2024年11月28日( 木 )

フジドリームエアラインズの九州線の現状(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 (株)フジドリームエアラインズ(以下:FDA)は、静岡市に本社を置くリージョナルな航空会社であり、会社設立時の基本理念である「地方と地方を結ぶ」を掲げるように、羽田空港や成田空港、関西国際空港、伊丹空港へは就航せず、日本の地方都市同士を結んでいる。2009年7月23日に運航を開始し、現在は静岡空港と小牧空港(名古屋空港)、神戸空港の3空港を主なハブ拠点として、北は北海道の札幌(新千歳と丘珠)から、南の鹿児島県まで、日本全国にネットワークを展開している。FDAの小牧~九州間の路線の現状や機内サービスについて、実際に搭乗した小牧~福岡線の様子も踏まえて言及したい。

機内サービス

写真2
機内ではドリンクと茶菓子をサービス

    FDAは、LCC(Low Cost Carrier)ではないため、短距離路線では飲料のみであるが、中距離線以上になれば、ドリンク以外に茶菓子が使い捨てのお手拭きと一緒に、無料で提供される(写真2)。また座席に液晶テレビがないこともあり、機内誌や各種新聞も提供されたりする。

 北九州空港を拠点とするスターフライヤーは、全座席に液晶テレビが備わることから、各種情報の提供は、液晶テレビを用いて行っており、機内誌を発行しないだけでなく、新聞も配布していない。

 ドリンクとしてカルディコーヒーファームか、トミヤコーヒーが提供される。スカイマークは、ネスカフェのインスタントコーヒーが無料で提供されるが、FDAではレギュラーコーヒーが提供されるため、グレードが高いといえる。

 それ以外に、ハラダ製茶の「静岡茶」や伊藤園の「お〜いお茶」が提供されたり、アサヒ飲料の「りんごジュース」、ミネラルウォーターが提供される。

 茶菓子としてシャトレーゼの焼き菓子「梨恵夢」、名古屋へ就航していることから、青柳総本家の「ういろう」、馬場製菓の「静岡茶飴」の他、静岡、名古屋、福岡発の早朝便では、クロワッサン(コモ)が提供される。またチャーター便や一部の定期路線では、期間限定でその就航先の自治体のPRも兼ねて、ご当地の茶菓子が提供されたりもする。

 所要時間が1時間以上の路線になれば、ドリンク以外に茶菓子が提供されるなど、FDAの機内サービスは、オーディオなどがない点を除けば、JALやANAと比較しても、遜色がないどころか、勝れているかもしれない。

九州路線の現状

 FDAは、福岡~小牧間に1日当たり4往復、熊本~静岡間に同1往復、熊本~小牧間に同3往復、鹿児島~静岡間に同1往復就航している。どの路線も、所要時間が1時間半程度であるが、ドリンクと茶菓子のサービスが実施されている。

 機材は、定員が75~90名程度のエンブライアル社製のE-170かE-175を使用している。機材の種類を極力絞り込み、エコノミークラスだけのモノクラスで運航し、1時間半程度の所要時間の路線を、可能な限り高頻度で運航する点に関しては、米国のLCCであるサウスウエスト航空と似ているし、LCCのビジネスモデルを踏襲しているといえる。

 ただ大きく異なる点は、FDAがリージョナルエアーであることから、羽田空港、成田空港、関西国際空港や伊丹空港などの主要都市の主要空港を起点とする路線には就航せず、地方と地方を結ぶことに徹している上、機内ではドリンクや茶菓子の提供を実施している点である。

写真3
名古屋駅や栄・伏見へは、
あおい交通のリムジンバスでアクセスが可能

    小牧空港は、かつての名古屋空港であり、中部国際空港が開港するまでは、国際線も就航していたが、現在の旅客便はFDAが主に使用している。中部国際空港のような混雑がない上、犬山や岐阜に在住の人であれば、中部国際空港へ行くよりも近くて便利かもしれない。名古屋駅や栄・伏見へは、あおい交通のリムジンバスが運行されている(写真3)。

 九州では、長崎や宮崎、大分、那覇などへの就航も期待したいところであるが、FDAが所有する機材は16機しかない。確実に需要が見込める小牧~札幌間は、1日当たり丘珠線が1往復、新千歳線が1往復の合計で2往復しか運航されておらず、もう1往復の増便が欲しいところである。それが実現すれば小牧~長崎間や小牧~那覇間などを開設することも考えられる。

 運航開始が2009年7月と、運航を開始してから歴史の浅い航空会社ではあるが、ニッチなエリアを中心に就航し、高い機内サービスと定時運航率などで、利用者からの支持を得て、日本各地にネットワークを展開することになった。

 今後は、静岡~福岡間や小牧~鹿児島間、新幹線の影響を受けにくい神戸~鹿児島間などへ就航するなど、九州地区の需要も取り込みながら、成長してほしい航空会社である。

(了)

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