英誌の「アジア代替サプライチェーン」論は新冷戦を助長か
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英週刊紙『エコノミスト』は記事のなかで、「Altasia」という新しい概念を生み出した。日本の北海道から始まり、韓国、中国・台湾地区、ASEAN諸国、バングラデシュを経由し、さらにインド北西部のグジャラート州に至る三日月形の地域が、中国に代わる新たな「アジア代替サプライチェーン」になるというのだ。
注意してほしいのは、中国から外資が撤退し、中国が「世界の工場」の地位を失うとの説をエコノミストが唱えたのは今回が初めてではない。エコノミストは16年前の「中国における製造の問題」と題した特別報告のなかで、「中国は必ずしも最高の生産地とは限らないと結論づける企業が増えている」と憶測した。
驚くべきことに、エコノミストは16年経った今も自分の世界に浸り、世界経済構造の重大な変化と中国経済の力強い発展を無視している。根本的な違いについていえば、世界経済を動かすロジックに、すでに重大な変化が生じているということだ。
ところがエコノミストがいうところの「アジア代替サプライチェーン」は、依然として地経学(geoeconomics)および地政学(geopolitics)における古い論調をひきずっている。歴史に詳しい人ならば、第2次大戦後に米国の地政学者が米政府に対して、アジア大陸と海洋世界の間の三日月形の地域でソ連の拡大を防ぐメカニズムを構築するよう提案したことを知っているだろう。
要するにエコノミストの論説は、今日、米政府が絶えず中国に圧力をかけ牽制しようとする地政学的駆け引きを背景として、米国が仕掛ける「新冷戦」に追随してそれを助長する論調を打ち出しているに過ぎず、世論に対して地経学の分散化ビジョンを描いて見せようとしているのだ。
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2022年中ロ貿易額、記録的な25兆円にエコノミストは2007年の年初に、グローバル企業は中国から撤退すると断言したが、すぐに08年のリーマン・ショックによってその憶測は打ち破られた。国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータによると、07年に中国に流入した外資は800億ドルにのぼり、08年には初めて1,000億ドルを突破し、11年以降も長年に渡り1,200億ドル以上の水準をキープした。アジアに流入する外資に占める割合も07年の15.4%から13年の47.2%に上がった。中国の指導者は13年に「一帯一路」を掲げ、能動的により広い範囲内で資源を調整し、世界の発展により良い国際協力の舞台と国際公共財を提供した。その後中国に流入する外資は増加を続けたが、アジアに流入する外資に占める割合は低下し、20年には25.6%まで下がった。
残高を見ると、中国に流入する外資がアジアに流入する外資に占める割合は、98年の22.0%から07年には10.3%に低下し、その後上昇を続けて21年には20.9%にのぼった。長期的に見ると、07年は90年代のアジア通貨危機以降の最も深い谷だったといえる。エコノミストはこの時期に中国の外資導入の将来性に関する判断を誤ったのである。歴史は繰り返される。22年は国際投資の低迷期であったが、エコノミストは再びそのような類似期に似たような予測を発表し、二の舞を演じたわけである。
さらに重要なことに、エコノミストは「アジア代替サプライチェーン」という概念を生み出す際に、アジアのサプライチェーンのコアコンピタンスを十分に認識せず、また周辺諸国に市場、発展のチャンス、中核部品などを提供するという、中国がはたす不可欠な力を無視した。エコノミストはそのような無理解を背景に、逆に中国と周辺国との発展の断裂を重視し、地経学の分裂と分散化をつくり上げようとした。
世界の製造業は変革を迎えている。米国は製造業と産業チェーンの国内回帰を促進しているが、世界の製造業の重心が東(アジア地域)に移る流れは現在も持続的に強化されている。研究によると、変動を続けるアジアのサプライチェーンにおいて、ASEANの労働集約型製品の市場シェアが拡大し、中国はより高価値の部品供給センターになろうとしている。中国企業からASEANの製造業に流入する資金も急増しており、2つの経済体の間のサプライチェーンの流通性はさらに高まっている。
中国が新たな発展構造の構築を急ぎ、統一された巨大市場がさらに十全なものとなるにつれて、外資流入を決める要素にも変化が生じている。早期の発展段階においては、人件費と人口のボーナスが中国の外資導入で重要な力を発揮していたが、現段階では中国という特大規模の市場と、より優れたビジネス環境の魅力のほうが大きい。とくに高水準の開放の構造を構築しようとする中国政府の政策は、外資の中国における収益の将来性をさらに高め、また周辺の経済体とのつながりをより緊密にするだろう。
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