2024年11月26日( 火 )

ミスショットはナイスショットのもと

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golf この春から大阪の大学に進学している教え子が、夏休みで福岡に帰って来ました。高校3年間、いつも過程を大事にしなさいと言い続けましたが、本当によく練習に取り組む生徒でした。この夏休みもほぼ毎日のように施設にやって来て、昼の12時から夜の9時まで黙々と練習に励んでいます。高校時代は目立った成績はありませんでしたが、彼の頑張りは必ずいつかさまざまなかたちで実を結ぶときが来ると信じています。
 そんな彼が一度だけ涙を見せたことがありました。高校1年生の冬のことです。その当時の彼は調子を崩していて、コースでも練習場でも納得できるショットを続けられませんでした。少しのタイミングのズレが芯を微妙に外させるのです。高いレベルになると少しのズレでも納得ができなくなりますが、タイミングというのはズレが小さいほど修正は難しいものです。不調は1カ月ほど続き、その間は誰よりも多くの時間を彼に費やし見守りました。何度も動画を撮影してチェックしましたが、スイング的に問題はないと確信していたので、一切スイングを変えるアドバイスはしませんでした。代わりに「今のスイングはどんな感覚だった?」と打つたびに彼に尋ねました。
 その日も同じように、ボールを打つ彼を見ていました。1時間ほど経った頃、彼は上手く打てないことにイライラして、投げやりな態度でボールを打ち始めました。そんな姿を見たのは初めてでした。僕はたまらず声をかけました。「ちょっと待て。今ゴルフをしていて楽しいか?」。彼はクラブを持つ手を止めてこちらを見ました。「残念だけど、お前のショットが良くなる特効薬なんてものはないよ。でもね、お前が打っているショット1つひとつに調子が良くなるためのヒントが隠されているんだぞ。そんな後ろ向きの気持ちで練習して、そのヒントを感じ取ることができるのか?」。そう問いかけると、彼の瞳から涙がポロポロ零れ落ちました。
 今振り返ると、彼は調子が劇的に向上する「もっとこうしなさい」という僕からの魔法の一言を待っていたのかもしれませんね。そんな言葉があれば、真っ先に伝えていたでしょうが。

 ナイスショットに理由を求める人はいません。しかしミスショットには必ず何かしらの理由が存在します。そしてそれらの理由を1つひとつ確認し解決していくことが、技術向上につながっていきます。つまり、調子が悪いときこそ上達するチャンスなのです。そう考えれば、調子が悪いときほど練習するのが楽しくなるはずですよね。

 彼のゴルフに対する真摯な姿勢は、後輩たちの良いお手本になっています。最近、ジュニアゴルファーの生徒もだいぶ増えてきました。上手くいかないときにどういう自分でいるべきかを学ぶことも、彼らがゴルフをすることの目的の1つです。これから先の人生において、壁は何度も何度も訪れるのですから。
 レッスンするということは、その子たちのゴルフ人生を預かるということ。彼らのゴルフを上達させることはもちろんだけど、人生という最もタフなコースでナイスショットを打てる人に成長してほしいというのが、一番の願いです。

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<PROFILE>
nobukawa_pr信川 竜太 (のぶかわ りゅうた)
1971年3月27日生まれ。(株)スリーバーズ代表取締役。スポーツキャスター、DJ、MC、リポーターとしてスポーツを中心にテレビ、ラジオなどで活躍中。その一方で、ゴルフコーチとしても活動している。信川氏がゴルフの道を志したのは福大大濠高校1学年時。卒業後、フロリダ州ブロワードジュニアカレッジに入学(のち、フロリダ・リン ユニバーシティーに編入)。在学中、トーナメントでタイガー・ウッズの上位に入る結果を残した。2006年1月に(社)日本プロゴルフ協会 PGAゴルフティーチングプロの資格を取得。10年10月、福岡市東区多の津にスポーツ塾を開講した。

 

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