突出する日本株高、米中対決と超円安が流れを変えた(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は6月5日発刊の第333号「突出する日本株高、米中対決と超円安が流れを変えた」を紹介する。安いニッポンに世界需要が殺到する(つづき)
2023年の日本経済はバブル崩壊後、最も明るい数量景気の年となるだろう。Jカーブ効果により円安初期の価格面でのマイナス場面が終わり、数量増の乗数効果が表れる時期に入る。円安で日本の価格競争力が強まり、工場の稼働率が高まる。また割高になった輸入品の国内生産代替が起きる。政策投資銀行、日銀短観、日経新聞など各種の設備投資調査では、すでに2022年において設備投資が過去最高レベルの伸びとなっている。円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激する。安いニッポンに向かって、様々なチャンネルを通じて世界の需要が集中し、国内景気を活性化し始めている。
そもそも日本のデフレは、円高で競争力を失った企業が賃金抑制に走ったことから始まった。しかし今、労働需給はひっ迫し、企業は国内生産体制の構築のために高い賃金を払ってでも良い人を採用し、競争力のあるチームを作らなければならなくなった。「労働はコストではなく価値創造の源泉である」という認識の転換が起きている。連合によると2023年の平均賃上げ率 (5月10日集計結果) が3.67%と30年ぶりの高さとなった。
広島サミットで見せつけた日本の貴重な地政学ポジション
広島サミットは対中対決の民主主義諸国結束の場として大成功をおさめ、日本の貴重な国際的役割を世界に知らしめる場となった。専制国家と対峙する米国の最有力の同盟国かつ専制国家に境を接している日本、素材・部品・装置などハイテク工業力・技術力で世界トップを維持する日本、ハイテクサプライチェーンで不可欠の環を持つ日本、ダイバーシティを標榜するG7で唯一の非白人国であり、Global South (途上国)との接点を持つ日本、自縄自縛とも思われる平和主義の国日本など、日本の稀有な立ち位置が今ほど世界から必要とされる時は、歴史上なかった。
日本株に歴史の順風が
これらの事情が日本にだけ、経済と市場の好循環を引きおこし始めている、と考えられる。とすれば、今の日本株高は景気回復とか超金融緩和維持とか、割安是正とか、ケチなことではなく、日本の時代が始まった、日本の繁栄期が始まった出発点であるということなのかもしれない。
敗戦も、失われた30年もこれからの日本の繁栄期の準備の時期であった、とすら言える時代に入っている、とは考えられないだろうか。
(了)
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