大量空き家時代における住宅事業者の社会的責任(7)
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活発化しつつある「買取再販」の動き
自らが供給した/する住宅の空き家化を阻止する──。
それを実現するため、住宅産業の一部でいま、さまざまな取り組みがさまざまなかたちで行われるようになってきた。その1つに「買取再販」がある。オーナーの所有する住宅を事業者が土地ごと買い取り、建物をリノベーション。現在のライフスタイルに合わせたデザインや間取りに改修し、断熱性能の強化など快適性も高め、新築に近い状態にしたうえで、購入希望者に販売するというものである。
注目したいのが「買取」という言葉だ。ストック(既存・中古)住宅を単に右から左へと流通させるだけでなく、事業者が一度買い取ってその建物の耐久性や耐震性を確認し、必要に応じた設えを施すのだ。
構造躯体に一定の保証期間も設ける。購入希望者は比較的安心して購入できるし、もともとのオーナーにとっては──売価がそれで良いのかという問題はあるにせよ──少なくとも「売り先」があるということで安心感をもつことができる。
この買取再販制度は、2000年前後、大手ハウスメーカーが自社のストック住宅を対象に、首都圏などの一部好立地で始めたが、今ではエリアを拡大。さらに、彼ら以外にも一般ストック住宅を対象に、専門的に取り組む事業者も登場している。
なかでもマンションについては、戸建住宅よりも早く売買の仕組みが構築されたことから買取再販の仕組みが比較的普及・活発化しており、ある程度のストック住宅流通市場の規模が確立されている。
さて、新築段階から買取を前提とすることも、今や大手ハウスメーカーのあいだで一般化されつつある。それを物語るのが「残価設定型ローン」の登場だ。2019年に旭化成ホームズ(株)(ヘーベルハウス)が取り扱いを開始したのが始まりである。
新生銀行と共同開発した「新生パワーセレクト」という金融商品がそれで、借入元本の一部を最終回一括払いとすることで月々の返済額を抑えられるのが特徴である。下図を参照するとわかりやすいだろう。
一般的な住宅ローンに比べて月々の返済額が少なければ、消費者にとっては住宅取得の負担が軽減できるのであり、その分を暮らしの質の向上のために役立てることができる。これは、現代の日本は人生100年時代になったことも影響しているといえそうだ。
自宅が「住宅双六(すごろく)」の終点ではなくなっており、国民がライフステージや身体状況の変化に合わせつつ柔軟に住み替えることが、今後さらに活発化するようになる。新築時にそれに適した住宅ローンを組むことも十分考えられ、残価設定型ローンはその選択肢の1つになるだろう。
注目されるのは、上図おける「①売却による完済」である。グループの旭化成不動産レジデンス(株)が物件売却を担当し、仮に買い手がつかない場合は一括返済元本と同額で買い取りを保証する仕組みとなっている。
買取を保証し、オーナーが物件を手放すタイミングで住宅事業者が買い取りを行い、リノベーションを施して再流通させる。このような取り組みが、少なくとも今後供給される住宅を空き家にしないようにするために取られようとしている施策なのだ。
なお、旭化成ホームズ以外にも大和ハウス工業(株)が22年、(一社)移住・住みかえ支援機構と日本住宅ローン(株)が共同開発した残価設定型住宅ローンの紹介を開始しており、この動きは今後さらに広がるものとみられる。
上記の事例は、空き家増加を阻止するため、時代は住宅事業者に将来的な買い取りまでを視野に入れた住宅供給の在り方をも求めていることを表している。
【田中 直輝】
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