後進育成に邁進する「現代の名工」

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(公社)日本フラワーデザイナー協会
福岡県支部 NFD名誉本部講師
1級フラワーデザイナー 世利 靖子 氏

 フラワー装飾技能検定は、厚生労働大臣の認定を受ける国家資格である。フラワー装飾技能検定福岡県協議会は(一社)福岡県技能士会連合会の会員であり、その協議会を構成するのが、(公社)日本フラワーデザイナー協会(以下、NFD)と福岡花商協同組合である。NFDの名誉本部講師を務め、現代の名工にも選出された世利靖子氏に話をうかがった。

 ──フラワー装飾技能検定協議会についてお聞かせください。

「岩田屋・学」フラワーアレンジメント講座
「岩田屋・学」フラワーアレンジメント講座

    世利靖子氏(以下、世利) フラワー装飾技能士というのは1983年に始まった国家資格です。その資格試験の運営を行う都道府県職業能力開発協会からの委託を受け、実施するのがフラワー装飾技能検定福岡県協議会です。協議会は、(公社)日本フラワーデザイナー協会と福岡花商協同組合の2団体で構成されています。会長は2団体から交互に選出され、私は2020年2月まで会長を務めました。現会長はNFDの倉掛千鶴子さんが務められています。

 NFDは、花に親しみ、花を愛する人々にフラワーデザインを普及し、技術や知識の向上を目指している協会です。主に、フラワーデザイナーやスクール経営の会員です。

 フラワー装飾技能士は、当初1級、2級の2種類の資格でしたが、06年に3級が開始されたことで、すそ野が広がり、取得しやすくなりました。それにより、経験が少ない高校生や専門学生、一般の方の受講生が増えました。技能士資格は一生自分の身につくものです。技術を早く取得すると、その分、フラワー教室やお花屋さんなどのお仕事が始めやすくなります。しかし、コロナ禍でNFD会員数が約3万5,000人から約1万人と大幅に減りました。教室の活動制限や、パーティー・結婚式などが催されなくなったことで、花の消費が減少したことなどが会員数減少の要因でしょう。

宿根スイトピー・アレンジ(2022年3月)
宿根スイトピー・アレンジ(2022年3月)

    ──後進の育成・指導へどのように携わってきたのか、お聞かせください。

 世利 フラワー装飾の世界に入ったのは、学校卒業後2年間ぐらい会社勤めをしていたころ、カルチャー教室に入学して副島三煌氏に師事したのがきっかけです。副島氏との出会いはとても大きかったです。3年後から教室の手伝いをしながらデザインを学びました。フラワーデザインを学んで5年目の1974年にNFD主催のグランプリで第2位に入賞し、その後も本部事業参加(東京)や海外への研修を重ねて、プロ・指導者の道を目指しました。

 NFDの公認校である「福岡フラワーデザインSchool」の常勤講師を72年1月から現在まで務める傍ら、一時期は同じく公認校の福岡フラワーデザイン久留米教室・主宰や九州フラワーデザイン専門学校の専任講師として、スクール常勤講師と重複して指導を行ってきました。84年には技能検定補佐員を務め、2006年には技能検定委員に就任しました。

 ──「卓越した技能者(現代の名工)」(※1)、黄綬褒章(※2)を受章されました。

 世利 16年に現代の名工、18年に黄綬褒章を受章いたしました。長年、フラワー装飾業界に携わり、後進育成に尽力したことを評価していただいたのだと思います。本当に花、装飾が好きなので評価していただいたことは非常にうれしいですね。

NFD山口県支部事業・デモの作品(2022年6月)
NFD山口県支部事業・デモの作品
(2022年6月)

    ──これからフラワー装飾業界に入られる方やフラワー装飾技能士を目指される方にメッセージをお願いします。

 世利 今年度から国家検定の名称がフラワー装飾師からフラワーデザイナーに代わりました。ファッションデザイナーやグラフィックデザイナーなどデザイナーという響きになったことで、若い人たちにも受け入れられやすくなったと思います。どなたでも気軽に受験しやすい3級フラワーデザイナーは、技術と知識の基礎を学ぶことができます。先程も述べましたが、資格は一生自分の身につくものですので、たとえば結婚や子育てで一度「仕事」を離れたとしても、資格があれば現場復帰することはできます。

 花というのは見た目がきれいで香りもあります。花びらを触ってみると花の種類ごとにまったく違います。また、季節ごとに多くの花たちとふれあうことで季節を感じることができます。また、私もそうでしたが、やはりお花が好き、お花に携わる仕事をしたい人にはぜひ資格を取ってほしいと思います。

※1:「現代の名工」という制度趣旨は、卓越した技能者を表彰することにより、広く社会一般的に技能尊重の気風を浸透させ、もって技能者の地位および技能水準の向上を図るとともに、青少年がその適性に応じ、誇りと希望をもって技能労働者となり、その職業に精進する機運を高めることを目的とする。また、被表彰者は、(1)極めてすぐれた技能を有する者、(2)現に表彰に係る技能を要する職業に従事している者、(3)技能を通じて労働者の福祉の増進および産業の発展に寄与した者、(4)ほかの技能者の模範と認められる者。それらの要件を充たし、都道府県知事、そのほか一般社団法人などの団体が推薦した者にうちから、厚生労働大臣が技能者表彰審査委員の意見を聴いて決定する。(厚生労働省ホームページより) ^

※2:農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方に授与される。 ^

【内山 義之】


<プロフィール>
世利 靖子
(せり・やすこ)
1945年生まれ、福岡市出身。1972年1月から現在まで(公社)日本フラワーデザイナー協会公認校・福岡フラワーデザインSchool常勤講師を務める。その間、同協会公認校である福岡フラワーデザイン久留米教室の主宰や九州フラワーデザイン専門学校の専任講師も兼任。フラワー装飾技能検定福岡県協議会においては、2006年から22年2月まで協議会委員として試験の運営に携わる傍ら、21年まで技能検定委員を務める。

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