緊迫する永田町 内閣不信任案が早期解散の引き金になるのか
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早期解散と秋口解散のどちらに転んでも不思議ではない緊迫した状況になっている。
6月11日の読売新聞は「解散時期探る首相『いつやってもいいと思っている』…『月内』『今秋』両にらみ」と銘打って2つの選択肢を示したうえで、「首相周辺は岸田の内閣不信任案への対応について、『頑固な性格を考えれば、売られたけんかは買うだろう』と推し量った」と続けた。内閣不信任案を受けて解散・総選挙に打って出る可能性があると指摘したのだ。
すでに永田町では解散時期の話題で持ち切り。6月5日に都内のホテルで開かれた森雅子・総理補佐官(参院議員)を「励ます会」では、同じ安倍派の下村博文・元文科大臣が「国会の方は急に解散風が吹き始めておりまして、政治の世界は一寸先は闇ですね」と挨拶すると、自民党参院幹事長の世耕弘成参院議員(安倍派)もこう言い切ったのだ。
「最近、永田町では3人集まると、『解散はいつになるのだろう』という話が流れています。私は確実な情報をもっています。つい30分前も岸田総理と面談をしておりました。皆さん、解散は絶対に今月中にあります。これは間違いないと思っております」。
この早期解散説の真偽はさておき、安倍派が解散風を吹かせたい気持ちはよくわかる。安倍元首相の一回忌(7月8日)と同時期を投開票日にして“弔い合戦”にしようという魂胆が透けてみえるからだ。
5月12日の会見で山本太郎代表に早期解散説について私が聞くと、“安倍元首相メモリアル解散・総選挙説”を次のように論じた。
「(私の質問内容と)同じ情報を耳にした。要は、安倍さんがお亡くなりになった日(7月8日・土曜日)に近づけて選挙を打つのではないか。安倍さんメモリアル的なことを、たとえば、メディアジャックによって自民党がけっこう熱く流れてしまうといったメデイア操作を行えるカードはもっていると思う。一週ずれたとしても、(一回忌が)選挙冒頭のカードとして使えるだろう。政治はそういう部分がある。自分たちの党勢拡大のためにさまざまなものを利用すると考えるならば、当然、そういうこともやってくるだろう」。
早期解散説については、立憲民主党の泉健太代表も5月10日の両院議員懇談会の挨拶で口にしていた。
「総選挙までは本当に短期間かもしれない。常任幹事会の場で菅元総理、最高顧問からも話があった。『もう本当に(通常)国会直後、サミット直後に、いつ選挙があるかということを準備すべきだ』と」。
実際、自民党内では広島サミットで内閣支持率が上昇したのを踏まえ、「いま解散しないでいつやるんだ」という声が大きくなっていった。息子の更迭で多少は下落傾向に転じたものの、不支持率が支持率を上回り続けた昨年秋に比べれば高い水準にある。
しかも野党第一党の立憲民主党は補選全敗で、支持率も低迷したままで泉健太代表の求心力が高まる気配すらない。さらに統一地方選で1.5倍増目標を達成、すべての小選挙区での擁立を宣言した日本維新の会にとっても、早期解散のほうが好都合だ。
維新は政治塾を開いて候補者発掘を急いでいるものの、十分な数の候補者が揃う前に総選挙に突入した方が自民党にプラスなのは明らかであるからだ。実際、維新の馬場代表が早期解散を誘発する内閣不信任案に否定的。8日の記者会見で、「夏になれば盆踊りをするように会期末になれば不信任案を出すといった国会の慣例にはまったく協力する気はない」「岸田内閣を不信任にするほどの大きな事由はない」と述べたのは、何とか早期解散は避けたいという願望の裏返しなのだ。
ここで注目されるのが、泉代表が内閣不信任案提出を決断するのか否か。10日の岡山での囲み取材でも「最後の最後、会期末のなかで最終判断していく」と明言を避けたが、政権補完勢力の維新を「金魚の糞」「御用野党」などと批判する一方、入管法改正や防衛費財源確保法などをゴリ押しする岸田政権との対決姿勢を強める立憲民主党が内閣不信任案提出をもし見送った場合、泉代表に対して「腰抜け」「闘う姿勢が欠如」などの批判が党内外から噴出するのは確実。次期総選挙を前に泉代表降ろしが活発化する可能性は十分にある。
通常国会の会期末は6月21日。早期解散をめぐって揺れ動く永田町から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田 一】
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