解散を決断できなかった岸田首相、見送りで与野党に広がる安堵
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与野党のお家事情
岸田文雄首相は16日、今国会での衆議院解散を見送る考えを明らかにした。この数日、いよいよ解散が行われるという情報が飛び交うなか、自民党は候補者調整を急ぐ必要があり、野党は野党で空白区の候補者擁立や選挙準備にてんてこ舞いの状況にあった。岸田首相の発言により、与野党双方に安堵が広がった。
自民党執行部では茂木敏充幹事長は解散に賛成とみられたが、麻生太郎副総裁などは、4月に統一地方選挙を終えたばかりであり連立相手の公明党の支持団体の創価学会が選挙に消極的であることに配慮し、解散に慎重な姿勢だと伝えられていた。
LGBT法案が本日成立する見込みだが、同法案には伝統的家族観を重視する保守層からの猛反発があり、安倍晋三元首相に近かった閣僚経験者を「裏切者」と公然と非難する声が高まっていた。もしそのまま総選挙となった場合、自民党は厳しい結果が突き付けられるものと見られていた。
7月8日に安倍元首相の逝去から一周忌を迎える。新山口3区(下関市など)の支部長をめぐり、安倍派と岸田派との駆け引きが展開された。福岡9区(北九州市八幡西区など)では保守分裂の可能性もある。このあたりのお家事情が少なからずあったことは間違いないだろう。
一方、野党側にも弱点は多い。そもそも最大野党である立憲民主党の空白地域が多く、国民民主党との調整も進んでおらず、連合任せの状態だ。勢いがある日本維新の会は都市部での風任せで、農村部や地方都市は手つかずといってよい。
「政治家にとって常在戦場」というものの、与野党問わず選挙に強くない政治家にとって、お払い箱になりかねない解散はできるだけ先に伸ばしてほしいというのが本音だ。
政治家には決断が必要
解散見送りとなった途端、ある自民党衆議院議員の秘書がSNSで「マスコミが解散風を煽った」と書いていたが、解散は近いとの与党サイドからの情報がなければ報じようもない。解散のあるなしは、議員だけでなく事務所で働く秘書などにとっても死活問題であり、当面は仕事が続けられることがわかり、俄然強気な投稿をしたのだろう。
小泉純一郎首相などに仕えた自民党政務調査会元調査役・田村重信氏はFacebookに次のように投稿している。
「今、解散・総選挙をすれば、自民の議席は減る。しかし、先送りすれば、維新の態勢が整って、さらに自民は負ける。今の日本の経済停滞などの原因は、先送りにある。
岸田首相も、結局は先送りで、将来の状況悪化の道を選んだ。かつて、小泉純一郎首相は、郵政法案が否決されたら解散する!と言って、その通り、解散・総選挙をやって、自民は大勝した。政治は狂気の面も必要だ。優等生的だと新たな改革など出来ない」小泉改革の是非はともかく、政治には狂気といえる決断も必要との主張は説得力がある。安倍元首相も解散の決断をしたことで長期政権をつくった。そう考えると今回の解散見送りは、岸田首相の優柔不断な姿勢の表れではないだろうか。
【近藤 将勝】
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