2024年12月23日( 月 )

孔鉉佑・前中国駐日本大使に聞く「中日関係は競争から協調に変えるべき」(前)

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    中国の孔鉉佑駐日大使が2月28日、任期を終えて帰国した。

孔氏の知日派としての履歴

中日関係 イメージ 孔氏は3年9カ月にわたる任期で、コロナ禍を経験したほか、政界では安倍氏、菅氏、岸田氏と3人の首相による政権を経験した。

 この3氏はみな、孔氏の旧知の友人であった。孔氏は1985年に中国の外交学院を卒業して中国外交部に入部し、席を温める間もなく大阪の総領事館に派遣された。安倍氏や菅氏がまだ秘書を務め、岸田氏も銀行勤めをしていた年であった。日本大使館の政治公使に就任した2006年は、安倍氏が初めて首相となり、菅氏は総務大臣、岸田氏は文部科学副大臣の座についていた。中国でアジア問題を担当する外相補佐(17年に次官に昇格)となった15年、安倍氏は2度目の首相の座にあり、菅氏は内閣官房長官、岸田氏は外務大臣であった。駐日大使となった19年、安倍氏は引き続き首相で、菅氏も同じく内閣官房長官、岸田氏は与党自民党の政務調査会長であった。

 孔氏は1985年から40年近くにわたる外交生活のうち、ベトナムの特命全権大使を務めた2011~14年を除き、ほとんどの期間で日本との付き合いがあった。とくに06年に駐日公使となってから、安倍氏、菅氏、岸田氏とじかに接するようになり、中日両国のさまざまな問題について話し合う場が急激に増えた。ゆえに当時の安倍首相は、駐日大使となった孔氏をわざわざ首相官邸に招き、一目見て 「孔先生」と敬意を込めて呼んだ。

 17年11月、中国の外務次官となった孔氏は、以前に大使を務めたベトナムで習近平主席と安倍首相との初めての会談に列席した。首脳会談の場で初めて四方に中日両国の国旗が現れ、両国の国旗を象徴する赤と白のテーブルクロスが敷かれて、両国関係に大きな転機が訪れたことを感じさせた。

 安倍首相はこの会談後、報道陣を前に意気込んだ様子で「極めて友好的でリラックスしたムードで、腹を割って率直に意見交換した」と述べた。この首脳会談で双力は、新しい両国関係を築いていくとの考えを固めた。一方で、長年にわたる孔氏と日本の政治家との友好的な信頼関係も、両国関係における雨風を払う役割をはたしたのである。

日本を離任する孔氏の想い

 孔氏は帰任を前にした2月中旬、『中国経済新聞』の独占取材に応じた。 中日関係について孔氏は、「3人の首相がみな大変重視していたことは認めるが、ここ数年は、一部の複雑な影響を受けて日本政府の中国政策が変化している」と指摘した。ただ「どうあっても、 『政策は永久不変ということはなく、最も大切なのはどのような角度からこの変化をいかに捉えるべきか』という考えを、さまざまなチャンネルを通じて日本の各界に繰り返し説明してきた」と述べている。

 「中国と日本は隣国であり、多少の認識の開きや食い違い、問題も存在し、それは今に始まらず過去にもあった。そこで今後、国際情勢や地域の情勢がならびに各国の状況が変化し、そして中日両国の意思疎通や交流、協力が深まるにつれて、またさまざまな問題も出てくるだろう。国同士の関係で現れる問題を恐れてはならず、大切なのはそれをどう見つめて対処していくかであり、問題があるからといってそれがすべてと思ってはならず、信頼関係を築く努力に水を差してはならない。この点について、日本の政治家は独力で決断する気持ちを備えて欲しい」と孔氏は述べた。

 孔氏は、以前に安倍元首相が提唱した「競争を協調へ」という言葉が好きだ、と述べた。中日関係はもはや両者だけの関係にとどまらず、地域や世界の発展へ極めて大切な責任を担っており、我々は常にこの責任を意識し、互いに交流し尊重することに努め、違いがあることも尊重すべきだ、という。過去50年間の中日関係の改善や発展に大切な役割をはたしてきたのはやはり「求同存異」(共通点を見つけ、異なる点は残す)である。世界も時代も変わっているが、「求同存異、相互尊重」という原則はいかなるとき、いかなる状況でも変わってはならないと述べる。

 孔氏はコロナ禍の3年あまり、合間を縫うようにして関東、関西、四国、九州など20以上の府県に足を運び、各地の知事と会談し、現地の経済団体や日中友好団体を訪れ、中日両国が新時代にふさわしい新たな関係を築くことが大切だと述べてきた。また、経団連の十倉雅和会長やトヨタ自動車の豊田章男社長(当時)などビジネス界のトップとも会談し、中国へのさらなる進出や、経済や技術面での両国の連携を強化するよう呼びかけた。さらに、国交正常化50周年に関する一連の記念活動についても、会場に足を運び、ビデオで参加し、交流や協力の会議で50回以上も式辞を述べ、関係の発展や改善という原則やビジョンを囗にした。

(つづく)


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