(以下、西鉄)はグループの目標をさらなる成長に向けて、今後10年の方向性を示した「にしてつまち夢ビジョン2025年」を掲げた。到達目標を5,000億円とする腹案を抱いているが、公にはされていない。このビジョンの具体的な事業の展開の柱は、(1)“中核エリア”である福岡において《交通》や《まちづくり》などの地域マーケットビジネスでさらなる開拓を進める。(2)重要開拓エリアであるアジアにおいて地域マーケットビジネスを進化させて、国際物流を併せてグルーバルビジネスを拡大することを目指す。この2つである。
「ビジョン2025年」は地元の深耕戦略とアジアへの開拓という国際戦略の2頭立てだ。西鉄の2016年3月期営業収益は3,635億2,300万円である。2025年までには天神再開発事業の目鼻がつくであろう。しかし、筆者の試算でいえば“地元の深耕戦略”で加算できる営業収益は400億円止まり、最大で500億円が限度と見る。そうなると5,000億円へ王手をかけるには、九州圏を超えた国内での市場開拓と国際戦略のビジネスしかないであろう。それだけ福岡、北九州の市場の底は浅い。
「ビジョン2025」の中間に位置する中期的計画(16年3月に策定)において、19年3月期に4,000億円突破の目標を掲げた。17年3月期の予想営業収益は3,718億円である。残りの2期で300億円の加算はかなりの難行苦行とみられる。突破できるとすれば、海外事業が営業収益増大に相当の貢献を果たさなければいけない。
筆者が強調したいのは“経営幹部・一般社員たちの意識改革”である。西鉄の110年の歴史は地元の運輸業、つまり住民輸送のビジネスが主体で、地域に生かされてきたのだ。ところがどこではき違えたのか「俺らが地元に尽くしている」という独善ぶりが顕著な時期があった。ここは一転して「お世話になった福岡に他所で稼いだ金を持ち帰ってくるのが俺らの使命だ」という意識武装を固めることではないか!そこから4,000億円のハードルをクリアする可能性が生まれてくる。
(つづく)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:倉富 純男ほか2名
所在地:福岡市中央区天神1-11-17
設 立:1908年12月
資本金:261億5,729万円
売上高:(16/3連結)3,614億6,500万円関連記事
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