2024年11月28日( 木 )

フジドリームエアラインズの九州線の現状(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

運輸評論家 堀内 重人

 (株)フジドリームエアラインズ(以下:FDA)は、静岡市に本社を置くリージョナルな航空会社であり、会社設立時の基本理念である「地方と地方を結ぶ」を掲げるように、羽田空港や成田空港、関西国際空港、伊丹空港へは就航せず、日本の地方都市同士を結んでいる。2009年7月23日に運航を開始し、現在は静岡空港と小牧空港(名古屋空港)、神戸空港の3空港を主なハブ拠点として、北は北海道の札幌(新千歳と丘珠)から、南の鹿児島県まで、日本全国にネットワークを展開している。FDAの小牧~九州間の路線の現状や機内サービスについて、実際に搭乗した小牧~福岡線の様子も踏まえて言及したい。

会社創設の経緯

 静岡市を拠点とする鈴与グループは2007年、静岡空港を拠点とするリージョナル航空事業に単独で参入することを決めた。鈴与が航空事業に参入しようとしたきっかけとして、2009年の静岡空港開港が挙げられる。

 会社設立の基本理念として、「地方と地方を結ぶ交流の懸け橋となり、それぞれの文化や経済の発展に貢献することにより、地域社会に信頼され、その成功を地域の人々と分かち合う会社になる」を掲げている。

 まず鈴与は、2007年9月1日に社内に「航空事業推進本部」を設置した。航空事業は、景気の影響だけでなく、戦争などの影響も受ける上、初期投資が莫大であることから、参入する際のリスクが高い。地元の経済界も、そのような事業に出資すること躊躇したため、鈴与が単独で参入することになった。

 そこで2008年6月24日に鈴与が資本金3億円を出資し、FDAという完全子会社を設立した。同年7月25日に記者会見を開き、就航路線、機体のデザイン、乗務員の制服などを公表した。

 機材としてエンブライアル社製の航空機(写真1)を2機購入するなど、初期投資は80~100億円を見込まれたが、資金は鈴与が保有していた株式の売却益などで賄った。

写真1_機材はエンブライアル社製。小牧空港ではタラップを用いて乗降を行う
写真1
機材はエンブライアル社製。
小牧空港ではタラップを用いて乗降を行う

    2009年7月23日に、静岡~小松線、静岡~熊本線、静岡~鹿児島線の運航を開始することが決まった。安全管理マニュアルを2008年夏までに整備し、同年12月までに定期航空運送事業者の「許可」を国に申請し、2009年2月に「許可」を取得した。

 運賃は、新規参入であることに加え、ライバルの航空会社や新幹線などの鉄道と比較して、割高にならない水準に設定した。参入に際しては、正副操縦士22名、整備士35名を採用した。

運航の状況

 JALとは2010年から予約などで業務協力を行っている。機材や便名、搭乗券などは、FDAのオリジナルであるが、JALで予約した場合と、FDAで予約した場合とでは、番号の付け方などが異なる。

 九州の主要都市は何と言っても福岡市であり、小牧(名古屋空港)~福岡線は、同年4月から福岡空港に就航するかたちで開業しており、天神や博多に近くて便利である。

 2023年3月より、中部国際空港~高知線の運航を開始した。現在の拠点空港は、静岡空港、小牧空港と神戸空港の3つであり、「地方と地方を結ぶ交流の懸け橋となり、それぞれの文化や経済の発展に貢献する」というように、羽田空港、成田空港、関西国際空港や伊丹空港には、就航していない。

 1日1往復が丘珠空港に就航しているが、同じく1日1往復が新千歳空港に就航するなど、空港の混雑やその他の事情も加味して、就航する空港を選んでいる。

 静岡~新千歳線が好調であることから、就航日が重ならなければ、小牧~丘珠空港間も一定の需要が見込めるという。静岡発着路線では、静岡~鹿児島線が週3往復運航されていたが、現在は毎日運航になっている。2016年以降は、小牧(名古屋)発着路線の新規開設がなく、既存路線の増便にとどまっている。

 2017年の夏期ダイヤからは、静岡~札幌線を札幌の丘珠空港に集約した(夏期季節運航便)。また山形~新千歳線を開設している。この路線は、小牧(名古屋)~山形~新千歳間で乗り継ぎ利用も可能になっている。

 2018年には、静岡~出雲線、仙台~出雲線を開設している。仙台~山形間の路線は、FDAがハブとする静岡、小牧(名古屋)とは、まったく無関係な路線といえる。

 2019年10月には神戸空港へ新規就航し、神戸~出雲、神戸~松本線を開設し、初めて関西地方の路線に参入した。また2019年12月には、神戸~高知線を開設した。

 2023年6月の時点では、小牧発着路線が国内で9路線、静岡発着路線が国内で6路線あるが、静岡~札幌線のうちの1往復が丘珠空港であり、1往復が新千歳空港に発着している。神戸発着路線が国内で5路線、名古屋地区では小牧空港以外にでは中部国際空港と高知を結ぶ1路線を展開している。

 貨物輸送に関しては航空機のベリーを使用して乗客の手荷物の輸送を行うが、貨物専用便の運航は行っていない。また国際線の就航も、現時点では考えていないという。

(つづく)

(後)

関連キーワード

関連記事