日中関係、「政治分離」から「経済分離」へ
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アメリカに遅れること5年、ついに日本も追随し、中国への全面的な半導体の輸出規制に踏み切った。トランプ氏がホワイトハウスの主だった5年前、アメリカ政府は日本に対し「主な半導体製品の中国への輸出を禁止」するよう求めた。当時の安倍政権はこれに対し、ファーウェイの携帯電話やシャオミ、OPPOの携帯電話、センサーなど主な部品がいずれもソニーなど日本企業の供与であることを踏まえ、「引き延ばし」作戦をとった。なかでもファーウェイの機種「P30Pro」は、1,631件ある部品のうち日本製のものが53.2%にあたる869件である。
安倍元首相は、経済産業省がアメリカとはぐらかし合いながら「ファーウェイの通信機器は買わないが日本製の部品の輸出は認める」という対策を講じた。中国'の需要があまりに魅力的であるゆえに企業の利益をできるだけ守るためであった。半導体製造設備の販売量について、中国は2020年に初めてトップに立った。
しかし岸田首相の就任後は、軍事面で「日米三共同」(兵器や装備の共同使用、軍事基地の共同利用、指揮・情報システムの共同化)を実現し、「日米連合軍」を築き始めたほか、経済面でもこれまでの「同床異夢」という策を改め、「日米経済安保同盟」によって中国の台頭を締め付けるようになった。
岸田首相は1月13日にホワイトハウスを訪れ、「中国への半導体輸出禁止に向けてオランダも含めた3カ国の協力体制を形成」というバイデン大統領の要望に全面的に同意した。
岸田首相の帰国後、これら3カ国の政府がワシントンで個別および三者での協議を行い、1月27日に中国への半導体輸出の「禁止令」について合意に達した。この主な内容は以下の3点である。
1 回路線の幅が14nm以下の先進的半導体を規制の対象とする。
2 中国など海外の工場で製造される製品も含め、アメリカの技術を使った製品の中国への輸出を禁止する。
3 先進的半導体部品の製造が可能である設備の中国への輸出を禁止する。今回の中国締め付けにあたり、アメリカが日本とオランダを引き入れた理由は何か。日本はチップの開発こそ遅れを取っているが、材料や製造設備は世界のトップを走っている。なかでも東京エレクトロンは、半導体やFPD製造設備について、オランダのASMLと並ぶ世界のトップメーカーである。アメリカの中国締め付けはすでに材料や部品から製造設備にまでおよび、全面的な作戦を展開するようになっている。
日本政府の2月4日の情報では、岸田首相が経済産業大臣に対して早期に「外為法」(外国為替および外国貿易法)の修正案を提出するよう指示した。近々国会での審議を経て、4月ごろにはアメリカやオランダと歩調を合わせて中国への半導体輸出規制に踏み切る方向である。
この規制が実施されて矢面に立たされるのは、日本企業自身である。経済産業省の調査によると、世界の半導体製造設備の売上高上位15社のうち7社が以下の日本企業である。
1 東京エレクトロン
2 アドバンテスト
3 SCREENホールディングス
4 KOKUSAI ELECTRIC
5 日立ハイテク
6 キヤノン
7 ディスコ日本半導体製造装置協会のまとめによると、半導体製造設備の輸出額は、2020年は計2兆3,835億円(約1,200億元)で、このうち中国向けが26%の6,306億円(約363億元)となっている。また2021年は計3兆4,430億円となり、中国向けは57%も増えて9,924億円(約514億元)に達し、全体割合も29%にのぼっている。すなわち、半導体設備各社は売上高の3分の1を中国に頼っているのである。
日本政府がアメリカとの合意に沿って輸出規制に踏み切れば、以上の7社も含めた各設備メーカーが売上の30%近くを失うことになり、株価の値下がりも避けられなくなる。きらに半導体の材料や部品の輸出も止まれば、各社とも中国市場での利益が著しく低下する。岸田首相は、一年以上前の就任時の施政方針演説で、「新しい資本主義」として、企業を豊かにし国民を豊かにして好循環を生み出す経済成長の仕組み「キシダノミクス」を打ち出した。しかし岸田首相はこれまで、安全保障面で完全にアメリカに丸め込まれたほか、国内の実績も惨憺たるもので、「新しい資本主義」はすでに絵に描いた餅となり、内閣支持率も当初の54%から26%に下落、退任を求める声が34%に達している。
中国に進出している企業のなかで、アメリカの制裁を避けようと産業チェーンの改革に乗り出す動きが出ている。ソニーはこのほど、日本や欧米向けのデジタルカメラの生産ラインを中国の工場からタイの工場にシフトし、中国では現地販売品のみを製造すると発表した。
ソニーのデジタルカメラは海外では中国とタイの2カ所に工場をもつ。2022年の売上台数はキヤノンに次ぐ世界2位の211万台であり、このうち中国で製造されたものが約160万台で、現地販売分は15万台、それ以外は日本や欧米に出荷されている。日本経済新聞が主な企業100社に対して実施した最新のアンケートでは、中国からの部品購入量を減らすと答えた割合が53%に達しており、5年後には中国からの購入割合が28%に低下するという。
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