低金利時代は終わっていない(4)
-
NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は5月16日発刊の第332号「低金利時代は終わっていない」を紹介する。(4)今、有害無益化している金融引き締め、年後半急旋回も
強烈な金融引き締めの副作用が銀行連鎖破綻で表面化した。過去40年間で最大の逆イールド(長短金利逆転)で銀行の預貸ビジネスモデルが成り立たなくなっている。
1) 伝統的な商業銀行のビジネスモデルは、短期金利で預金を受け入れ、より金利の高い貸し出しや長期債券などで運用することで利ザヤを得るものであるが、急激な利上げにより過去40年間で最大の逆ザヤになっている(図表15)
2) 金利上昇が鈍い預金と高金利のMMFなど市場性商品との格差が顕著になり、スマホを通した急激な預金流出(デジタル・バンク・ラン)が起き資金ショートが顕在化(図表17)
3) 貸付に変わって投資した債券で価格下落、値下がり損が発生
FRBによる預金の全額保護、FRBによる緊急融資(BTFP)、JPモルガンなど大手銀行の支援で小康状態にあるが、図表15に見る逆イールド状態が一年続けば、深刻な金融危機、大不況を引き起こす可能性は極めて高い。
インフレ抑制という観点からも利下げが望ましい。先に述べたように、賃上げを抑制するには総需要を抑制するよりは、サプライサイドの混乱を解消すること、イノベーションや投資によって生産性を高め供給力を増加させることが王道である。サプライサイド強化には利下げが望ましいことは明らかである。
また現在最大のインフレ要因である住宅コストに関しても、住宅不足が住宅価格・家賃上昇を引き起こしているわけだから、利下げにより住宅供給を増加させることが望ましい。
以上見たように、利上げは有害無益になりつつある。FRBに選択の余地はないだろう。(図表16)
(5)新産業革命は新次元へ、揺るがぬアニマルスピリット
それにしてもなぜこれほどの金融引き締めにもかかわらず、流動性が潤沢で株価も経済も深刻な影響を受けていないのか、その理由はもっぱら新産業革命の威力によるところが大きいといえよう。2つの事情が考えられる。第一は企業部門が生み出すキャッシュ創造力が甚大で、恒常的貯蓄余剰が常態化している。第二に技術進化に対する信頼が揺らがず、投資家のアニマルスピリットは健在である。ChatGPTなどAIの新しい技術が新次元のイノベーションを引き起こすことに対する自信は強い。エヌビディアの株価の躍進はそれを物語る。
ハイテク企業は巣ごもり需要の一巡、スマホ需要の一巡、過剰に積みあがった在庫調整などで調整場面にある。各社はリストラに乗り出している。しかし市場はこれらの調整は短期的循環的なものですぐ終わると考えているようである。
(了)
関連キーワード
関連記事
2024年12月20日 09:452024年12月19日 13:002024年12月16日 13:002024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す