大量空き家時代における住宅事業者の社会的責任(4)
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許されなくなった「売って終わり」
ここからは住宅事業者による「ストック(既存・中古)住宅」への取り組みを深掘りしていく。総務省統計局がまとめた「平成30年住宅・土地統計調査」によると、わが国には全国に約6,240万戸の住宅があるとされ、ストック住宅がこれに当たる。それにどう対処していくかが、空き家問題の今後の行方を大きく左右することに間違いない。
そうした事情もあり、この20年ほどで住宅事業者は徐々に、ストック住宅事業への注力の度合いを高めてきた。その契機の1つとなったのが、2000年前後に不良施工問題が社会問題化し、住宅品質への関心が高まったことである。
それは同時に、引き渡し後のメンテナンスを含むアフターサービス体制や保証のあり方について、住宅を求める消費者の関心を一気に高めた。そこで国は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」など、再発防止に向けた法整備を進めた。
このような動きにより、住宅事業者は規模に関わらず、「売って終わり」というこれまでまかり通ってきたビジネスモデルの変更を余儀なくされた。そのなかで事業者が注力せざるを得なくなったのがストック住宅事業なのである。
その事業内容にはいくつかの種類があるが、代表的なのが「リフォーム(リノベーション)事業」だ。「注力せざるを得なくなった」としたのは、これには2000年以降のしばらくは新築の需要がまだ十分に存在していたことが関係している。
圧倒的に収益率が高く、営業手法が確立されていた新築住宅の方が、それとは正反対のリフォーム事業よりもヒト・モノ・カネの配分を優先すべきという考えが強かったし、実際そのように業界全体が動いていた。
つまりは、当初は仕方なしにリフォーム事業や長期保証・アフターサービス制度の確立に着手した感があったわけであるが、そのなかで一部の事業者は単にリフォーム事業を拡大させるにとどまらず、さらに踏み込んだ狙いをもちながら事業を展開していた。
その狙いとは顧客の囲い込みである。長期の保証・アフターサービス体制を展開するなかで、それが可能になると考えたわけだ。というのも、建物の経年劣化やライフスタイルの変化にともない、ユーザーは住まいに何らかのアクションを起こそうとする。
そうしたニーズに対応していなかった時代には、ストック住宅は収益を生み出すものではなかったが、長期の保証・アフターサービス体制があることで、リフォームという収益機会を創出できるようになる。
リフォーム業界で上位占める住宅大手
当初は足踏みをしていたが、2000年前後に供給された住宅がリフォーム適齢期に入った今、その目論見は半ば成功をみせている。1,000万円超のリノベーションにまで発展し、新築にはおよばないものの、高収益を生み出すという事例もみられるようになったからだ。
そして、その事例の代表格が大手ハウスメーカー系のリフォーム事業。自社施工の顧客であれば、定期メンテナンス時に提案できるため、新規顧客開拓を必要としない。部資材・設備については新築と共通化し一括購入すれば、コストメリットも生じる。
彼らのなかには数百万戸(戸建、アパート、マンションを含む)におよぶ、膨大な供給実績がある事業者も存在し、それを背景にリフォーム業界のランキングには売上高1,000億円超える大手ハウスメーカー系が上位に顔を揃えている状況である。
ところで、「目論見が半ば成功」と書いたのには理由がある。それは、単なるリフォーム・リノベーションだけでなく、さらに一歩・二歩進める幅広いストック住宅事業への発展の模索を、彼らは今、進めているからだ。
それは空き家問題の深刻化のみならず少子高齢化、国民所得の伸び悩み、さらには持続可能性社会実現といった社会課題の動きなどにも絡み、より多角化、複雑化したものとなっている。
(つづく)
【田中 直輝】
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