2024年06月25日( 火 )

建設用3Dプリンタの普及に挑戦する

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(株)Polyuse 

 建設業界をテクノロジーの力でアップデートする(株)Polyuseは、建設用3Dプリンタなど建設業界特化型の先端技術を活用したサービス開発を手がける。最近では地域ゼネコンと連携し、公共工事への導入を図っていることでも注目を集めている。「建設用3Dプリンタについて、発注者、行政やゼネコンのマインドがポジティブな活用へと大きく変わりました。これから多くの関係者を巻き込んで事例を増やしていきたい」と強い意欲を示す同社の代表取締役・大岡航氏に、話を聞いた。

人材不足とインフラ老朽化

(株)Polyuse  代表取締役 大岡 航 氏
(株)Polyuse 
代表取締役 大岡 航 氏

    ──まず、「建設業界をテクノロジーの力でアップデートする」の思いについて。

 大岡 会社として、ビジョンとミッションを策定しております。ビジョンについては建設業に3Dプリンタを活用し、人とテクノロジーの共存施工を将来像として目指していきます。3Kといわれる建設業界の課題、若者が不足している実態を考えると、これから1人あたりの生産性を向上していかなければなりません。3Dプリンタを活用することで、それは可能になると信じています。

 次にミッションでは解決すべき課題を2点挙げています。人材不足やインフラ老朽化に対して3Dプリンタを用いて解決に導いていきたい。3Dプリンタというテクノロジーの力を使って建設業界をアップデートすることを目指していきます。

 ──3Dプリンタの技術開発体制は。

 大岡 建設用の3Dプリンタはバックシステムが重要です。コンクリート専用の材料、練り混ぜるためのミキサー、圧送するポンプ、さらにそれらを制御するハード機器、またノズルをどう動かすかのアルゴリズムなどの整備が必要になってきます。当社ではハードウェア、ソフトウェア、マテリアルに通じた専門家が集結しており、三位一体の開発体制を構築し、日本で唯一の建設用3Dプリンタの開発環境をもつロボットベンチャーであると自負しています。

Polyuse ならではの強み

国交省の公共工事で実績

 ──建設用3Dプリンタの導入実績について、お聞かせください。

 大岡 2020年夏には京都市の吉村建設工業と共同で一般的な集水桝を製作しました。土木構造物の施工にもチャレンジし、前田建設工業と共同で円柱型集水桝を造成しましたが、3Dプリンタならではの印刷スタイルを確立すれば、構造体自体の耐久性や設計の自由度も格段に増すという試みでした。

 さらに最近では、四国地方整備局省の発注工事で国内初となる3Dプリンタの印刷造形による土木構造物の施工を入交建設と実施しました。また、近畿地方整備局の発注工事でも、吉村建設工業とともにオンサイトプリンティングを行いました。中部地方整備局の工事でも実績があります。

 ──3Dプリンタの導入で、どのような効果がありましたか。

 大岡 まず、3Dプリンタの特徴として、複雑な形状にも対応することができます。プレキャスト工法や現場施工では造成しにくい形状でも、3Dプリンタではそれが可能です。次に、構造物の規模にもよりますが、既存の施工法と比較すると工期短縮、コスト削減につながっています。今後、実証実験や本施工を重ねつつ、社内での技術検証を推進していくことで、さらなるコスト削減も可能だと考えています。

無人化施工にも挑戦

 ──公共工事導入での成果と課題は。

 大岡 四国地方整備局の現場に導入された意義は、大きかったと考えています。強度基準と照らし合わせたうえで数字的な根拠を提出し、問題がないことも確認していただきました。ただ、行政の方々が3Dプリンタという新手法に対して、マインドを含めてチャレンジされたことは大きく、それが近畿地方整備局や中部地方整備局の実績につながりました。目に見えない効果ではありますが、マインドセットの変革が起きていると感じています。3Dプリンタを検討するための場を設け、当社に対してもお声がけをされることは普及促進のうえでも大変ありがたいことです。

 逆に、コストやオペレーションの観点では最適な状態とはいえず、まだまだ完全な無人化施工までは進展していません。とはいえ、現場に1~3名いれば安定した造形を構築でき、品質も保証されます。今後、無人化施工に向けて技術サイドから研究開発を進め、実証実験を進めていかなければなりません。

 ──これから地域ゼネコンとの連携が深まりそうです。

 大岡 先ほど人材不足とインフラ老朽化について申し上げましたが、実際にこの課題に向き合っているのは地域ゼネコンです。私は高知県出身ですが、高知県の自然災害で橋梁が壊れた事例があり、その補修工事は予算と人材確保の問題で3年ほどかかりました。地方に行けばインフラに頼ることが多く、何か問題が発生すれば、生活に響くことは身内を通して理解しました。なので、実際に関わる地域ゼネコンが使いやすい技術を開発することが大前提となります。

Polyuse オンサイトプリンティング

 ──福岡や九州での手ごたえは、いかがですか。

 大岡 行政、地域ゼネコン、設計事務所などからお問い合わせ自体はたくさんいただいております。予算やタイミングの関係でプロジェクトはまだ実現していませんが、九州も挑戦的な提案をされる方が多く、来年には何らかのプロジェクトが発生すると思います。

 熊本県では震災後、住宅やインフラ問題について3Dプリンタで解決できないかと模索している地方自治体も増えてきました。たとえば、熊本県の自治体ではスマートシティ構想を計画しており、産官学の参画に積極的になっています。そこで3Dプリンタの技術をスマートシティに活用できないかというお声がけもいただいています。そういった問い合わせにも応えていけるように、当社も研究開発や実証実験を積極的に進めてまいります。

【長井 雄一朗】


<COMPANY INFORMATION>
(株)Polyuse (ポリウス)

代 表:大岡航/岩本卓也
所在地:東京都港区浜松町2-2-15
    浜松町ダイヤビル2F
設 立:2019年6月
資本金:608万7,785円
URL:https://polyuse.xyz

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