新たなステージ迎えた再エネの未来(1)
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2030年、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が掲げる、太陽光発電だけで100GW超、5,700万世帯分の電気がまかなえる時代は来るのか。原発39基分の電気が太陽光だけで生み出せるようになれば、日本のエネルギー自給率も大幅に上がり、海外に依存しない国産電力ができるかもしれない。しかし、太陽光のみならず再生可能エネルギーの普及が進む一方で、ハードルはまだまだある。本シリーズでは新たなステージを迎えた再生可能エネルギーの未来について、現在のトレンドから読み解いていきたい。
分かれる太陽光発電の方向性
7月29日から3日間、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催した太陽光発電に関する総合イベント「PVJapan2015」の様子は、以前と比べて様変わりしていた。出展者数が2014年の160社から今年は153社に減少したが、その背景には、太陽光発電大手の京セラが出展を見送るなど「常連さんがいなくなった」(参加者の1人)ことがあるようだ。
PVJAPANでは、国内外の太陽電池メーカー、インストーラー、関連製品メーカー、製造装置メーカー、部品・材料サプライヤー、大学・研究機関など、太陽光発電に関わる幅広い分野から新製品・新技術が展示されている。
始まったのは08年。12年7月施行の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を機に、発電すればするほど儲かるということで、投資商品としてのメガソーラーの建設ラッシュで市場が活性化した。各社が太陽光パネルの発電効率や耐久性などを競い合い、展示会も昨年までは賑わいを見せていた。
ところが、いわゆる「九電ショック」と呼ばれる再エネの出力抑制問題が14年9月に浮上。太陽光発電業者の事業マインドが冷え込んでしまった。FIT価格も当初42円/kWから今年7月には27円/kWへ引き下げられ、投資商品としてのうま味は薄れつつある。
「27円でも十分にやっていける」という事業者もまだまだ多いが、いずれはゼロ円に収束していくと見られており、太陽光発電で得た資本を元手に別の事業を始めようとする企業も増えてきた。たとえば、埼玉県のある太陽光発電事業者は、「27円案件がある限りは太陽光発電事業をしていくが、それより下がると続けられるかどうかはわからない。これからはバイオマスと水素に投資していきたい」といった具合だ。太陽光発電市場そのものが無くなることはない。ただ、発展期から成熟期に入る岐路にあることはたしかで、展示会の出展状況から今後の方向性がいくつか見えてきた。
(1)条件が過酷な土地(主に傾斜地)でも太陽光発電設備を設置する
(2)カーポート、営農型(農業を続けながら発電)、水上式など用途を広げる。
(3)蓄電池を活用して住宅用太陽光発電の自家消費を促す
(4)稼働中の発電所のO&M(オペレーション&メンテナンス)に力を入れる
(5)FITが36円/kWなどプレミア価格で認定された未稼働の土地を取得
(6)稼働中の太陽光発電所そのものを不動産として中古売買する実はこうした動きは、すでに欧米や中国など世界では進んでいる。日本の太陽光発電市場は周回遅れで進んでおり、裏を返せば、海外動向が読めれば今後の方向性も見えてくる。
本シリーズでは、まず太陽光発電の最近の動向を追う。そして、ほかの再エネの状況を具体的事例から見ることで、再エネ業界全体がどのような未来を歩んでいくのか考えていきたい。
(つづく)
【大根田 康介】関連キーワード
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