米国経済の好都合すぎる真実 (謎) と基本矛盾(2)インフレーション(4)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は4月19日発刊の第330号「米国経済の好都合すぎる真実 (謎) と基本矛盾(2)米国経済の基本矛盾とインフレーション」を紹介する。(4)政策へのインプリケーションと展望
デフレリスク(景気後退リスク)に対する警戒が強まっていくだろう
仮にNAIRUが低下しているとすれば、米国労働市場に依然、余剰(slack)が存在しており、FRBの性急な利上げは再びデフレのリスクを高めることになる。また恒常的資金余剰が変わっていないとすれば、その下での長短金利の逆転は、金融機関の経営をいたずらに痛め、無用の金融ストレスの高まりを引き起こし、やはりデフレのリスクを強めることになる(注2)。
(注2) 3月に起きたSVB以降の連鎖的銀行破綻は金融ストレスの高まりを示す。
つまり、ここからのリスクはインフレではなく景気後退とデフレである、ということになる。このことを、米国市場と米国当局はどう考えているだろうか。このハト派的観点での暗黙のコンセンサスが形成されているかのようである。パウエル議長発言は微妙に変化し、ディスインフレを指摘しつつ年内利下げの可能性を完全には排除しなかった。
本質的にハト派の米国当局とエコノミスト
ここで重要なことは、米国政策当局の真の敵は何かの見極めである。長らく市場をウォッチしてくると、つくづくFRBの最大の脅威はインフレではなくデフレ化であり、Japanification(日本化)であることを痛感させられる。FRBは本質的にデフレと戦っている。デフレとは潜在的に存在している成長可能性未達の結果であり、それは政策のサボタージュを意味し、必然では決してない、ということが米国の経済学者と政策当局が共有するコンセンサスであろう。日本ではあいまいにされているが、米国の経済政策の最終ゴールは生活水準の向上であり、FRBの2大任務(dual mandate)とされている最大雇用と物価の安定はそのための手段に過ぎない。この点でデフレのリスクをより重視する、高圧経済論者であるイエレン財務長官が12月に再任されたことの意味は大きい。
FRBは無理かつ不必要な引き締めは早晩転換させるであろう。このことが明らかになれば株価は急騰するだろう。それはAIネット革命、イノベーションと米国の労働・資本市場の一段の効率化が米国経済の強靭性resilienceを強めている証になるといえそうである。
(了)
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