2024年09月01日( 日 )

映画『シモーヌ』の世界が現実に、広告塔はバーチャルヒューマン

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 今から20年程前に公開された米国の映画『シモーヌ』。落ちぶれた映画監督が再起をかけて映画撮影に挑むも、主演女優に契約を破棄され窮地に立たされる。それでも何とか“別の女優”を主演に迎えることで、無事に映画を完成させるというのがこの映画のプロローグだ。

 この別の女優というのが、自分の思い描く理想の女優像を具現化させたバーチャルヒューマン、シモーヌ。現実には存在しない、シモーヌというバーチャル女優に世界は魅了され映画も大ヒットという流れで物語は進んでいくのだが、この映画で描かれた世界はもはやフィクションではなくなっている。

広告モデルのスタンダードになるか

 写真・イラスト・動画・音楽素材のマーケットプレイス「PIXTA」の運営を手がける、ピクスタ(株)(東京都渋谷区、古俣大介代表、東証グロース)は、対話AI・バーチャルヒューマンの企画・開発を行う(株)Capex(キャペックス)(東京都港区、小亀俊太郎代表)との協業で、「フォトリアル・バーチャルヒューマン」素材の販売を行っている。

 フォトリアル・バーチャルヒューマンは、本物の人間と見間違えるほど高品質な3DCGで制作されており、企業のサービス情報や採用ページなどを彩る広告素材としての需要拡大が期待される。素材は単品購入で1点1,980円(税込、Mサイズ)からと、利用しやすい価格設定となっている。

 以下の画像は、フォトリアル・バーチャルヒューマンと、実在する人物モデルを被写体に撮影された写真を、人物モデル本人の許諾を得た上で、組み合わせて加工したもの。静止画においては、もはやリアルな人間との区別が難しい水準にある。

ピクスタ フォトリアル・バーチャルヒューマン

 ピクスタは他社とも協力しながら、既存の人物写真素材の顔を架空の人物(フォトリアル・バーチャルヒューマン)に加工して提供するサービスや、3DCG人物モデル(バーチャルヒューマン)をキャスティングするサービス展開も視野に入れている。

バーチャルヒューマンが身近な時代へ

 仮想の存在であるバーチャルヒューマンの認知は進んでいる。有名なのは2019年のNHK紅白歌合戦で登場した『AI美空ひばり』だろう。美空ひばりさんが故人ということもあり、賛否両論に分かれたが、テクノロジーの進歩という点では素直に驚かされた。

 夫婦で3DCG制作を行うユニット「TELYUKA(テルユカ)」によって、15年にコンセプトイメージが発表された3DCGの少女『Saya』は、人間そっくりだと話題を呼び、20年には人気ドキュメンタリー番組『情熱大陸』でも取り上げられた。

まだまだ進化中の『Saya』
まだまだ進化中の
『Saya』

    このほか、アパレルブランドのGU(ジーユー)による『YU(ゆう)』など、企業によるバーチャルヒューマンの活用は進んでいる。CMや雑誌などにモデルとして登場する機会が多いが、今後はデジタルサイネージ(電子看板)に登場しての観光案内、悩める人の良きメンター(相談者)など、幅広い領域での活躍が期待される。

 メタバース市場の発展をにらみ、バーチャルヒューマン・デジタルヒューマンの制作に取り組む企業数も増加傾向にある。リアルとバーチャルの境界が溶け合っていくなかで、バーチャルヒューマンは企業の広告塔、モデルや歌手など独立したコンテンツとして、ますます身近な存在になっていくに違いない。

【代 源太朗】

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